全国自動車交通労働組合連合会はハイタク産業に従事する労働者で構成する労働組合の連合体です。本ホームページは、どなたでも自由に全てご覧いただけます。


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2019春闘方針(案)

はじめに
1.格差を是正し、公共交通を担うにふさわしい労働条件を確立しよう
(ハイタク労働者の労働環境の改善は急務)

1995年に当時の日経連が「新時代の日本的経営」を発表し、それまでの正規雇用中心の雇用政策から、①長期蓄積能力活用型(正規雇用)、②高度専門能力活用型(残業代ゼロで問題となった高プロ制度等)、③雇用柔軟型(非正規の使い捨て労働)の3グループを併用した雇用政策への転換を進めてきました。その結果、今や非正規労働者は労働力人口の4割に迫り、2019年4月から「残業代ゼロ」「定額働かせ放題」の高度プロフェッショナル制度の導入が始まろうとしています。そして、安倍政権の富裕層・大企業優遇政策で「中間層」は破壊され、低所得者層が増大し、貧困率(相対的貧困率:等価可処分所得の中央値の半分未満)はOECDの中でワースト2位(母子家庭の貧困率はワースト1位)となっています。また、大企業が過去最高の純利益(上場企業が5年で3倍)を上げているにもかかわらず、中小零細企業や地方経済は疲弊を深めています。労働分配率(人件費/付加価値)も低下傾向を強め、企業の取り分が年々上昇する中、労働者の実質賃金も第2次安倍政権発足時から5%減少しており、国内消費を冷え込ませています。さらに、2019年10月1日から消費税の10%への引き上げが狙われており、事態はさらに深刻さを増していくのは確実です。消費税3%の時代と8%の現在で日本の税収はほとんど変化はなく(約55兆円)、消費税は富裕層と大企業の減税(所得税と法人税)の穴埋めにすぎません。「福祉のため」と宣伝して引き上げられてきた消費税ですが、福祉の向上は図られず、逆に低下している不条理を許すわけにはいきません。国民生活を顧みない安倍政権を打倒し、政策の大転換を(消費税廃止=富裕層と大企業増税、社会保障拡充、正規雇用拡大)を実現し、春闘での賃上げとその社会的波及による生活不安の払拭と底堅い内需拡大を通じた経済の好循環に軌道修正することが求められています。にもかかわらず、経団連の中西会長は11月19日、都内での講演で「春闘という言葉をやめよう」と述べ、各企業の労使が賃上げを一律に交渉するやり方は時代にそぐわず、見直すべきだと主張していることを批判しなければなりません。
安倍政権がもたらした重層的な格差社会を是正させるとともに、規制緩和以来、賃金の大幅下落により厳しい生活を余儀なくされてきたタクシー労働者の苦境を訴えて行かなければなりません。他産業との年収格差が218万円(2017年・厚労省調査)もあるハイタク労働者の労働条件改善は急務であり、2019春闘では、他産業との格差是正と公共交通を現場で担う労働者にふさわしい労働条件を求めて闘います。


2.労働条件を整備し、働く者に魅力あるタクシー産業にしよう
(賃金の大幅改善と安定雇用を実現し、安心して働ける生涯職場をめざす)

2018年9月の有効求人倍率は1.64倍で、就業者数は過去最高の6,715万人に達しています。正社員の有効求人倍率(1.14倍)と新規求人倍率(2.50倍)は過去最高を更新しました。職業別求人倍率(原数値・パート除く)では、「自動車運転」が3倍を超えています。これほどの人手不足にもかかわらず、タクシー産業では賃金・労働条件の改善は遅々として進まず、若年者の雇用が増えない中、現役乗務員の高齢化が進んでおり、平均年齢は59.4歳(2017年・厚労省調査)まで上昇し、年金受給者の比率も高まっています。まさに「労働条件の改善なくして、産業の未来なし」というひっ迫した状況を迎えています。
また、安倍政権の「地方創生」の掛け声と裏腹に、地域間格差もますます拡大しており、地方で働く労働者の賃金実態は低位のまま据え置かれ、倒産・廃業も加速しています。さらに、官民格差を理由に2005年から地方公務員の賃金カットと地域給導入が進められ、公務員の中でも地域間格差を作り出すことで、民間の地域間格差をさらに助長する悪循環を招いています。さらに、最低賃金の引き上げの面でもランク間の改定額に格差を生じさせ、大都市部と地方の最低賃金額の差額も年々増大しています。
タクシーは地域の生活に欠かせない公共交通機関として福祉・観光・地域交通などで期待が高まっていますが、こうした社会的要請に応えるとともに、安全輸送と良質なサービスや「仕事への誇り」を維持するためにも、家族を養える賃金水準を早急に確立し、賃金体系や勤務シフトの改革(固定給中心の賃金体系・長時間労働の是正)を進め、若年者や女性にとって魅力ある労働条件として整備しなければなりません。2019春闘では、定年まで安定して働ける「生涯職場」となるよう、安定雇用(定年延長)と退職金制度の充実にも全力をあげます。


3.長時間労働是正に向けた着実な取り組みを進めよう

「働き方改革関連法案」が2018年6月29日に成立し、時間外労働の上限規制が罰則付きで導入されることとなりました。しかし、自動車運転業務については施行から5年後(2024年4月)に、一般則ではなく「年960時間・月平均80時間」の上限規制が導入されることとなりました。過労死ラインと言われる「月80時間」を上限とすることは認められません。しかし、各事業場における36協定が締結されなければ会社は残業を命ずることはできないのであり、労働組合として36協定の締結時に長時間労働の是正に向けて努力することが求められます。時間外労働が、一般側の上限の原則とされる「月45時間、年360時間」以内になるよう努力するとともに、「改善基準告示」の改正が行われることを踏まえ、総拘束時間の短縮に取り組みます。
また、有給休暇が10日以上ある者に対して最低5日を取得させる事も使用者の義務となります(施行日:2019年4月)。さらに、輸送の安全に影響を与えると言われる勤務間インターバルについても11時間(日勤勤務に限る)の協定化をめざします。


4.白タク・「ライドシェア」合法化許さず、タクシーの産業基盤を守ろう

訪日外国人を相手に主要な港・空港を舞台にした違法な観光白タクが拡大しており、取締りの強化が求められます。また、これに類するレンタカーを使用した観光ガイド、ヒッチハイク型の相乗り輸送、都心部で自家用車輸送に謝礼を求めるCREWの運行にも厳しい監視が必要です。
また、「ライドシェア」の合法化に向けた世論誘導や「国家戦略特区」、「規制のサンドボックス制度」を活用して規制を突破しようとする動きもあり、警戒が必要です。海外のライドシェア企業がタクシー配車という形態で日本に上陸し、ウーバーが名古屋市で、滴滴(ディディ)が大阪市で営業を実際に開始していますが、この動きを「ライドシェア解禁に向けた布石」として受け止め、その拡大を阻止しなければなりません。さらに、路線バスもタクシーもない交通空白地で自家用車を使った有償運送を「ライドシェア」と称して取り入れる自治体が増えかねない状況です。「過疎地で(規制に)風穴をあけ、大都市部で展開する」という流れを断ち切ることが求められます。「ライドシェア」が解禁されれば、海外の事例を見るまでもなく、これまで築き上げてきたタクシーの輸送の安全と労働者の権利・労働条件が一気に瓦解してしまう事は明白です。また、タクシー特措法の下での適正化・活性化の努力も「無に帰す」のであり、労働運動・市民運動の力を最大限発揮し、地方自治体の意見書採択をさらに拡大するとともに、無権利労働の問題や物流(交通運輸産業全般)への影響等も広く訴え、ライドシェア解禁の世論を変えるために運動を強化していきます。
2019春闘は、労働条件改善と同時に、タクシーと公共交通の産業基盤を守る政策闘争を「車の両輪」として推進します。


Ⅰ.春闘を取り巻く情勢

[世界経済]
2018年10月の「IMF(国際通貨基金):世界経済見通し」では、2018年と2019年の成長率予測(世界全体)を3.7%とし、本年4月の予測を0.2ポイント下方修正しました。引き下げ要因として、激しさを増す米中貿易摩擦が成長に影を落とすとともに、米国の利上げが新興国からの資金流出を引き起こすことを指摘しています。「輸入制限が増えれば、貿易消費財の価格が上がり、低所得世帯が不釣り合いに大きな打撃を受けることになる」と指摘し、金融引き締め等が「数年間にわたって蓄積されてきた脆弱性」を顕在化させるとし、中期的リスクの1つに「不平等の拡大」を挙げ、「現実化すれば負の変化が生じる可能性が高まる」としています。
また、世界的な「協力の促進」を強調するとともに、包括的で高度な成長の可能性を強化し、「生産性を向上させ、利益を広く分かち合える」よう、構造改革と政策の導入の必要を訴えています。その手段として、①技術革新と伝播、②女性・若者の労働市場参加率の向上、③構造変化で職を失った人々の支援、④教育・訓練への投資と雇用機会の拡充、を訴えています。
主要国の経済成長見通しは、次の通りとなっています。
【米国】減税による効果が底堅いが、2019年は対中追加関税と中国の報復関税の影響を考慮し、2.5%に下方修正。
【ユーロ圏】ドイツの製造業を中心に受注や貿易量の減少が影響し、2018年を2.0%に下方修正。
【日本】堅調な企業業績と設備投資の拡大による景気押し上げ効果から2018年を1.1%に上方修正し、2019年は0.9%に据え置き。
【中国】貿易障壁の高まりとともに減速し、2019年を6.2%に下方修正。
【新興国】新興国の内、エネルギー輸出国は石油価格の上昇を背景に引き上げましたが、他の地域は下方修正されました。
米国の没落、中国の台頭、アジアの成長、テロの脅威が進行し、新たなパワーバランスの時代を迎える中、トランプ政権の「米国第一主義」「力による平和」を掲げた秩序破壊的な貿易戦争(対中国貿易戦争)とイランに対する経済制裁発動が世界経済に負の影響を及ぼしています。IMFは「堅固で包括的な成長政策は緊急性を増している」として、構造変化に対する保護主義的対応を避け、協調的な解決策と所得の引き上げによる「皆に利益をもたらす改革」の必要性を訴えています。
 
[日本経済]
日銀は2018年10月に「経済・物価情勢の展望」を発表し、2018年度は海外経済の成長のもと、「緩和的金融環境や政府支出による下支えなどを背景に潜在成長率を上回る成長を維持するとみられる」と指摘しつつも、「2019年度から2020年度にかけては設備投資の循環的減速や消費税引き上げの影響を背景に成長ペースは鈍化するものの、外需にも支えられて、景気拡大基調が続くと見込まれる」としました。
しかし、2018年7~9月期の実質GDP(物価変動を加味した国内総生産)は▲0.3%(年率▲1.2%)となるとともに、中国経済の減速懸念を背景とする外需の停滞や度重なる災害の影響から減速感が強まっています。また、日本は個人消費主導の景気回復を経験したことがなく、GDPの約60%を占める個人消費の弱さが浮き彫りとなっており、労働分配率の低下や社会保障負担、税負担なども含めた可処分所得の低迷などが個人消費の押し下げ要因となっています。安倍政権は2019年10月に消費税を10%に増税することを宣言しており、これが国内の個人消費を一気に冷え込ませる大きなリスクとなっています。
日本の企業は「不安定雇用・低賃金の拡大」と企業優遇策で2018年4~6月期の法人企業統計においても史上空前の経常利益を上げています。企業がため込んだ内部留保(蓄積した利益剰余金)も2017年度に446兆円を超え、過去最高となり、前年比9.9%の増加率もこの6年間で最高を記録しました。企業の社会的責任としてこれを広く還元するとともに、大胆に賃上げに回し、人手不足の解消と長時間労働の是正をはかり、下がりきった労働分配率を改善して、実質賃金を引き上げる事が求められます。

[雇用情勢]
2018年9月の総務省「労働力調査」によると、正規労働者は3,490万人で前年同月比で7万人増加した一方、非正規労働者は2,143万人で前年同月比で115万人増加しました。雇用者に占める非正規労働者の割合も38%を超えました。完全失業者は162万人で前年同月比で28万人減少し、完全失業率も2.3%まで低下しています。
また、厚生労働省(一般職業紹介状況)が発表した2018年9月の有効求人倍率(季節調整値)が前月を上回る1.64倍で、調査開始以来の高水準を維持し、労働力不足が顕著になっています。新規求人倍率(季節調整値)は2.50倍となっていますが、正社員有効求人倍率は1.14倍程度で推移しています。産業別では、「自動車運転の職業」が3.03倍となっており、平均値を大きく上回っています。また、都道府県別では、就業地別で福井県の2.20%が最高で、北海道の1.23倍が最低となっており、受理地別では東京都の2.18%が最高で、北海道と神奈川県の1.19倍が最低となっています。地域間の求人格差が2倍に迫っているのが現状です。

[勤労者の生活実態]
2018年7月に厚生労働省が発表した「国民生活基礎調査の概況」では2016年の世帯所得は平均560.2万円で、前年を上回ったものの過去最高だった1994年の664.2万円よりは104万円も低下しています。また、中央値は442万円で、平均以下に多くの世帯が収まっている状況にあり、平均所得以下の世帯割合は61.5%にのぼり、階級別でも300万円台が13.8%で最も多く、次いで200万円台が13.3%、100万円台が12.3%となっています。300万円台以下の世帯が45%を占めています。生活意識については、かつては60%に迫っていた「普通」と回答した割合は、39.2%に留まり、13年連続で40%を割り込みました。「大変苦しい」(23.8%)と「やや苦しい」(32.0%)の合計が55.8%にのぼるとともに、「ややゆとりがある」(4.3%)、「大変ゆとりがある」(0.7%)が高水準を維持。生活意識の面でも「普通」が減少し、格差が拡大しています。
2018年2月に厚生労働省が発表した「毎月勤労統計調査・2017年度分」では2017年度の現金給与総額(就労形態計)は4年連続で増加し、31.6万円となりましたが、リーマンショック前の水準(2008年度:33.1万円)には回復していません。また、前年比で0.4%増加したものの、消費者物価が0.6%上昇したことから実質賃金は0.2%減少しました。
一般労働者の現金給与総額は、41.4万円でリーマンショック前の水準に回復しつつありますが、労働時間数は増加しています。しかし「運輸業・郵便業」は39.0万円にとどまり、総実労働時間数は186.8時間で最も長く、しかも最も伸びています。パートタイム労働者の現金給与総額は9.8万円となっています。


Ⅱ.ハイタク産業の動向

1.ハイタク事業の現状
タクシー統計(2017年3月末現在【2016年度】:ハイヤー・タクシー年鑑より)
●法人タクシーの事業者数(法人業者数・福祉輸送限定事業者除く)
  6,231社(前年6,300社・▲69社)
●全国のタクシー車両数(福祉輸送限定事業者除く)
 ・法人タクシー 188,792台(前年190,127台 ▲1,335台)
 ・個人タクシー  35,150台(前年 35,883台 ▲733台)
合計車両数  223,942台(前年226,010台 ▲2,068台)
●法人タクシーの実働率
  70.9%(前年73.0%・▲2.1%)
●法人タクシーの実車率
  42.8%(前年42.3%・+0.5%)
●法人タクシーの輸送人員
  13億8,161万人(前年14億2,200万人▲4,039万人)
 ☆13億7,321万人【2017年度】
●法人タクシーの営業収入
  1兆4,753億円(前年1兆5,019億円▲266億円)
 ☆1兆4,621億円【2017年度】
●法人タクシーの日車営収(実働1日1車当たり)
  30,125円(前年29,549円・+576円・7年連続改善)
 ☆30,891円【2017年度】
※日車営収の地域間格差が深刻。
上位 東京 48,584円、神奈川 37,540円、埼玉34,615円、千葉31,553円、
   愛知 31,150円、大阪 30,080円(3万円超)
下位 宮崎 15,926円、和歌山 16,238円、徳島 16,891円、鹿児島 17,540円
   佐賀 18,718円、青森 18,731円、山形 18,950円、秋田 19,196円
   鳥取 19,388円、岩手 19,515円、山口 19,612円、大分 19,724円(2万円未満)




2.ハイタク産業の特徴的な産業動向

(1)強引な規制改革による白タク・ライドシェアの合法化の動きが表面化
 規制改革推進会議の第三次答申(2018年6月4日)で「利用者ニーズへのきめ細かい対応と運転手の多様な働き方を実現する新たなタクシーサービス」の検討が盛り込まれ、2019年度に結論を出すとしました。
 「未来投資戦略2018」(~「Society5.0」「データ駆動型社会」への変革~)で「次世代モビリティ・システムの構築」を掲げ、「自動運転の実現に向けた制度整備」や「MaaSの促進」を今年度中に検討するとしました。

 ※Society5.0=狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(Society2.0)、工業社会(Society
  3.0)、情報社会(Society4.0)に続く新たな社会として、仮想空間と現実空間を高度に融  合されたシステムのもと、全ての人や物がIoT(Intenet of Thanks)でつながり、知識や情報が   共有され新たな価値を生み出す未来社会
 ※MaaS(マース)=(Mobirity as a Service):出発地から目的地まで鉄道・バス・タクシー等の   複数の移動手段を組み合わせ最適な移動方法を提供(検索・予約・決済)するシステム

 2018年10月5日に開かれた「未来投資会議」で、「成長戦略の方向性」が示され、「移動弱者ゼロ」を目標に、「次世代モビリティ/スマートシティー」が位置づけられ、①高齢者の運転環境の整備、②タクシーの相乗導入のためのルール整備と市町村管理に限定した自家用車での有償運送をやりやすくする環境の整備、③公共交通機関等が保有するデータを企業が利活用できるようにし、需要に合わせた価格設定を可能とする価格設定ルールの改正、④運転者がいない形態での完全自動運転のルール整備、⑤都市の渋滞解消や山間地での移動確保に向け、需要に応じた乗合サービスの実験的導入、等が明記されました。国土交通省もこの議論に積極的に協力するとしています。

 2018年10月23日には、「国家戦略特区諮問会議」が開かれ、「岩盤規制改革力が機能停止に陥っている」とし、事務局体制を刷新し「再スタート」を宣言。「ハイパー国家戦略特区」の検討を盛り込みながら、AI(人工知能)やビッグデータを活用した「スーパーシティー」構想を提案し、その中で「域内交通のオンデマンド自動走行」等が取り上げられました。そして「スーパーシティー構想の実現に向けた有識者懇談会」を立ち上げ、懇談会座長の竹中平蔵氏が「スーパーシティーの5原則」を示し、自動走行やキャッシュレス化に言及し、「域内の規制設定権限をミニ独立国家と住民に委ねるべき」と主張しています。11月15日に開かれた「第2回有識者懇談会」では、内閣府、総務省、経済産業省、国土交通省、産業競争力会議の金出氏からヒヤリングを行い、国土交通省から「MaaS」の新たなモビリティサービス(移動サービス)の取り組みが紹介されました。

 「MaaS」が新たな移動サービスとして注目されていますが、実際、フィンランドのヘルシンキで2016年からサービスが開始されています。飛行機、電車、バス、タクシー、自転車等の交通手段を乗り継いで移動するルートをスマートフォン上で検索できるだけでなく、予約や支払も一度に行うことができ、利便性が飛躍的に向上するとともに、月額定額制も導入し、定額で自由に移動できる環境が整備されました。サービス開始後は、自家用車での移動が40%→20%に減少し、公共交通が48%→74%に増加したとの報告もあり、渋滞緩和や環境保護、公共交通の維持・活性化に期待されています。国土交通省は、「ライドシェアは安全確保と利用者保護の観点から問題あり」としつつ、公共交通の需要喚起とバス・タクシーを活性化させる観点で、10月17日に「都市と地方の新たなモビリティ・サービス懇談会」を立ち上げ、積極的に参画していく意思を表明しています。しかし、総務省は、多様な移動手段の中にライドシェアを含めながら交通弱者の利便性向上を論じており、極めて問題です。また、経済産業省も「規制のサンドボックス制度」の活用による規制改革に力を入れており、警戒が必要です。

(2)トヨタ自動車とソフトバンクが「無人ライドシェア構想」を発表し、共同事業開始
 トヨタ自動車とソフトバンクが10月4日、新たなモビリティーサービスの構築に向けて「MONET」を共同で設立し、共同事業を開始すると発表しました。そして、「無人ライドシェア構想」を打ち上げ、電気自動車による自動運転車を開発して「MaaS」事業を展開するとしています。ソフトバンクの孫正義会長は「日本はライドシェアを認めないバカな国」と発言しているだけでなく、ソフトバンクとトヨタ自動車は、ウーバーに対して多額の出資をしています。さらに、ソフトバンクは滴滴(ディディ)との合弁会社によるタクシー配車を大阪で開始しており、こうした動きを注視し警戒を強めなければなりません。
 
(3)ウーバーが名古屋で、滴滴(ディディ)が大阪でタクシー配車として日本上陸
 ウーバーは、9月6日から名古屋市でアプリを使ったタクシー配車を開始しました。9月30日までをキャンペーン期間として、期間中の運賃を毎回20%オフ(但し上限1万円)とし、招待コードからの登録で初回無料乗車としています。
 滴滴(ディディ)は、9月27日から大阪市でソフトバンクとの合弁会社によるアプリを使ったタクシー配車を開始しました。11月の金・土は初乗り運賃無料、初回登録で2,500円のクーポン贈呈、友達紹介で双方に1,500円のクーポン贈呈のキャンペーンを実施しています。
 こうした、秩序破壊的な運賃サービス・顧客囲い込みを批判しなければなりません。ウーバーも滴滴も世界的なライドシェア会社であり、日本上陸は日本でのライドシェア解禁に向けた布石であることは明白です。当初は「タクシー会社と協力します」と表明しながらも「庇(ひさし)を貸して母屋を取られる」ことにならないよう警戒が必要です。また、対抗策として、ウーバーや滴滴を圧倒する規模で車両数を確保した上で、他のスマホ・アプリで呼べるタクシーを全国的に増やすことが求められています。

(4)「任意の謝礼」を求める事実上の違法な白タクを都内で展開するCREW
 「スマート送迎アプリ」と称し、都内でマッチング事業を拡大しているCREUは、「国土交通省の3月30日付け通達(国自338号)に沿って運営しており、登録・許可は不要であり、タクシーではない」と主張し、「料金は燃料等の実費とプラットホーム手数料と任意の謝礼からなっている」「謝礼はゼロ円から設定可能」と説明しています。しかし、「謝礼ゼロでは配車されない」との情報もあり、利用者に謝礼を求める事実上の白タクの疑いがあります。現在、20時~翌3時の夜間営業で利用地域も都心の一部に限られていますが、サービスエリアの拡大に力を入れており、こうしたライドシェアまがいの運行形態が拡大することは大きな問題であり、運輸当局の監査を強く求めていかなければなりません。また、与論島で「ライドシェア」と称して事業を行うアジットもCREUと同様の事業形態をとっており、監視が必要です。
 
(5)訪日外国人を対象とした白タクやレンタカーを使用する観光ガイド等の違法行為
 訪日観光客を対象に主要な港、空港、駅、ホテル等でスマホを使った白タク行為が日本全国に拡大しています。近年の旅行人数の少人数化と国内での訪問エリア拡大により、地方都市にもこうした白タクが拡大している現状にあります。警察の取締りと摘発も見られますが、引き続き、空港等の施設管理者、地方運輸局、警察、自治体が連携した啓発活動、取締、摘発を要請していかなければなりません。
 また、東京都内の歓楽街を舞台に長年にわたって白タク行為を行ってきた容疑者の逮捕も明るみに出ています。こうした違法行為の摘発は「氷山の一角」にすぎず、東京五輪の開催を前に拡大する恐れがあり、取締強化を求めていきます。
 その他、レンタカーを使用し、観光ガイドとして運転しながら輸送の対価を受け取るジャスタビの違法な行為を根絶することも急務です。

(6)改正タクシー特措法の取り組み状況
 改正タクシー特措法に基づき、現在、全国631営業区域のうち、27地域が特定地域として指定を受けています。(2015年度指定地域19地域、2016年度指定地域8地域)。車両ベースでみると、特定地域は全国の約35%を占めます。
 各特定地域の平成26年度と平成28年度の日車営収を比較すると、統計上は時間当たりの賃金が27地域中25地域で増加しています。しかし、日車営収は、規制緩和前の平成13年度と比較すれば多くの地域で依然として低い水準で推移しており、労働条件の改善に向けて引き続き特定地域計画に基づく適正化・活性化の取り組みを進める必要があります。
 準特定地域の指定は、110地域で、車両ベースでは約47%を占めています。

 特定地域の指定延長については、2015年度指定地域の19地域の内、地域計画が策定されなかった奈良市交通圏と倉敷交通圏を除く17地域で指定延長が決まりました。3年間延長されるのは、仙台市、秋田、長野、京浜、神戸市域、北九州、長崎の7交通圏となり、札幌、新潟、金沢、大阪市域、広島、福岡、宮崎、熊本、大分、鹿児島の10交通圏は2019年の3月31日までの延長となっています。しかし、地域計画・事業計画が取り組まれている最中に指定解除することは、これまでの努力と改正タクシー特措法の趣旨に背くことであり、取り組みの実効性を上げ、労働条件改善の具体的な結果を出す対応が求められます。
 2018年度指定の特定地域である、富山、東京・南多摩、京葉、東葛、千葉、県南中央(埼玉県)、宇都宮、久留米の8交通圏全てで特定地域計画の認可を受けました。
大阪の河北交通圏は2018年度の指定です。
 また、改正タクシー特措法の施行以降、27地域が需給状況の改善等を理由に準特定地域の指定を解除されています。準特定地域の指定解除は、公定幅運賃制度の対象外となるばかりでなく、新規参入と増車が可能となることから、賃金水準の改善がないのに指定解除される場合は、反対の声を高めて行く必要があります。

(7)地域公共交通網計画の策定状況
 バス・タクシー事業者が地域交通の利便性向上に積極的に貢献することを前提としつつ、バス路線の定期運行を基本とし、全体として整合性の取れたネットワークが構築されることが必要です。
 地域公共交通会議において、必要な交通手段の導入について建設的に協議を行うためには、地方公共団体、事業者、労働組合が把握する地域交通課題の具体的な情報をもとに、地域の移動ニーズを明らかにすることが不可欠となります。積極的にタクシーの特性を生かした活用方法を提案していくことが重要です。
 2018年10月末までに全国で433件の地域公共交通網形成計画が策定されています。また、28件の地域公共交通再編実施計画が国土交通大臣により認定されました。

(8)タクシーの進化を目指す、全タク連のライドシェア対策・11項目
 全タク連はライドシェア対策として、以下の11項目を確認し、順次、取り組みを進めるとしています。また、国土交通省は需要拡大・活性化による労働環境の改善に向けた取り組みと位置付け、予算を計上して支援しています。

①初乗り距離短縮運賃
 東京の初乗り運賃2㎞730円→約1㎞410円
 2㎞以下の利用者が20%増加(2017年1月末~)
②相乗り運賃(タクシーシェア)
 配車アプリを活用して、目的地が近い利用者同士をマッチングし、1台のタクシーに相乗りで きるサービス。割安にタクシー利用が可能に(2018年1月22日~3月11日実証実験)
③事前確定運賃
 配車アプリで乗降地を入力すると、地図上の走行距離・予測時間から運賃を算出し、事前に 運賃が確定するサービス。渋滞やメーターを気にせず安心してタクシーを利用できる。
 (2017年8月7日~10月6日実証実験)
④ダイナミックプライシング
 需要に応じた柔軟なタクシー料金の設定。
 (変動迎車料金の実証実験:2018年10月1日~11月30日・東京大手3グループ)
⑤定期運賃(乗り放題)タクシー
  鉄道の定期券のように対象者・エリア・時間帯等を限定して定額でタクシーを利用できる。
 (2018年10月1日~12月21日・全国7地域)
⑥相互レイティング
 配車アプリ上で、利用者からドライバーを、ドライバーから利用者を評価。
 優良ドライバーを選択できるようにする。
⑦ユニバーサルデザイン(UD)タクシー
 UDタクシーの導入促進。(2020年までに約28,000台の導入目標)
⑧タクシー全面広告
 車体広告の掲載場所の規制緩和(東京都等で条例による掲載場所の規制あり)。
⑨第二種免許緩和
 二種免許取得要件の緩和(現行、「21歳以上、経験3年以上」の緩和)
⑩訪日外国人富裕層向けプライベートリムジン
 高級車両・多言語対応・WiFi設備等ハイグレードなサービス
⑪乗合タクシー
 過疎地における生活交通の確保。
 ※⑦、⑨、⑪は全国で取り組むべき項目とし、他の項目は地域事情に応じて行うとしている。

 これらの取り組みは、運転者の労働環境改善のために、新しいサービスの導入で利用者利便を向上させ、需要喚起をはかるとともに、配車アプリを活用したタクシー運行の効率化により、生産性向上を目的として行われるものであり、国の予算も計上されている取り組みです。新サービス(特に運賃関係)を導入したことによって労働条件が低下することがあってはならず、厳密な検証が不可欠であるとともに、運転者にしわ寄せがくる新サービスには強く中止を求めます。

(9)自動車運送業界の「働き方改革の実現に向けたアクションプラン」
 自動車運転事業の運転者は全職業平均に比べて年間労働時間が1~2割長く、年収は約3割低い状況にあります。また、求人状況も有効求人倍率が全職業平均の2倍に達しており人手不足も深刻です。
 2018年6月に「働き方改革関連法案」が成立しましたが、自動車運転業務は一般側の適用が猶予され、2024年4月に年間960時間(月平均80時間)の罰則付き時間外労働の上限規制が導入されることとなりました。
 これを受けて、全タク連は「働き方改革の実現に向けたアクションプラン」を策定し、達成目標として、「年960時間超の運転者が発生する事業者割合」を2021年まで20%に削減し、2022年までに10%、2023年までにゼロにする目標を掲げました。また、取り組み内容として、①全タク連・11項目の活性化策の実行、②若者・女性の採用推進、③減収につながらない労働時間の短縮、④安全な車両・設備の整備(デジタコ・自動日報の整備)を上げています。

3.タクシー労働者の賃金実態及び求人状況

(1)長時間労働・低賃金の労働実態 【2017年厚労省:賃金構造基本統計調査】
 タクシー運転者(男)の全国平均・月間実労働時間数は、2010年まで200時間を超えていましたが、2011年から200時間を割り込み、2017年は189時間まで短縮されています。20時間を超える格差があった全産業(男)との比較においても2017年の格差は7時間まで短縮されています。しかし、全産業(男)より長く働き、月間20時間近い残業が常態化されている現状にあります。
 賃金格差はさらに深刻で、タクシー運転者の推計年収は2017年で333万円であり、全産業(男)=551万円との格差は実に218万円に達しています。長時間労働を強いられる上に、年収は全産業(男)の約40%も低い状況にあります。また、タクシー産業内部の地域間格差も拡大しており、「東京都:タクシー運転者(男)」が419万円であるのに対し、最も低い「秋田県:タクシー運転者(男)」が226万円にすぎず、地域間格差も深刻になっています。

(2)乗務員の高齢化の進展と乗務員不足の深刻化
 タクシー運転者(男)の平均年齢は2017年で59.4歳まで上昇し、高齢化に歯止めがかからない状況が続いています。全産業(男)との比較では実に16歳もの格差を生み出しています。最も高い高知では平均年齢が65歳を超える事態となっています。深夜労働を含む不規則な勤務シフトの下で長時間労働と低賃金が長期に続く中、タクシー職場が若年者から敬遠される状況に陥っているとともに、年金を受給しながら働かなければ生活が成り立たないタクシー職場の現状を映し出しています。また、女性ドライバー比率も3%に満たず、高齢男性が働き手の中心となっています。
 こうした中、運転者不足が深刻さを増しており、2018年9月の一般職業紹介状況では職業計の有効求人倍率が1.64倍であるのに対し、自動車運転の職業の倍率は3倍を超え、さらに、トラックやバスの運転業務より賃金が低く、歩合給制で不安定な賃金体系で働くタクシー運転業務に就労を希望する人は格段に少ない状況にあります。

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