全国自動車交通労働組合連合会はハイタク産業に従事する労働者で構成する労働組合の連合体です。本ホームページは、どなたでも自由に全てご覧いただけます。


ホーム > ハイタク情勢


2017夏季労働セミナー討議課題の提起

 安倍政権の経済政策の失敗が明らかになったいま、与党内やマスコミまでも口をつぐみ、その明らかな失政に真正面から追及する者もいないというのが今の日本を現わしている現状があります。
 安倍政権の経済政策は「アベノミクス」で経済を成長路線に導き、消費増税で社会保障の充実と財政再建に道筋をつけるというものでした。しかし、すべての前提となる「アベノミクス」による経済成長は全く進みませんでした。逆に安倍政権の4年半は民主党政権時代よりも低い経済成長率で、実質賃金も低下しました。
 最終的にはゼロ金利という金融政策と、年金資金を使って株価を人為的に上げるという、いわばカンフル注射によって健康な体を作るという政策で、もともと多くの経済学者は支持していませんでした。カンフル注射を4年半続けた結果何が残ったか。個人消費は低迷を続け、日銀は国債を膨大に保有して日本国債の信用は低下し、財政健全化の公約はすべて先送りで八方ふさがりの状況です。

 個人消費の拡大には低所得者層の賃金を上げることが効果的ですが、安倍政権では逆に裕福な層の資産を増やす政策をとっています。これは過去からの自民党政治から見ても例外ではありませんが、特に安倍政権は露骨な政策を取っていることから、結果、個人消費の拡大には繋がらず、格差の拡大だけが進んでいます。
 実質賃金の推移を振り返ると、民主党政権下の2010年が1.3%増、2011年が0.1%増、2012年が0.9%減となり、3年間の累計では0.5%増となっています。これに対して、安倍政権下の2013年が0.9%減、2014年が2.8%減、2015年が0.9%減となり、3年間の累計では4.6%も減少してしまっています。要するに2012年から2015年の実質賃金の下落率は、リーマンショックの前後の期間を凌駕していたということです。普通に暮らす国民の立場から見れば、金融緩和に依存するインフレ政策はあまりにも拙速すぎたということだと思います。経済の本質や歴史について検証していれば、このような愚かな経済政策を行うはずはありません。

 経済的な格差の広がりについては、2013年後半の段階では、大企業に働く人たちは「円安により景気は少しずつ良くなっている」と前向きな意見が多かったのに対して、中小零細企業に勤める人たちは「全く景気は良くなっていない」と諦めてしまっていました。
 それと併行するように2013年以降、大都市圏と地方の労働者のあいだでは、実質賃金に大きな開きが生じてしまいました。大都市圏の多くでは実質賃金がプラスになったのに対して、地方の大半では実質賃金が大幅に落ち込み、県単位では優に5%超の下落をしているところも珍しくありません。まさに大企業と中小零細企業、大都市圏と地方といったように、格差拡大が重層的に進んでしまっています。
 「アベノミクス」が目指したトリクルダウンの理論では、円安で収益が上がる大企業が賃上げや設備投資に動くことで、中小零細企業や地方にも利益がしたたり落ちてくるはずでした。しかし、この理論はあまりにも経済の本質を逸脱したひどいものでした。私たちの働くハイタクなど中小零細企業ではすでに労働分配率が非常に高く、最初から賃金を引き上げるのは困難でありました。

 トリクルダウンの理論を生み出した本家米国でも、以前から富裕層から庶民へと富が落ちているという事実は全くなく、幻想にすぎないことが明らかになっていました。インフレと株高で潤ってきたのは富裕層と大企業だけであり、今でも格差拡大は止まっていません。その結果が米国大統領選で泡沫候補といわれたトランプ旋風が巻き起こり、現在に至ったという事実があります。

 日本の歴代政権では少なくとも小泉政権以降、成長戦略を本気でやる気が窺えません。経済でいう成長戦略が目に見えるかたちで現れるのは、早くて5年、普通は10年の年月を要するといわれています。今の政治にとって優先されるのは、成果がずっと先になる政策ではなくて、目先の選挙で投票してもらえる政策を掲げることに腐心しています。したがって、歴代政権は成長戦略において要点を絞らず、事柄を羅列した政策を掲げて賛成しているような素振りを見せてきましたが、結局のところ真剣に経済を立て直し、国民生活を底上げするという具体的措置は行われていません。
 安倍政権はその最たるもので、「アベノミクス」という造語を振りまき、期待させ、失政が明らかになった時点から経済にはほとんど触れず、本懐である共謀罪成立と新憲法の制定へ向けてなりふり構わぬ姿勢に転換しました。その間、社会保障制度の国民負担増を水面下で進め、年金の減額や支給開始年齢の引き延ばし、医療費の自己負担額増額、薬剤は同じ成分ならジェネリックのみ保険適用で先発薬なら全額自己負担など、あらゆる国民負担の検討がいま進められています。
 
 安倍政権は、かつて国会に上程して3度廃案になったいわゆる共謀罪法案を手直しして「テロ等準備罪」を創設する組織犯罪処罰法改正案を国会に上程し、衆参いずれも圧倒的な数の力で6月15日に成立させてしまいました。この法案の成立を阻止するため市民団体や労働組合など、この危険性を理解している人たちが連日抗議集会やデモなどをし、報道ではこのニュースを流さないため、SNSなどを通じて拡散され危険性に気付いた老若男女も各地の反対集会に参加して成立阻止を訴えてきました。
 そもそも、国会で3度も廃案になったのは、国会審議を経て、共謀罪法案が極めて危険で恣意的濫用のおそれがある法案であることが明らかとなり、多くの国民の反対の声を受けて野党が強力に反対して廃案に追い込んできました。

 我が国においては、法律上保護されるべき利益(保護法益)を侵害した既遂犯を処罰するのが原則であり、例外的に結果が発生しなかった未遂犯も処罰する。また、例外的に重大な犯罪については準備段階から予備罪・準備罪として処罰し(約46罪)、それよりもさらに重大な犯罪(刑法でいえば内乱罪)についてのみ、陰謀罪・共謀罪として賜与罰(しよばつ)されます(21罪)。
 このように、犯罪の既遂からさかのぼって、既遂犯←未遂犯←準備罪←陰謀罪・共謀罪という流れの中で、犯罪を合意したという段階での処罰は極めて例外であるというのが我が国の刑事法の体系でした。

 ところが今回成立してしまった法案は、277もの新たな共謀罪を新設したものであり、極めて例外であった共謀罪・陰謀罪を一挙に10倍以上も増やしており、それは刑事法の体系を崩すものであり、刑事法による処罰は抑制的であるべきとする主義に反しています。そもそも犯罪の合意(新たな共謀罪ではこれを「計画」と言い換えている)だけで犯罪が成立し、しかも、言葉を直接交わさなくても「暗黙・黙示の合意」でも良いとされることから、果たしていかなる場合に合意が成立したかが極めて曖昧です。
 そのため、捜査機関、とりわけ警察による恣意的な運用によって市民運動や労働組合などによる反政府的な運動の弾圧に利用される恐れがあります。「暗黙・黙示の合意」は、何ら言葉を交わしていないのですから、実際には何の合意もしていないのに、警察が、政府に反対する運動をしている市民団体や労働組合の構成員について、「犯罪の合意があったに違いない」と認定さえすれば逮捕したり家宅捜索をすることが可能になります。したがって、捜査機関、とりわけ警察による恣意的な運用を招く恐れがあり、えん罪を生む恐れがあります。

 今回成立した共謀罪では、かつての政府案が、単に「団体の活動」として、団体の限定をしていなかったことから、一般の市民運動団体、労働組合、会社組織も適用されるのではないかと指摘され、対象となる「団体」があまりにも広すぎるとの指摘があったことから、今回は「団体」に変えて、「組織的犯罪集団」という言葉が使用され、団体のうちその結合関係の基礎としての共同目的が対象犯罪(長期4年以上の犯罪)を実行することにある団体と定義されています。

 先の通常国会の予算委員会審議において法務大臣の代弁者である刑事局長は、2017年1月31日「そもそも結合の目的が犯罪の実行にある団体に限られる」と答弁して、普通の団体は除外されるとしていました。しかし金田法相は、その団体の活動内容が一変すれば普通の団体にも適用されることを認める答弁をしていたことから、法務省としての統一見解を求められ、2月16日、「もともと正当な活動を行っていた団体についても目的が犯罪を実行することに一変したと認められる場合には、組織犯罪集団にあたりうる」ことを認めています。
 そうだとすれば、普通の市民団体や労働組合、会社組織でも「組織的犯罪集団」に当たりうることになり、「一般人には適用されない」という説明は完全に破綻しています。
 政府は、2020年東京オリンピック・パラリンピックのための「テロ対策」として必要であり、安倍首相は「テロ等準備罪」がなければオリンピックを開催できないとまで言っていました。しかし、安倍首相はオリンピック招致の際には、「日本が世界で有数の安全国」であると述べていたことからも矛盾しています。

 国連の国際組織犯罪防止条約は、もともと経済的利益の獲得を直接または間接な目的とする組織犯罪を対象とする条約であり、マフィアや暴力団対策のための条約でした。ただ、2001年のアメリカでの9.11同時多発テロを受けて、その後G8においてはこの条約をテロ対策のためのものであると読み替えるようになったという経緯があります。しかし、本条約の主たるターゲットは組織犯罪であることは明らかであり、テロ対策が主たる目的ではないことは明らかです。
 ちなみに我が国は、国連の13のテロ防止関連条約すべてに加入し、そのための国内法整備も済んでおり、政府の国際組織犯罪・国際テロ対策推進本部は、2004年12月10日に「テロの未然防止に関する行動計画」を策定し、その後その行動計画に基づく国内法整備が実施されています。

 このように我が国は、テロ対策についての法整備はかなり実施されています。それを何のテロ対策もないかのように説明することは極めて不自然であり他意があるとしか思えません。共謀罪で実際に検挙するためには、共謀の現場を押さえるのがもっとも効果的ですが、実際には共謀の謀議は、密室など人から見えない場所で行われることから、実際には共謀罪を検挙することは難しいと考えられるため、謀議に加わった共犯者の自首や自白がなければ立件は難しいと考えられます。

 今回、この法案が成立したことによって検挙する捜査手法が必要となります。その捜査手法としては、尾行などの古典的な捜査のほかに、おとり捜査や潜入捜査も考えられ、なるべく早く謀議の内容を把握する捜査方法として考えられるものとして通信傍受や室内盗聴が考えられます。通信だけでなく室内の会話を補足する必要があるとして、現在は認められていない室内盗聴の制度化を求められる声があがることも予想できます。

 これまで公安警察がとってきた手法が、刑事警察の分野でも日常的に行われるようになり、監視国家が進むことは間違いありません。それだけではなく、政府はテロ対策を掲げていることから、アメリカが「9.11」の後の愛国者法で認めたように、テロの未然防止のための傍受を可能にする法律を提出することも考えられます。これが実現されればまさに監視社会となり、国民すべてのプライバシーが根こそぎ政府に把握される恐れがあります。
 この共謀罪は、政府が当初説明していたテロ対策とは名ばかりで、労働組合や市民団体など、安倍政権に対して批判的な団体や個人を狙い撃ちにした法律です。私たち労働組合は憲法28条で保障されている勤労者の団結権によって、労働運動、平和・環境運動を行ってきました。今の安倍政権が公言している憲法改悪、すなわち新憲法の制定を実現するには労働組合、市民団体などからの反対を抑え込む必要があるため、憲法改悪を発議して国民投票に持ち込む前に共謀罪を成立させて、政権に異議を唱える者たちの活動を制約する目的が垣間見えます。
 安倍政権の真の狙いは今の平和憲法を実質骨抜きにし、自民党改憲草案に沿って新しい憲法を制定することにあります。その中身は個人の人権を無くし、国民が国に尽くすという目的で、緊急事態条項が追加されています。この緊急事態条項を首相が宣言すれば、すべての法律は停止され、選挙も行われず実質の独裁政権となります。共謀罪はまさしく昭和16年3月に全面改訂された治安維持法を復活させるための法律となり、政府批判をする団体・個人をしばり、新憲法の制定を加速させたい狙いが明白です。

 私たち労働組合は、所管行政や事業者へは労働環境・労働条件の改善を権利として求めて行き、国の政策に対しては国民・勤労者として平和政策を基礎とした国民生活の改善を目的としてこれからも運動を続けていかなければなりません。
 今国会において「共謀罪法」が成立したことによって、本当にテロは防止できるのか、国民の思想信条の自由や結社の自由は損なわれないのか、日本の社会が過度の管理社会にならないのか、といった私たち国民の不安や疑問に対して政府からまともな答弁はありませんでした。今後はこの法律を受けて、施行規則や政令も作られることになりますが、これを厳しく監視しなければなりません。
 安倍総理が圧倒的な議席を持ちながら、利権を守り抜くために欺瞞に満ちた余裕のない強権的な政治を続けるのは「美しい国」の宰相としては全くふさわしくありません。

 私たちは今後も労働組合の横断的な連帯と、各方面の市民団体などと一層の連帯で、支持する野党などを通じて安倍政権の腐敗政治を徹底的に糺し、一日でも早く解散総選挙に持ち込み、自公の過半数割れによる独裁化を阻止しなければ、労働組合も日本の未来もありません。そのためには組合員やその家族はもちろんのこと、社会に広く投票行動を周知し、政治と労働運動や日常生活は密接に関わっているという事実をあらためて訴え、次の選挙に備えなくてはなりません。


1.白タク合法化の攻撃と改正タクシー特措法の限界(産業動向)

(1)タクシー事業の現状

 全国のタクシー事業者数と車両数は、2016年3月末現在(国土交通省調べ)、法人事業者数(福祉輸送限定事業者除く)が6,300社(前年6,390社・△90社)で190,127台(前年191,363台・△1,236台)、個人タクシーは35,883台(前年36,962台・△1,079台)で合計の車両数は226,010台(前年228,325台・△2,315台)となっています。規制緩和前の2001年の車両数と比較して法人タクシーは208,053台から17,926台減少し、個人タクシーも46,117台から10,234台減少しました。

 タクシーの輸送人員は、2014年度で15億5,700万人(対前年比▲9,100万人)。1台・1日平均17.7人となっています。また、営業収入は1兆7,230億円(対前年比▲127万人)で減少が続いています。法人タクシーの事業規模は、ほとんどが中小零細企業で占められ、保有車両数が10台以下の事業者が69.5%(2015年度末)を占め、従業員数が10人以下の事業者が62.6%を占めています。資本金が500万円以下(個人含む)の事業者は63.8%を占めています。

 日車営収(実働1日1車当たりの運送収入:法人タクシー)は、2015年度の全国平均で29,549円(対前年比+599円)で6年連続の改善になっていますが、リーマンショック前の28,473円を回復したものの、規制緩和前の30,951円を依然として下回る水準です。また、地域間格差も深刻で東京都48,071円、神奈川県37,451円の他、埼玉県・千葉県・愛知県で3万円を超えた一方で、宮崎県15,719円、和歌山県16,625円等、12県で2万円を割り込んでいます。


(2)規制改革推進会議の第一次答申と白タク・ライドシェア合法化に向けた攻撃

2015年2月にUber(ウーバー)社が福岡市でライドシェアの実証実験を開始しましたが、利用者に対し無償で輸送サービスを提供していたとしても、運転者に対して調査費と称して運送の対価が支払われていることから国交省は道路運送法で禁止されている白タク行為に当たるとして中止を指導。ウーバー社も実証実験を終了しました。
 また、楽天・三木谷氏はライバル会社Lyft(リフト)社に投資し、自ら会長を務める新経済連盟として規制改革会議や国家戦略諮問会議ワーキンググループの場で「シェアリングエコノミーの成長を促す法的環境整備」を要望、民泊とライドシェアの合法化を求めています。さらに2015年9月に国家戦略特区諮問会議で竹中平蔵氏(民間議員=パソナ会長)らが意見書を提出し「過疎地におけるライドシェアの拡大」を提案し、過疎地で風穴を開ける動きと連動し、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催の東京でライドシェアを解禁させろと、新経済連盟・シェアリングエコノミー協会が内閣官房長官・規制改革担当大臣・IT担当大臣・厚生労働大臣・国土交通大臣あてにライドシェアの合法化に関する具体的提案を行っています。

 その後、国家戦略特区諮問会議(議長・安倍晋三)が「過疎地域等でのライドシェアの拡大」を盛り込んだ国家戦略特区法の一部改正法案を提出し、2016年5月27日に「国家戦略特別区域自家用有償観光旅客等運送事業」を新設し、「自家用車の活用拡大」とする形で法案が成立するに至っています。しかし、タクシー労使、国交省などからの猛反対を受けたため、当面は国家戦略特区内で、そして、現行制度の自家用有償運送の形を変えてという意向で、道路運送法78条にある「特例」部分を一部変更、附帯決議において「いわゆるライドシェアの導入は認めない」とし、これまでの自家用有償運送と同様に、運送事業の登録制、運送主体が非営利団体か自治体に限定することとなりました。

 「国家戦略特別区域自家用有償観光等運送事業」という名称になり、主な運送対象は「訪日外国人をはじめとする観光客等」は、利用者登録の必要はなく観光客や地元住民ならびにビジネス客などすべて利用可能となっています。また、それと同様に懸念されるのは、従来の自家用有償運送では設けられ業界労使も参加している運営協議会が自家用有償観光等運送事業の審議過程ではなくなり、直接国家戦略特別区域会議による計画策定へと進んでいくところにあります。いわゆる違法・脱法に対するフィルターが無くなり、規制緩和へ突き進む恐れが大きくなると同時に、全国的にその自家用有償観光運送が拡大すればやがては特別区域の枠もなくなるところにあります。

<国家戦略特区法の一部改正の概要>


 日本政府は、2017年5月23日、規制改革推進会議で第一次の答申を出し、「ICT、AI等の技術革新を活かした旅客運送事業等の規制改革」を公表しました。①ICTを活用した新しいタクシーメーターの普及に向けた環境整備、②利用者の同意を前提とした事前確定運賃の実現、③自家用自動車による運送などの平成29年度、30年度内に検討・結論・措置講じるとしている。
 また、2017年5月30日の未来投資会議で「未来投資戦略2017」の素案が取りまとめられたが、シェアリングエコノミーの推進を引き続き揚げたが、自家用車ライドシェアの合法化に繋がる記述はなかったが、民間・自治体からの相談に対する「グレーゾーン解消制度」の活用、自治体のモデル事例の創出などを重点項目に揚げ、「今年中30地域」をモデル数値目標と設定しました。

 特に、規制改革会議第一次答申では、自家用自動車による運送について自家用車ライドシェアの合法化に繋がる記述はなかったが、公共交通が充実していない地方の移動としてインターネット等を介し目的地を同じくする者同士の自家用自動車の相乗りをマッチングさせるサービスが始まっているとし、道路運送法第78条において、自家用自動車による有償運送は登録又は許可を受けた場合以外には原則禁止、通達で、この登録又は許可を要しない運送の態様についての例が示されていますが、自家用自動車による有償運送が原則禁止されている趣旨が通達上明確に示されていないことから、登録又は許可を要しない運送の範囲の解釈が困難で、このことが、このようなサービスの普及を妨げる一因となっているものと考えられるとしています。
 そして、登録又は許可を要しない自家用自動車による運送について、ガソリン代等の他に一定の金額を授受することが可能な範囲を通達により明確化するとしています。

 自家用車相乗りマッチングサービスの道路運送法などの解釈・取り扱いは、国交省の「登録許可・認可に要しない運送の態様」をベースに、経産省が「グレーゾーン解消制度」で判断が出されています。グレーゾーン解消制度では「ガソリン代と道路通行料金を上限値として設定してあれば、旅客自動車運送事業に該当せず、道路運送法上の許可・登録を要しない」となっていて、これを後押しする内容です。安倍政権が続く限りは次期国会で再び道路運送法改定による白タク合法化が取り沙汰されることに間違いはないことから、今後も引き続き国民に対して白タクの危険性を訴え続けていく必要があります。


<規制改革会議第一次答申>(規制改革推進会議) 2017年5月23日
①ICT、AI等の技術革新を活かした旅客運送事業等の規制改革 
ICT(情報通信技術)ソフトウェアを活用したタクシーの「ソフトメーター普及」の開発
【平成29年度上期検討開始、平成30年度上期結論、編成30年度措置】
 ソフトメーターの開発は、日本交通が規制改革会議に提案し、規制を所管する経済産業省、国土交通省が実現可能と回答していた。
現行のタクシーメーターは計量法の「特定計量器」に指定され、誤差を確認する「装置検査」が年1回義務づけされている。運賃を変更するたびに費用が発生し、事業者の負担になっていた。
答申では、「運賃算出の基礎として必要十分な精度の距離情報などを遵出するシステム、ソフトメーターなどの利用も可能にする」と容認。「精度を担保する仕組みや技術基準を検討し、速やかに結論を得る」

②利用者の同意を前提とした事前確定運賃の実現
【平成29年度検討開始、平成30年度結論・措置】

 渋滞や回り道等で値段が高くなるかもしれないという不安なくタクシーを利用したいというニーズに応じたサービスが実現できるよう、配車アプリ等によりあらかじめ運行経路と運賃を利用者に提示し、これに利用者が同意することを条件に、経路を特定した個別認可を受けることなく、一定の方式により事業者が柔軟に運賃設定することを包括的に認可する仕組みについて、利用者保護を図るための措置も含み検討を行って結論を出す。

③自家用自動車による運送
【平成29年度検討・結論】

 公共交通が充実していない地方の移動を支え、多様化する移動需要に応じるサービスとして、インターネット等を介し目的地を同じくする者同士の自家用自動車の相乗りをマッチングさせるサービスが始まっているが、十分に普及していない。登録
又は許可を要しない自家用自動車による運送について、ガソリン代等の他に一定の金額を授受することが可能な範囲を通達により明確化する。


(3)ICT(情報通信技術)アプリ配車事業者との闘い

 ウーバーなどを導入した国や地域では、日本のタクシーのような厳密な運行管理や教育がなされているところが殆ど無く、サービス水準が決して高いとはいえない地域でライドシェアがもてはやされてきた経緯があります。しかし、そうした国や地域ではウーバーなどのシステムによる負の面で大きな問題になっています。事故の補償問題、暴力事件、強姦事件、運送対価巡るトラブルなどドライバーと利用者間のトラブルが頻発しています。また、登録しているドライバーがウーバー社に対して雇用関係の有無や地位確認を求めて複数の国で集団訴訟を起こしています。さらに、ウーバーがドライバーに車両を斡旋(あっせん)して逃げられないようにしている事実も実に問題です。今までウーバーの事業形態を認めていた国でも、問題が多いことから法律で禁止しだした地域や、国全体でウーバー排除に向けた取り組みが進んでいるところもあります。

 日本国内では、路線バス事業者に対する国・自治体の助成金・補助金を取りやめさせ、軽トラック、軽自動車の空き席に相乗りさせるサービスをアプリで導入させることを普及させる動きも存在します。
 世界の多くの国にウーバーが入り込んでいますが、日本での政府提案のような、過疎地・交通空白地での配車アプリの要請はありません。日本国内の公共交通に対する信用や安全規制などを崩す方法として、地方部から攻めて、最終的には都市部をターゲットに事業展開を狙っているのは明らかです。


(4)市民会議の運動の広がり

 2016年8月5日に「交通の安全と労働を考える市民会議」をハイタク労働4団体が参加して立ち上げ、アジア太平洋資料センターの内田聖子事務局長、首都大学東京の戸崎肇教授、元日弁連副会長の新里宏二弁護士、元日本労働弁護団会長の宮里邦雄弁護士(東京共同法律事務所)の4名を代表世話人として活動を開始しました。2017年4月26日に衆議院議員会館で開催したシンポジウムは市民会議と日本労働弁護団との共催が実現しました。全国各地で有識者や市民団体を巻き込んだ白タク・ライドシェアの安全面・労働面の問題を広く訴えて運動を展開しています。こうした中で大阪では大阪タクシー協会と労働5団体が共同でリーフレットを作成し街宣行動を展開する取り組みに発展しています。また、6月14日には、名古屋で5回目の市民会議シンポジウムを開催され、地域交通の維持・創造・育成の課題を柱に、自治体・事業者・住民が一体で地域生活交通を作り出す取り組みを推進することが地方でライドシェアに付け入るスキを与えない重要な取り組みであることを訴えました。今後は、8月1日に横浜・関内ホール、9月5日に盛岡市でのシンポジウムが予定されています。そして、9月30日には、東京・星陵会館においてニューヨークのタクシー労働組合、ウーバードライバーを招き、日本のクラウドワーカー(ウーバーイーツ配達員)にも参加要請してシェアリングエコノミー、ライドシェア問題を提起し、公共交通のあり方を議論するシンポジウムとデモ行進を400人規模で行うこととしています。
 また、労組主導で地方議会でのライドシェア導入反対・公共交通の維持・活性化を求める意見書採択も進んでいます(6月9日・兵庫県議会、6月29日・青森市議会)
 今後も全自交はタクシー産業の基盤を奪う白タク合法化阻止に向け反対運動を強化してきいきます。


<ライドシェア(白タク)の問題点>
1.事故の責任はドライバー
 インターネット仲介事業者が運行指示をしているにも拘わらず、事故に対する事業責任は負わない、白タク運行に関する責任は、白タクドライバーが負うことになります。
 日本では、軽井沢スキーツアーバス事故でも明らかであるように、バス会社・ツアー会社の事業責任の追及が当然の社会問題となりました。2014年4月の関越ツアーバス事故後の無制限の任意保険が義務づけられており、責任放棄は認められません。プラットホームが事業責任を負わないことによって、乗客のみならず運転者も危険にさらされます。
 また、2015年2月の福岡で起きた白タク実証実験では、運転者の契約書の相手先がオランダ法人となっており問題です。

2.安全管理の仕組み
 白タク事業者の安全管理は基本的に白タク事業者任せで、法律や規制のチェック機能がありません。タクシー事業者は道路運送法のもと、2005年のJR福知山線脱線事故(106名死亡)を受けて、2006年に制定された運輸安全マネジメントを導入、航空・鉄道・船舶と同レベルの運行責任が法人に義務付けられました。白タク事業者の安全管理は基本的に事業者任せであり、法律や規制のチェック機能がありません。
 また、軽井沢スキーバス事故後、事業用運転者には脳MRIの受診レベルの健康チェックの必要性が問われています。タクシー関連従事者は二種免許の有無はもちろん、1日2回のアルコールチェックやドライブレコーダー画像による教育などを行い、安全に関する意識は、白タク運転者とは格段の差があります。

3.社会保険料の負担
 白タク事業者は、運転者を個人事業主であるとして社会保険料を負担していません。
 タクシー事業者、労働者は、社会保険料(健康保険・雇用保険・年金等)を負担しています。 しかし、諸外国の白タク運転者の半数以上はフルタイム労働をしており、カリフォルニア、マサチューセッツ州では白タク運転者が社員としての地位を労働裁判で認めさせるなど社会問題化しています。日本では、2016年10月より社会保険料の適用範囲の拡大が実施される中、白タク運転者の増加による社会保険料徴収は新たな問題となります。

4.交通弱者対応(高齢者、障害者が排除)
 白タク配車にはスマートフォンが必要で、高齢者、障害者にはスマートフォンが使えない方が多く、所持していない人は配車申し込みが出来ません。白タクは個人所有の自家用車なので車イスなどには対応できません。
 スマートフォンは、デジタル強者のためのもので、コールセンターがない過疎地の老人、子供など電話では対応しません。また、料金システムでも、外国ではラッシュ時、悪天候などの繁忙期は料金が簡単に2~10倍以上となる仕組みです。
 日本のタクシーは福祉車両・UD車両を導入し、運転者にはユニバーサルドライバー研修を実施させ2015年末で約2万人が研修を終えています。

5.世界的にインターネット白タク事業は排除
 白タク行為についてはドイツは全面禁止、フランス・パリで中止命令、インド、スペイン、メキシコ、香港、ブラジル、ベルギー、カナダ、イギリス、韓国、オランダ、タイなどでも業務停止命令が出されるなど、違法な白タクとして排除する動きが顕著となっています。

6.改正タクシー特措法の趣旨とも矛盾
 改正タクシー特措法の趣旨は、タクシー運転者の労働条件改善と、利用者の安全・安心を提供することです。議員立法として成立した改正タクシー特措法の趣旨・目的とライドシェア合法可の政策は矛盾しており、改正タクシー特措法の趣旨を著しく損なう事になります。


2.魅力ある産業とするための労働条件再構築(労働条件課題)

(1)タクシー労働者の賃金水準

 2016年度のハイタク運転者の年収は、厚労省の賃金構造基本統計調査からの推計で332.0万円となり、3年連続で300万円を超え、前年より約22.2万円改善し、6年連続の増加を見ました。しかし、全産業男性労働者との年収格差は、前年と比較して縮小したものの、依然として217.4万円に上っています。
 都道府県別では、東京の442.8万円を最高に、千葉県の387.7万円、大阪府の368.1万円が続きました。一方、大分県の217.2万円が最も低く、鹿児島県の220.7万円、鳥取県の221.1万円の他、山口県、岩手県、沖縄県、秋田県、茨城県、宮崎県、愛媛県、和歌山県の11県で250万円未満となっています。こうした地域では生活保護にも満たず、法定最低賃金にも抵触する事態が浮き彫りになっています。
 タクシー労働者の低い年収水準が長期化していることによって、若年者から敬遠される傾向が強まるとともに高齢化に歯止めがかからず、平均年齢が58.9歳まで上昇しました。

 日本の労働力人口の減少が進む中、あらゆる業種が新入社員の獲得のために初任給を引き上げたり、労働時間を削減したりする動きが拡大していることを考えれば、タクシー産業においても思い切った大幅な労働条件改善に踏み出さなければ、乗務員確保がままならず事業継続をあきらめざるを得ない事業者が増加することが懸念されます。実際、地方における倒産・廃業が多発しており、タクシー産業が地域交通を支え、生活に欠かせない「ドア・ツー・ドア」の公共交通機関としての役割を担う必要性が高い地域においてタクシーが消滅する事態を何としても食い止めていかなければ、ライドシェア等の白ナンバー輸送の拡大を事実上許してしまうことになりまねません。安全で良質なサービスを提供し、地方公共団体や他の輸送モードとの連携を強化しながら、地域の公共交通網計画に参画し、福祉輸送や観光輸送を積極的に展開することで産業として生き残っていくために、家族を養える賃金水準を早急に確立することが喫緊の課題です。


(2)改正法成立時の国会附帯決議の完全履行と魅力ある労働条件の確立

 改正法成立時の附帯決議にもあるように、ハイタク労働者の賃金制度について具体的な改善措置を求めて実現していく取り組みを強化します。

 附帯決議の完全履行を求め、①累進歩合の排除、②固定給と歩合給のバランスの取れた賃金体系の再構築、③運転者負担の見直し、④過度な遠距離割引の是正、⑤運転代行との兼務禁止、⑥過労の防止対策などで賃金制度の改善が急務であることを経営者に強く訴えて、全てのタクシー運転者が労働条件の改善を実感できる状況をつくり、若年者や女性にも魅力ある労働条件として社会的に認識されるよう全力をあげます。2017春闘において、日勤勤務における勤務間インターバル協定が拡大しました。「働き方改革」が叫ばれる中、こうした取り組みが大きな注目を集めています。タクシー産業にとって、乗務員を確保するためには、誇りややりがいを感じられる魅力ある労働条件にすることが最重要の課題であり、改正特措法の実効ある運用で供給過剰を是正させ、地域統一の適正運賃を確立し、それが運転者の労働条件改善に直結するよう闘います。

 また、不当な運転者負担や賃金カットを行う悪質事業者に対する厳格な監査と処分を要請していきます。


(3)適正な賃金計算とタクシー職場の法違反一掃

 最低賃金が引き上げられるにつれて、全タク連は中央最低賃金審議会に対して、引き上げの慎重審議を求める要望書を提出し、改定額の抑制を毎年求めています。これに対して全自交労連は、最低賃金の大幅な引き上げを求める要請書を提出し反論していますが、低下した乗務員の労働条件改善を目的に改正法が施行される中にあって、大幅減車を即時実行することで稼働効率を高め、一人当たりの営収を向上させながら賃金改善につなげる責務はまずもって経営者にこそあります。また、国交省には環境が悪化した全ての地域を特定地域に指定して強力な対策をとり、労働条件改善を図っていく義務があります。近年、事業者の労働基準関係法令の違反や改善基準告示違反が増加しています。客待ちや待機時間を不就労とする違法な労働時間カウントや実際には休んでいない長時間(3時間を超える時間)に及ぶ休憩時間の設定などで最低賃金の支払いを逃れようとすることを許してはなりません。また、安易に労働時間削減で乗り切ろうとする経営姿勢は断じて容認することはできません。労働者の労働対価は会社都合で減額されてはなりません。

 2015年のタクシー職場における労働基準関係法令の違反事業者数は、監督実施事業者数の84.4%を占め、高い水準のまま改善されていないことがわかります。その内訳は労働時間が45.7%、割増賃金が27.8%、休日が6.2%となっています。また、改善基準告示違反事業者数も42.8%を占め、内訳は最大拘束時間32.9%、総拘束時間23.7%、休息期間11.7%です。こうした違反事業者数の割合は依然として高率で推移し、改善の兆しすら見えない状況です。法律無視が常態化している現状に怒りをもって対処し、悪質事業者の監視・摘発を強化します。




3.白タク合法化を阻止し、地域交通を担うタクシーに変革(政策課題)

(1)タクシーの産業基盤を奪う白タク合法化を阻止

 白タク・ライドシェア合法化の攻撃は、公共交通機関が手薄な地方で風穴を開け、その既成事実を積み重ねながら、最終的には収益が見込まれる都市部で事業展開することこそ目的です。2017年5月23日の規制改革推進会議の第一次答申は、地方でマッチングサービスが普及していないことを指摘し、登録を要しない自家用車運送でガソリン代等の収受可能な範囲を通達で明確にするよう求めています。ウーバー社等々のライドシェアに代表される白ナンバー輸送が日本全国に普及すれば、タクシーの産業基盤が奪われるにとどまらず、路線バスや鉄道を含めた地域公共交通の存立を脅かすこととなっていくのは明白です。

 現在、以下の通り、違法性のある白ナンバー輸送が様々な形で拡大されようとしています。
 ①ウーバー社は、東京都内でのスマートフォン・アプリを使った都市型ハイヤーのマッチングサービスを展開するとともに、京丹後市で自家用有償運送の形態で事業を行っています。また北海道中頓別町で無償運送を実施。多くの自治体に営業活動を行っています。
 ②リクルート社は、交通空白地の自家用有償運送をサポートする事業を展開し、車両や保険とともにタブレットを提供し、自家用有償運送「あいあい自動車」の実証実験を三重県菰野町で行っています。その他、長野県、富山県内で自治体に営業活動を展開し、長野市内に事務所を開設しています。
 ③「のってこ」は、長距離の相乗りを対象にマッチング事業を展開し、北海道の天塩町と連携し、天塩と稚内間をつなぐ地方都市専用サービスを提供しています。
 ④ジャスタビは、旅行会社HISの子会社としてレンタカー利用者と観光ドライバーのマッチング事業を沖縄で展開し、主に中国・台湾からの訪日旅行者に売り込んで事業を拡大しています。現在、札幌と東京での事業拡大を進めています。

 こうした、動きに対し、違法性の確認や実態調査をしかっり行いながら、関係機関に対し中止を求めて要請行動を強めていきます。
 同時に、タクシー産業の利便性を向上させる取り組みも急務であり、ウーバーのアプリに対抗するタクシーアプリの導入を全国各地で推進していく必要があります。
 さらに、バス・タクシーの公共交通こそ自治体との連携を強め、地域の生活に欠かせないタクシーとなるために利用者ニーズに適した乗り物として生まれ変わる努力が重要になっています。自治体においてもタクシーの活用は住民サービスの維持にとって大変重要なものになっています。免許返納者や車を持たない高齢者へのタクシー券配布、園児の病院へのタクシー送迎補助(松山市)、集団検診に対するタクシー代支給(高崎市)等も取り組まれています。こうした、自治体のタクシー活用事例を今後さらに拡大していかなければなりません。

 「交通の安全と労働を考える市民会議」の公開シンポジウムを全国の主要都市に拡大しながらシェアリングエコノミー、ライドシェアの安全面・労働面の問題点を広く訴えながら世論形成に全力を上げます。
 ライドシェアの導入に反対し、地域公共交通の充実を求める意見書採択が多くの地方議会で拡大しています。労働組合が地方議員や業界団体との連携を強め、白タク・ライドシェアを地方に導入させない取り組みも力を入れていきます。ウーバー等のマッチング事業者が安倍政権と連携しながら「地方で風穴を開け、都市部に進出する」という戦略で攻撃している今、「地方こそ主戦場」と位置付けて反対運動を進めていきます。


(2)改正タクシー法の限界を乗り越え、道路運送法の抜本改正を

 改正タクシー特措法が施行されたにもかかわらず、特定地域の指定基準が極めて限定的な指定にとどまり、改正タクシー特措法の立法趣旨に反する運用となっています。特定地域に指定されたとしても、作成される地域計画は国が示した適正車両数の上限値をさらに下回る台数まで減車させることが困難であり、乗務員不足が大きな問題となっている状況では、単に遊休車両を削減するだけとなり、運転者の労働条件向上に結び付く対策ならないのが実態です。運賃面でも、国が低運賃事業者との裁判で敗訴し、こうした地域では公定幅運運賃の下限見直しが行われるに至っています。これを機に熾烈な運賃競争が展開される地域まで出現しました。
 現在、「地域限定」「期間限定」の対策にとどまる改正タクシー特措法の限界が徐々に明らかになってきています。「全国的」「恒久的」対策が保障されるためには、全自交労連が求めてきた事業の「許可制」を「免許制」に改めることを柱とし、適正運賃の制度が全国に適用される道路運送法の抜本的改正(タクシー事業法)をあきらめることなく要求していかなければなりません。


(3)地域公共交通網形成計画の推進

 ライドシェア問題はタクシーの今後の在り方を問う問題としてあり、タクシー産業にはかつてない大きな変革が求められています。改正「地域公共交通活性化・再生法」の施行により、タクシーは重要な公共交通と位置付けられ、自治体の責任で持続可能性のある地域の公共交通ネットワークの構築が求められる時代に入りました。自治体・タクシー関係者・住民が一体となって地域の生活交通を創造していかなければなりません。

 安倍政権下で地方経済は低迷を余儀なくされ、地方の危機が深刻化しています。人口減少が急激に地方を襲い、2040年に「消滅可能性自治体」は896(49.8%)とされています。買い物弱者も高齢者を中心に全国で700万人を超え、病院経営の悪化から統廃合が進む中で通院の困難さも増しています。市町村合併や学校の統廃が加速し、生活に必要な移動距離はますます伸びています。公共交通の衰退で鉄道や路線バスの廃線問題も実に深刻な状況です。

 しかし、住民にとって交通権(移動する権利)は、憲法で保障する「生存権」や「幸福追求権」と同格の権利としてあり、住民の足を守る責務を国や自治体が持っていることを明確にし、事業者・住民の連携のもとタクシーを最大限活用した生活交通の創造を関係機関に働きかけていきます。

 現在、全国で「地域公共交通網形成計画」の作成が進んでいますが、全ての自治体で網計画が作成され、タクシーが重要な役割を担うシステムとなるよう奮闘していかなければなりません。地域の生活交通を積極敵に担い「住民から頼りにされるタクシー」に生まれ変わるために奮闘します。


4.地方組織の防衛と組織拡大・強化に向けた取り組み(組織課題)

 タクシー産業はその存亡をかけた大きな歴史的転換期を迎えています。タクシー産業にはこれまでにない変革が求められており、労働組合も地域交通を現場で担う労働者組織として、住民生活に欠かせないタクシーを築くために全力をあげるときです。
 タクシー労働者の置かれている厳しい労働環境が続き、職場での不条理な扱いに対する労働相談や労働組合結成相談が増加しています。積極的に職場と地域で労働組合の存在意義を啓発するとともに、組織された労働者と未組織の労働者の権利格差・賃金格差を示しながら労働組合の結成や全自交への加盟を訴え、積極的に行動することが求められています。

 白タク・ライドシェア問題の危険性を多くのタクシー労働者に伝え、白タク拡大に対する危機感をともに共有していかなければなりません。多くの地方自治体や議会に働きかけた白タク合法化絶対阻止の取り組み、改正法の不備を訴えて闘った青森タクシー裁判、各地の特定・準特定地域協議会での適正化・活性化の推進を求める取り組み等々、全自交が進めてきたタクシー政策とその行動・成果を広く訴えることが必要です。

 職場での労働条件改善やタクシー政策の推進、平和と暮らしを守る政治課題にとって全自交の組織拡大は最重要の課題となっています。全自交加盟組合のある職場では、全ての単組が過半数を維持し、強い交渉力を確立しながら積極的に団体交渉を積み上げ、労働条件改善に奮闘していく必要があります。近年、ユニオンショップ協定やエイジェンシーショップ協定は各地で拡大しており、嘱託社員の労働条件改善・正社員との格差是正を取り組みも前進しています。職場のすべての労働者を対象に組合加入を働きかけるとともに、経営者に対してショップ制を要求して実現していくことも重要な取り組みです。

 大阪では労働団体とタクシー協会が協力して白タク・ライドシェアの危険性を訴える街頭宣伝を連続して取り組んでいます。また、労使が協力して、茨城県、兵庫県、名古屋市、青森市等でライドシェアに反対する意見書が採択されています。職場の労働条件については、労働基本権を武器に真摯な団体交渉を通じて労働条件を決定しながら、一方でタクシー政策の実現のためには労使が協力して交通政策を推進していくあり方を追求していくことが求められます。①職場での組織率向上、②経営者との交渉力の強化、③政策闘争の推進に向けて奮闘しましょう。

 組合役員の学習活動を強化し、職場や地域から労働協約違反、不当労働行為、労基法違反、「改善基準」違反を一掃するために素早く、適切に行動することも重要です。
 職場によっては、経営困難から、賃金遅配や倒産・廃業が襲っています。困難なときこそ労働組合の底力を発揮し、単組、地連・地本、本部の連携と地域の支援を結び付け、全力で活路を開き、全自交の旗を守り抜き組織を拡大する闘いも進めていかなければなりません。

 また、ハイタク産業の産別組織として、タクシー政策に労働組合の立場から大きな影響を与えてきた全自交運動の歴史と現在に自信と確信を持ち、全ての運動の成果を組織拡大につなげて行く取り組みを強化していかなければなりません。規制緩和と真正面から対決し、これを転換させるためには組織力・財政力の強化が欠かせません。組合員・役員の高齢化が進んでいますが全国各地の全自交運動を継承しつつ新たな取り組みに挑戦していくことが真に求められる状況にあり、より多くの組合員・役員が活動に積極的に参加し、学習と経験を共有しながら、次世代の活動家を育成していくことに全力を上げます。




全国自動車交通労働組合連合会
〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷3-7-9
TEL:03-3408-0875 / FAX:03-3497-0107
E-MAIL:zenjiko-roren@zenjiko.or.jp
Copyright(c) Zenjiko-roren.National Federations of Automobile Transport workers Unions.ALL RIGHTS RESERVED.