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2016夏季労働セミナー討議課題の提起

 2012年12月26日に安倍政権がスタートし、4年目に入りましたが、多くの人々の所得は増えず、消費が低迷するばかりでなく、格差が拡大しています。政府は、大企業と富裕層を優遇する一方で、消費税を引き上げ、庶民から税金を吸い上げるなど、大企業優先の政策を進めてきましたが「トリクルダウン」は起きず、大企業は利益を内部留保で溜め込んだままです。株価も年金積立金まで投入して吊り上げ、投資家に恩恵を与えてきましたが、今では下落の一途となっています。

 元来、消費税増税分は子育てや介護・医療などの社会保障を充実させる枠組みで行われました。安倍政権になり二度にわたり延期したことで、もはや理念もそれが真実かどうかも疑念を抱くこととなりましたが、私たちは前段の消費税増税自体に一貫して反対を唱えてきました。政府は社会保障費だけを財源がないといいながら、国民から見れば無駄と思える支出を惜しげもなく行ってきたことと、タクシーをはじめとした利用者から直接消費税を徴収する仕事では収入に直結していきます。低所得者ほど負担率が重い逆進性であることから、負担と給付のバランスも崩れている以上、今後は税と社会保障を再構築し、富裕層に対する増税と大企業からの法人税引上げを検討していくべきです。

 また、経済が回復しないのは、内需を拡大できず、個人消費が低迷したままであるからです。若者にも高齢者にも貧困が拡大し、日本社会から希望を奪っています。日本経済再生の課題は、こうした低所得者を支援し、多くの人々の所得を増やし、雇用の安定化を図りながら将来不安を払拭することです。所得の再配分を進めることを通して内需を拡大させることが最重要の課題です。

 安倍政権発足以来、実質賃金は低下し続ける中、ブラック企業がはびこり、2011年と2015年の比較で非正規労働者は169万人増加した一方で正規社員は48万人減少しました。2015年に派遣法が改正され、「生涯派遣で低賃金」の不安が広まっています。さらに、「残業代ゼロ」や「金銭解雇制度導入等の労働法制改悪も狙われています。こうした動きと対決し、社会保障の充実、最低賃金引き上げ、中小企業支援、雇用の安定を実現し、生活を保障する安心社会を作っていかなければなりません。そのことが社会に活力と購買意欲を与える原動力です。実際、格差を拡大させた安倍政権下での成長率はわずかに0.6%(2012~15年)にすぎません。「分厚い中間層の再生」を目指した民主党政権下の1.7%(2009~12年)を大きく下回っているのは紛れもない事実です。

 一方、昨年9月に多くの反対を押し切って成立した安全保障関連法(安保法)は、自衛隊を戦場に送り込んで戦闘行為をさせるものです。安保法が施行され、9月に自衛隊がPKOで内戦が激化する南スーダンに派遣されますが、戦後初めて「殺し殺される」戦闘行為に手を染めることが現実的となっています。違憲と指摘される安保法を廃止に追い込み、「不戦の誓い」を新たにしなければなりません。また、自民党の改憲草案は、政治権力を制限するはずの憲法の役割が逆転させられ、「緊急事態条項」や基本的人権の制約、「公の秩序」の優先等々、憲法によって国民の自由を制限するものになっています。立憲主義、民主主義、平和主義を否定する憲法改正を絶対に許してはなりません。

 安倍政権の悲願ともいわれる憲法改正は、自民党改憲草案を見る限り平和関連項目をことごとく削除、または、追加項目を加える事によって骨抜きにされており、新設した「緊急事態条項」にその本心が書かれています。首相が緊急事態を宣言すれば、すべての法律は停止され、三権分立、基本的人権も含め個人の権利は認められなくなります。集会、デモ、政府批判の言論制御などのほか、選挙行為の停止も含まれてきます。
 
 経済的徴兵制度とともに国防軍の創設を目指しており、そうなれば平和憲法を持つ世界でも唯一無二の日本が諸外国からは好戦国とみなされ、ますます挑発されていくことになります。私たちが護ってきた平和憲法ほど尊い憲法はありません。これからも、平和憲法があるからこそ平穏な日常があるという思いを強く持って、改憲勢力と闘っていかなければなりません。沖縄の民意を踏みにじる辺野古の新基地建設、福島の苦難を顧みず進める原発再稼働、農業と地域社会を破壊するTPP参加に対する怒りの声も充満しています。大企業や国益のために労働者や住民を犠牲にする今の政治を根底から変えるために全力を上げなければなりません。

 4月14日と16日に震度7の揺れを記録した「平成28年熊本地震」は、2ヶ月が経過した中で震度1以上の余震が1,700回以上も観測されています。一連の地震による死者は49名となり、建物損壊は14万棟を超え、今なお6,000人を超える多くの方々が避難生活を余儀なくされています。また、東日本大震災から5年半が経過しました。今なお16万人(2016年5月現在)が公営、仮設、賃貸、親族、知人宅等で避難生活を強いられ、東北被災地3県内には11万2千人、全国各地に4万8千人が散在しています。安倍政権は、福島原発事故の収拾策を見いだせないまま、東日本大震災後の原子力新規制基準の下で、昨年8月には九州電力の川内原発1、2号機を再稼働させ、その後、関西電力高浜原発3、4号機を再稼働させました。今年7月26日には四国電力伊方原発3号機を再稼働させるため、核燃料の装着を始めています。国内で5機の原発が再稼働されるようになり、何れも活断層がすぐ近くにある中で政府の原発商法に批判が集中しています。日本国内では、全原発を停止しても電力は余っている状態にあり、配給にも問題がなく、原発に頼る必要はありません。東京電力福島第一原発事故の収束も全く見えない状況のなかで、汚染水対策として原子力規制委員会が3月に認可した、「やってみなければわからない『凍土壁』に総額470億円の財政出動をしましたが、あえなく計画は失敗しました。原発には大きな利権が取り巻き、事故収集作業に関しても莫大な政府資金が発生しています。その反面、周辺住民の避難計画などは現実離れした空論でしかありません。引き続き原発即時停止、即時廃炉へ向けて声を上げ続けなければなりません。
 

1.白タク合法化の攻撃とタクシー適正化の遅延(産業動向)

(1)タクシー事業の現状

 全国のタクシー事業者数と車両数は、2015年3月末現在(国土交通省調べ)、法人事業者数(福祉輸送限定事業者除く)が6,390社(前年6,456社・△66社)で191,363台(前年192,736台・△1,373台)、個人タクシーは36,962台(前年38,112台・△1,150台)で合計の車両数は228,325台(前年230,848台・△2,523台)となっています。規制緩和前の2001年の車両数と比較して法人タクシーは208,053台から16,690台減少しました。個人タクシーも46,117台から9,155台減少しました。

 タクシーの輸送人員は、2013年度で16億4,800万人(対前年比+800万人)。1台・1日平均18.7人となっています。また、営業収入は1兆7,357億円で、減少傾向が続いています。法人タクシーの事業規模は、ほとんどが中小零細企業で占められ、保有車両数が10台以下の事業者が71.6%(2014年3月現在)を占め、従業員数が10人以下の事業者が65%を占めています。資本金が500万円以下(個人含む)の事業者は64.7%を占めています。

 日車営収(実働1日1車当たりの運送収入:法人タクシー)は、2016年度の全国平均で28,950円となり5年連続の改善になっていますが、リーマンショック前の28,473円を回復したものの、規制緩和前の30,951円を依然として下回る水準で推移しています。また、地域間格差も深刻で東京都46,968円、神奈川県37,293円の他、埼玉県と千葉県で3万円を超えた一方で、宮崎県15,735円、和歌山県16,436円等、15県で2万円を割り込んでいます。 


(2)国家戦略特区での自家用車の活用拡大と白タク合法化に向けた攻撃

 2009年3月にサンフランシスコで設立されたウーバー社は、スマートフォンアプリを使った自動配車事業を展開し、世界中の都市に進出しました。日本でもウーバー社は2013年8月から東京都内でタクシー会社と提携し、スマートフォンアプリによるハイヤーの配車サービスを開始するとともに、2015年3月には福岡市で自家用車による運送サービスの実証実験を始めましたが、利用者に対し無償で輸送サービスを提供していたとしても、運転者に対して調査費と称して運送の対価が支払われていることから、国交省は道路運送法で禁止されている白タク行為に当たるとして中止を指導。ウーバー社も実証実験を終了しました。

 この福岡での中止を受け、楽天の三木谷氏はウーバー社のライバル会社であるリフト社に3億ドルという多額の出資を行うとともに取締役に就き、2015年5月には規制改革会議に対し新経済連盟(代表・三木谷)の名を借りて「シェアリングエコノミーの成長を促す法的環境整備」を要望し、民泊とライドシェアの推進を働きかけました。7月には国家戦略特区諮問会議ワーキンググループにおいても同様の提案を行い、9月には国家戦略諮問会議で竹中平蔵らが意見書を提出し、「過疎地域等におけるライドシェアの拡大」を提唱するとともに、9月に京都府京丹後市、10月には兵庫県養父市がライドシェアの拡大を要望しました。さらに、10月30日には新経済連盟が内閣官房長官、規制改革担当大臣、IT担当大臣、厚生労働大臣、国土交通大臣あてにライドシェア合法化に向けた具体的提案を行いました。


<新経済連盟の提案の柱>
・ライドシェアを法律上位置づける=合法化する(国交省への届出制)
・運送責任=運転者個人。ウーバー等は運送責任を負わない。
・運賃料金=料金表示義務・キャッシュレス
・安全確保=ドライバー年齢21~75歳、経歴1年、短時間認定講習(二種は不要)
 運転時間制限、事故報告と停止、車両10年未満を使用
・利用者保護=任意保険加入義務、事故・トラブルの責任追及は運転者個人

 その後、国家戦略特区諮問会議(議長・安倍晋三)が「過疎地域等でのライドシェアの拡大」を盛り込んだ国家戦略特区法の一部改正法案を提出し、2016年5月27日に「国家戦略特別区域自家用有償観光旅客等運送事業」を新設し、「自家用車の活用拡大」とする形で法案が成立するに至っています。附帯決議において「いわゆるライドシェアの導入は認めない」とし、これまでの自家用有償運送と同様に、運送事業の登録制、運送主体が非営利団体か自治体に限定することとなりました。しかし、特区内に限られるとは言え、輸送対象が地域住民やビジネスマン、訪日外国人等に拡大され、実施手続きの面でも運営協議会での地域事業者の合意を不要とし、特区大臣・自治体・実施予定者による特区特別会議で計画を策定するとしており、大幅に規制緩和されることは認められません。この改正法は公布日から3カ月以内に施行されることになりますが、自治体に対して公共交通を主体とした「地域公共交通網形成計画」の策定を促すとともに、白タク導入による危険性を強く訴え、特区申請をさせない働きかけが今後とも重要です。 実際、京都府の京丹後市では5月26日、ウーバー社と連携し、NPOによる自家用有償運送がスタートしました。また、兵庫県の養父市でも特区申請がなされています。一方、特区申請していた秋田県仙北市はライドシェアについて取り下げました。

 過疎地域の問題点はいくつもありますが、とりわけ問題となるのが買い物や通院、役所など日々の生活に必要な移動の問題です。路線バスなど地域公共交通機関の衰退が進む中、移動を支える手段は喫緊の課題となっています。

 そうした状況の中でウーバーなどの「自家用車ライドシェア」が日本市場にも触手を伸ばしてきています。当初は政府に対して道路運送法を一部変更し合法とした上で全国展開を狙っていましたが、タクシー労使、国交省などからの猛反対を受けたため、当面は国家戦略特区内で、そして、現行制度の自家用有償運送の形を変えてという意向で、道路運送法78条にある「特例」部分を一部変更した上で実施することとなっています。

 ただ、安倍政権が続く限りは次期国会で再び道路運送法改定による白タク合法化が取り沙汰されることに間違いはないことから、今後も引き続き国民に対して白タクの危険性を訴え続けていく必要があります。

 ウーバーなどを導入した国や地域では、日本のタクシーのような厳密な運行管理や教育がなされているところが殆ど無く、サービス水準が決して高いとはいえない地域でライドシェアがもてはやされてきた経緯があります。しかし、そうした国や地域ではウーバーなどのシステムによる負の面で大きな問題になっている事実があります。事故の補償問題、暴力事件、強姦事件、運送対価のトラブルなど運転手と利用者間の問題と、ウーバーに登録している運転手がウーバー社に対して雇用関係の有無や地位確認などで複数の国で集団訴訟を起こしている事実です。また、今まで認めていた国などでも、問題が多いことから法律で禁止しだした地域や、国全体でウーバー排除に向けた取り組みが進んでいるところもあります。

 日本のタクシーのように、厳しい法律などで規制されている国においては、わざわざ危険な移動手段を導入する必要性はなく、安倍政権の下で利益のみに群がる危険な動きに対しては徹底した闘いが必要です。




(3)改正法の実効性低下と適正化の遅延

 2014年1月27日に改正法が施行され、準特定地域指定基準の通達が出されました。旧タクシー特措法で特定地域に指定されていた全国の地域は、そのまま改正タクシー特措法では準特定地域指定地域として移行しましたが、指定基準ではそれまでの地域が網羅されるような基準に置き換えただけのものでした。ここでの供給過剰の対策についてはあくまでも事業者による自主減車頼みで、新潟の公取委問題の再燃を恐れる事業者は地域協議会で供給過剰対策の具体的な議論も出来ないまま、単に活性化の話へと議論をすり替えざるを得ない状況が続いています。また、そうした状況に加え、旧法時に自主減車を行った事業者とそうでない事業者との不公平感もあり、年間で1度も協議会を開催しない地域もあります。また、準特定地域の中で指定基準を満たさなくなったからと指定を外された地域もあります。外れた理由は、僅か1%に満たない増収が数字に現れたということが表面的な理由でした。そうした中、国交省が2014年夏頃には改正法で新設された特定地域の指定候補地を公示する予定でしたが、政府の規制改革会議より恣意的な意見介入があり、対象候補地を少なく絞らざるを得ないような特定地域指定基準となったことは周知の通りです。その結果2015年1月に通達が出され、29地域が特定地域指定候補地となりましたが、そのうち10地域が事業者団体の反対で指定とはならず、指定地域は19地域にとどまりました。今年に入り新たに13地域が特定地域指定候補地(前回と同所含む)となりましたが、8地域が同意、5地域が事業者による不同意となっています。

 準特定地域ではこれまで通り事業者の自主的な減車に頼らざるを得ませんが、特定地域では新規参入と増車を禁止した上で、特定地域協議会で地域計画(3分の2以上の同意)を作成し、事業者による事業計画において減・休車や営業方法の制限を含む強制的な供給量削減の対策をとることとなっています。独禁法の適用からも除外され、実施命令もある制度であり適正需給の確立が期待されるところです。しかし、国はその運用を恣意的にコントロールし、2020年の東京オリンピックでのインバウンドに対応するため、東京などを中心として安く、多く、供給させたいという思惑で、改正法の趣旨とは反対の施策を取ってきています。また、事業者においても、全体の輸送人員は減少している中で供給量の削減自体の総論は賛成しながらも、個別事業者間においては自社の減車や預り減車には賛同しないという考えから、特定地域は27地域しか指定とはなっていない現実があります。こうした要因から、特定地域に指定された地域の協議会において、地域計画や事業計画を具体的に作成・実行して行く動きが滞り、改正法の実効性が大きく低下しています。改正法の柱である台数の適正化が遅延しているのが現状です。



 タクシー特措法や改正法は、供給量の削減を主として、需給バランスを保つことによってタクシーで働く労働者の労働条件の改善を目的とした法律です。大部分の地域で年収200万円台まで低下しているタクシー運転者の賃金・労働条件を向上させていくには、特定地域指定基準を抜本的に見直し、最低限の生活に必要な賃金に、多少なりとも文化的な生活ができる賃金を加えた賃金水準を基準にしながら、それに基づく地域ごとの需給バランスを加味したものを指定基準とすることが、改正法の趣旨に最も適う現実的な施策です。労働条件が悪化している地域が特定地域の指定から排除されている現実を改めなければなりません。

 2015年10月19日、青森地連の仲間8名が原告となり、国に対して特定地域指定基準にある「人口30万人以上」という部分の見直しを求める訴訟を起こしました。訴訟提起時の青森交通圏における適正車両数との乖離率は23%を超え、全国でも有数の供給過剰地域で、東北6県の中では乖離率が一番高い交通圏です。青森市の人口は29万6千人となっており、指定基準にある30万人という線引が、改正法の特定地域設定における趣旨に合致するのかどうかを争う訴訟となっています。全国を見ても人口30万人に届かない地域は多く存在し、そうした地域は特定地域指定候補にも上げられていません。これまでの口頭弁論で国側は、線引は必然で流し地域の基準とも見なされている、と強弁してきていますが、タクシー業界の流し地域や非流し地域はあくまで都市規模の違いであり、無線や駅待ちなどの営業形態が主となる非流し地域においても、供給量が削減されず需要が減少していけば、タクシー労働者の賃金・労働条件は下落していきます。地域における公共交通であるタクシーを維持・継続し住民の足を守るためには、青森で闘っている訴訟の争点である「指定させないための指定基準は違法」ということを国側は認め、本来の改正法の趣旨を忠実に履行していくべきです。

 準特定地域ならびに特定地域の指定基準は、いわば骨抜きの法律となっており、実効性あるものにするため、全国の仲間の声を代表するこの裁判を通じ、国に指定基準の見直しを迫っていかなければなりません。また、減車や営業車両の制限のあり方、特定地域協議会での運輸局の積極的関与など抜本的な見直しに迫られていることから、早急な対策が必要です。


2.公共交通労働者にふさわしい労働条件の再構築(労働条件課題)

(1)タクシー労働者の賃金水準

 2015年度のハイタク運転者の年収は、厚労省調査からの推計で309.8万円となり、2年連続で300万円を超え、前年より約7.5万円改善しましたが、全産業男性労働者は11.6万円改善して547.7万円となったため、その差は約238万円に拡大しました。前年4県あった年収200万円未満の地域は久々にゼロとなりましたが、徳島が200万、青森・秋田・佐賀・宮崎は依然210万円台と低いままです。250万円未満の地域は14道県で前年より5県減少しましたが、こうした地域では生活保護にも満たず、地域の法定最低賃金にも抵触する事態が浮き彫りになっています。

 また、年間賞与が全国平均22.6万円で前年より約7万円改善している一方で、月間給与が23.93万円で前年より500円程度しか改善されておらず、経営者が賃上げを極力渋り、一時金で配分する傾向が一層明白になっています。

 こうした、タクシー労働者の低い年収水準が長期化していることによって、若年者から敬遠される傾向が強まるとともに高齢化に歯止めがかからず、平均年齢が59歳まで上昇しました。

 日本の労働力人口の減少が進む中、あらゆる業種が新入社員の獲得のために初任給を引き上げる動きが拡大していることを考えれば、タクシー産業においても思い切った大幅な労働条件改善に踏み出さなければ、乗務員確保がままならず事業継続をあきらめる事業者が増加することが懸念されます。タクシー産業が地域交通を支え、生活に欠かせない「ドア・ツー・ドア」の公共交通機関としての役割を担い、安全で良質なサービスを提供し、福祉輸送や観光輸送も積極的に展開して生き残っていくためには、家族を養える賃金水準を早急に確立しなければなりません。

(2)改正法成立時の国会附帯決議の完全履行

改正法成立時の附帯決議にもあるように、ハイタク労働者の賃金制度について具体的な改善措置を求めて実現していく取り組みを強化します。

 附帯決議の完全履行を求め、①累進歩合の排除、②固定給と歩合給のバランスの取れた賃金体系の再構築、③運転者負担の見直し、④過度な遠距離割引の是正、⑤運転代行との兼務禁止、⑥過労の防止対策などで賃金制度の改善が急務であることを経営者に強く訴えて、全てのタクシー運転者が労働条件の改善を実感できる状況をつくり、若年者や女性にも魅力ある労働条件として社会的に認識されるよう全力をあげます。公共交通を現場で担う労働者として、誇りが持て魅力ある労働条件の整備が最重要の課題です。改正特措法の実効ある運用で供給過剰を是正させ、それが運転者の労働条件改善に直結するよう闘います。

 また、不当な運転者負担や賃金カットを行う悪質事業者に対する厳格な監査と処分を要請していきます。

(3)適正な賃金計算と法違反の一掃

 最低賃金が引き上げられるにつれて、全タク連は中央最低賃金審議会に対して、引き上げの慎重審議を求める要望書を提出し、改定額の抑制を毎年求めています。これに対して全自交労連は、最低賃金の大幅な引き上げを求める要請書を提出し反論していますが、低下した乗務員の労働条件改善を目的に改正法が施行される中にあって、大幅減車を即時実行することで稼働効率を高め、一人当たりの営収を向上させながら賃金改善につなげる責務はまずもって経営者にこそあります。また、国交省には環境が悪化した全ての地域を特定地域に指定して強力な対策をとり、労働条件改善を図っていく義務があります。
近年、経営側の最賃違反逃れの策動が露骨になっています。客待ちや待機時間を不就労とする違法な労働時間カウントや実際には休んでいない長時間(3時間を超える時間)に及ぶ休憩時間の設定などで最低賃金の支払いを逃れようとすることを許してはなりません。また、安易に労働時間削減で乗り切ろうとする経営姿勢は断じて容認することはできません。
2013年のタクシー職場における労働基準関係法令の違反事業者数は、監督実施事業者数の88.7%を占め、その内訳は労働時間が52.4%、割増賃金が31.7%、休日が5.4%となっています。また、改善基準告示違反事業者数も42.4%を占め、内訳は最大拘束時間32.9%、総拘束時間25.4%、休息期間10.1%です。こうした違反事業者数の割合は依然として高率で推移し、改善の兆しすら見えない状況です。法律無視が常態化している現状に怒りをもって対処し、悪質事業者の監視・摘発を強化します。


3.白タク合法化を阻止し、タクシー適正化・活性化の推進(政策課題)

(1)タクシーの産業基盤を奪う白タク合法化を阻止

 白タク・ライドシェア合法化の攻撃は、国家戦略特区で風穴を開け、その既成事実を積み重ねながら、最終的には収益が見込まれる都市部で事業展開することこそ目的です。ウーバー社等のライドシェアが日本全国に普及すれば、タクシーの産業基盤が奪われるにとどまらず、路線バスや鉄道を含めた地域公共交通の存立を脅かすこととなっていくのは明白です。白タク合法化の大きな問題は、①二種免許や運行管理も不要とされ、利用者の安全・安心が脅かされること②地域公共交通を弱体化し、既存のタクシー事業を崩壊させる③公共交通ではないことから、需給状況によっては運賃が変動する④24時間稼働の保証がなく、夜間の利用で特に女性・高齢者は利用しづらい⑤事業主体(プラットフォーム)は一切運送に関する責任は持たず当事者間での解決となる、など多岐に及びます。

 世界一のサービスと安心・安全を標榜する日本のタクシーは、道路運送法をはじめとした種々の省令・通達・改善基準などで厳格に規制され、運行されています。また、車内忘れ物の返還率は他の国のタクシーを圧倒しており、乗車拒否事案においても厳しい管理がされており、安心を利用者に提供してきています。警察の犯罪捜査や事故状況などにおいても、全国的に普及が著しい車内外のドライブレコーダーや無線等で協力しています。運賃も世界各国から見ても決して高くはなく、接遇教育や運行管理、車両維持に関するコストから見ればむしろ低すぎる傾向にあります。

 過去にあった負の部分の反省も含めて培われてきた日本のタクシーの現状を見れば、ライドシェアという名の白タク合法化は全く意味を持たず、導入の必要性はありません。

 他方、国は今こそ改正特措法の各指定基準を早急に見直し、有効なタクシー政策に本腰を入れ、地域公共交通であるタクシーの再生を支援していくべきです。


(2)特定地域指定を拡大し適正需給確立

 改正法での特定地域が国の不作為による指定基準によって広がりをみせていません。
 また、昨年から特定地域に同意した地域においても、地域計画自体が白紙に近い状態で本来期待した実効性が出ていないのが現状です。

 理由の一つは、特定地域の指定基準にあります。全6項目のすべてに合致していることを条件として示していますが、これでは全国の厳しい状況改善の糸口にもなりません。

 指定基準素案として国交省は当初4項目の基準を提示しており、そのままの基準を当てはめれば全国で約6割の地域が特定地域対象地域となることから、その後規制改革会議より、1.営業の自由(憲法22条1項)との関係、2.特定地域指定基準の問題点、という「改正タクシー特措法の特定地域に係る指定基準に関する意見」という意見書(全自交青森訴訟にも提出)を国交省に出してきました。全体として「車両数の半分を有意に下回ること」など、大幅に指定地域が減少する恣意的な現在の基準となりました。

 規制改革会議のいう「範囲を限定的にすること」という意見は、政府の推し進める規制緩和政策に逆行しないように最小限で指定するという現れでもあり、タクシー現場で働く私たちにとっては許しがたいことです。改正法でタクシー台数を法律により需給調整をし、運転者の賃金・労働条件の向上を図る当初の段階から法律を骨抜きにするような意見を、タクシーの実情を一切理解していない民間議員たちが権限を使い、政策を歪めてきたことに対して今後も闘い続けなければなりません。

 2009年にタクシー特措法が成立した後4年でその改正法が大多数の賛成で成立しました。この間、旧法では減車や運賃問題の限界が露呈したことから、私たちが中心となって運動した結果、現在の特定地域や公定幅運賃制度などを加えて改正法が施行されてきた経緯があります。タクシー運転者が生活できる賃金を目指すためには、強制力のある強い法律の適用が不可避であり、そのためには当初案の通り約6割以上の地域が該当する基準でなければ改正法自体の意味がないといっても過言ではありません。

 毎年1月に特定地域の指定候補地は見直されますが、指定基準を実効性あるものに見直さなければ地域の拡大は望めません。青森裁判で闘っていることと並行して、今まで以上に国に対して指定基準を早急に是正させ、地域ごとの適性需給に近づけることが重要です。


(3)初乗り距離短縮運賃の拡大阻止と適正運賃の確立

 国土交通省は、2005年10月23日に開かれた、「第1回運賃制度に関するワーキンググループ」において、需要を拡大する運賃設定として「初乗り距離短縮運賃」の導入に向けた実証実験も含めた具体的方法を協議し、東京ハイヤー・タクシー協会が具体的に東京特別区・武三地区交通圏で初乗り距離短縮運賃として500円(1,264m)・加算80円(246m)をたたき台として、来年度の実施を目指すとしていました。4月5日以降、初乗り運賃を410円(1,059m)・加算80円(237m)に組み替える公定幅運賃の変更申請書が提出されたことを皮切りに、6月21日現在、249社・22,493台・法人タクシーの台数ベースで81.34%となり、関東運輸局の審査手続き開始に必要な70%を超えました。

 これに対し、全自交東京地連として、適正化が進まない中、事業者が、労働者の意見を聞くこともなく、運収低下を招く初乗り短縮運賃の導入に動くことに反対の声明を出し、東京ハイヤー・タクシー協会に抗議をしました。国際比較においても東京のタクシー運賃は決して高くなく、国際的に良質なタクシーサービスとして評価されています。初乗り距離短縮運賃導入により運収が低下した場合、結局のところ運転者にしわ寄せされ、労働条件改善に繋がりません。仮に二重運賃状態を招けば乗り場問題など混乱が懸念されます。

 また、東京での初乗り距離短縮運賃導入は、全国的影響が大きく、各地域で同様の動きが拡大しています。改正タクシー特措法の主旨は、適正化と活性化の施策で、タクシー労働者の賃金・労働条件の改善を実現することであり、施行後の改善は全く進んでいません。安易な初乗り距離短縮運賃導入は、全自交として、今後も反対の立場で運動を展開します。

 改正法の施行により公定幅運賃制度が導入されたにもかかわらず、下限割れ運賃に固執している悪質事業者が次々と運賃変更命令の差し止め訴訟を起こし勝利する事態となっています。また、過度な遠距離割引の是正も滞ったままです。労働条件が悪化している多くの地域を速やかに特定地域に指定させ、適正需給を確立するとともに、しっかりとした労働条件が確保できる地域統一の適正運賃を全ての地域で確立することで、労働条件改善が実感できるよう政策闘争を強化します。



4.組織の維持と拡大・強化に向けた取り組み(組織課題)

 タクシー労働者の置かれている厳しい労働環境が一向に改善されない状況から、職場での不条理な扱いに対する労働相談や労働組合結成相談が増加しています。すべての地連・地本において、積極的に職場と地域で労働者基本権や労働組合の存在意義を啓発するとともに、組織された労働者と未組織の労働者の権利格差・賃金格差を示しながら労働組合の結成や全自交への加盟を訴え、積極的に行動します。

 白タク・ライドシェア問題も多くのタクシー労働者は内容も知らされておらず、情報から遮断されている現状にあります。白タクの拡大に対する危機感も全自交の仲間とは大きく温度差があり、多くの地域で全自交が進めてきたタクシー政策を広く訴えることが今こそ必要です。

 職場での労働条件改善やタクシー政策の推進、平和と暮らしを守る政治課題にとって全自交の組織拡大は最重要の課題となっています。全自交加盟組合のある職場では、全ての単組が過半数を維持し、強い交渉力を確立しながら積極的に団体交渉を積み上げ、労働条件改善に奮闘していきましょう。近年、ユニオンショップ協定やエイジェンシーショップ協定は各地で拡大しており、嘱託社員を含めて職場のすべての労働者を対象に組合加入を働きかけるとともに、経営者に対してショップ制を要求して実現していくことも重要な取り組みとなっています。職場の労働条件については真摯に団体交渉を行い労働条件を決定し、タクシー政策の実現のためには一致する課題で労使が協力して交通政策を推進していくあり方を追求していくことが求められます。職場での組織率向上、経営者との交渉力の強化、政策闘争の推進を目指して奮闘しましょう。

 組合役員の学習活動を強化し、職場や地域から不当労働行為、労基法違反、「改善基準」違反を一掃するために素早く、適切に行動し、不正・不当な行為がまかり通る状況を許さず行動していきます。

 地方においては、タクシー事業の困難から、賃金遅配や倒産・事業廃止が頻発しています。この間、直面した大きな困難を職場の団結した力で乗り越え、全自交の旗を守り抜き組織を拡大する闘いも進めてきています。困難な時ほど労働組合の底力を発揮し、単組、地連・地本、本部の連携と地域の支援を結び付け、全力で活路を開く闘い方をより一層習熟していくことも重要な課題です。

 また、ハイタク産業の産別組織として、タクシー政策に大きな影響を与えてきた全自交運動に自信と確信を持ち、全ての運動の成果を組織拡大につなげて行く取り組みを強化していかなければなりません。規制緩和と真正面から対決し、これを転換させるためには組織力・財政力の強化が必要不可欠です。組合員・役員の高齢化が進んでいますが全国各地の全自交運動を継承しつつ新たな取り組みに挑戦していくことが真に求められる状況にあり、より多くの組合員・役員が活動に積極的に参加し、学習と経験を共有しながら、次世代の活動家を育成していくことに全力を上げます。




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