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牙をむくハイエナ達

ライドシェア解禁派の暴走が止まりません。首相の諮問機関である規制改革推進会議で11月13日に開かれた作業部会では、ソフトバンクグループのLINEヤフー株式会社の川邊健太郎会長ら7人の委員から「来年を目途に、ライドシェア事業を新たに位置づける法律の制定を検討すべき」とする意見書が提出されました。さらに、11月15日には自民党の小泉進次郎衆議院議員を中心に超党派議員の勉強会が立ち上がり、ライドシェア新法に向けた検討を行うとしています。
推進派は当初は「日本版ライドシェア」といった造語を使い「タクシー事業者がライドシェアを運行管理して、タクシーの少ない地域と時間に限定して走らせる」と主張していましたが、ここにきて本当の狙いを隠さないようになり、「ライドシェア新法」を求めてきたのです。その目指すところは、アメリカで行われているような本格的なライドシェアであり、ドライバーからのピンハネでUberのようなプラットフォーム企業が儲けるための仕組みにほかなりません。
アメリカのUber本社のダラ・コスロシャヒ最高経営責任者は11月15日に「日本はとても大きな市場だ。ライドシェアが認められれば参入する」と発言しました。
Uberの日本法人は以前「日本では違法なライドシェアは行いません」と広告まで出していましたが、急速に方針を転換。規制改革会議の中で「ライドシェアは安心・安全」と説明し、解禁を実現しようとしています。
しかし、Uberの説明資料には多くのウソが含まれることが判明。利用者への調査で"安全性"に関し、ハイヤーが41%、タクシーが31%に対し、ライドシェアが12%しか評価されなかった結果など都合の悪い箇所をこっそり削除して都合の良い数字だけを並べるなどの印象操作が行われていたのです。
このように、解禁派はありとあらゆる手段で攻勢を強めており、残念ながら、ライドシェア勉強会には立憲民主党や国民民主党の数人の議員も参加する見通しです。
しかし、多くの立憲議員はライドシェア阻止に向け、国会で質問を重ねています。日本の公共交通と利用者の安全、われわれの生活を守るため、一般の方々や、議員にライドシェアの課題を理解してもらう活動が極めて重要となっています。状況は全く予断を許しません。


阻止に向け立憲議員が奮闘


秋の臨時国会では、ライドシェアをめぐる論戦が白熱しています。
日本維新の会や、自民党の一部議員が、解禁に向けた論陣を張る一方、立憲民主党や共産党の国会議員は、あらゆる角度からライドシェアの問題点を鋭く指摘し、「まずはバスとタクシーの乗務員不足への対策を」と求めており、公明党や自民党議員からも慎重な意見が出ています。
斉藤鉄夫国土交通大臣は、「運行管理や車両整備に責任を負う主体を置かないままに、自家用車のドライバーのみが運送責任を負う形態」の"いわゆるライドシェア"については「特区でも認める考えはない」との答弁を維持しています。ただ、岸田文雄首相がライドシェア検討を指示したため「地域の自家用車、ドライバーの活用の検討」という表現を使い「地域の実情」を踏まえて判断すると答弁。自家用有償旅客運送制度のさらなる緩和が進む可能性を示唆しています。
立憲民主党では、まず10月25日の参議院本会議で代表質問に立った田名部匡代議員が「安全性や乗務員の労働条件に影響が出る可能性。死活問題になりかねない」と岸田総理をただし、10月30日の衆議院予算委員会では逢坂誠二議員が安全と運転者の質の確保こそ重要と指摘。11月9日の参議院国土交通委員会では森屋隆議員がバス・タクシー乗務員の迅速な賃上げを求め、小沼巧議員が「ライドシェア」について定義すら定まっていない実態やワーキングプア化の問題を丁寧に鋭く指摘。統計的データもないまま、感情論で議論が進むことを強く戒めました。11月10日の衆議院国土交通委員会では、小宮山泰子衆議院議員が「人の命に関わる」と慎重な判断を求めました。車いすを後ろから乗せる車両のUDタクシー認定も要求しました。城井崇議員は国交省の方針を一つづ確認し「まずはタクシーの規制緩和で対応を」と求めています。


科学的議論が不足

「タクシーが足りないから、ライドシェアしかない」。これがライドシェア解禁派の主張です。たしかに沖縄の離島等インバウンドの多い
観光地や、深刻な過疎化が進む地域では待ったなしの問題が起きており、改善策は必要です。
しかし一部の状況をもって、全国的に制度を変える議論は乱暴に過ぎます。立憲民主党の小沼巧参議院議員が国会で「乗務員が不足してい
ることのエビデンス(証拠)は」と質問したところ、国交省の答弁は「全国的にどの地域でどの程度ドライバーが不足しているかを特定する
ことは困難」というものでした。
下のグラフ、実は去年4月から今年3月までの1年間の実車率(タクシーの走行距離の内、実車で走った割合を示す数値)はコロナ前と同
じ程度でした。コロナの期間中は、すぐにタクシーに乗れる状態でしたから、ギャップの大きさが「タクシーに乗れない」という印象論につ
ながっている側面もあるのではないでしょうか。必要なのはデータに基づく冷静な議論です。



政府も性犯罪多発や海外での規制強化を認める

世界各国の犯罪事案と各国の規制

辻元清美議員の質問( 要旨)

◆危険性
アメリカでUber社自身が発表した安全性報告書には、Uber利用に関連した性犯罪が2017年に2936件(レイプ229件)、18年3045件(レイプ235件)、19年2826件(レイプ247件)、20年998件(レイプ141件)《20年はコロナ禍で利用半減》が生じたと記載されている。身体的暴行の結果、死に至った被害者が2017年10人、18年9人、19年9人、20年11人というデータも記載されている。
具体的には「英国:16歳の日本人留学生への性犯罪で、Uber運転手に実刑判決が下った。2017年7月30日、ヒースロー空港から学校が予約した車に乗るはずだったこの学生を騙して乗せ、キスを強要。その後もしつこくスマホに連絡を入れ、逮捕された」「米国・サンディエゴ:34件のレイプや婦女暴行を認めた元Uber運転手の男性に80年4カ月の禁固刑。高校から帰宅する女子生徒などを乗車中に酒や大麻で意識を失わせ、犯行に及んでいた。(2017年11月)」など非常に多くの報道がある。
ライドシェアを装った偽ドライバーによる犯罪も多発しており、複数の日本国総領事館が注意喚起を行っている。
タクシー政策議連の総会でライドシェアの
危険性を報告した辻元清美会長
(立憲民主党参議院議員)
◆禁止や規制強化
海外ではライドシェアを禁止する動きが相次いできた。
○EUの最高裁にあたる欧州司法裁判所は2017年12月、「Uberは運輸業」と判決。「配車アプリを介して運転手と乗客をつなぐデジタルサービス」というUberの主張を退けた。Uberは、欧州でライドシェアの「ウーバーポップ」を断念。他社も含めて現在、ハイヤー配車サービスに専念している。なお欧州でEUに加盟していないイギリス等の国でもライドシェアは禁止されている。
○韓国は2019年の法改正で厳格にライドシェア禁止。
○トルコでは、税務登録をせずにライドシェアを広めたUberに対し、タクシーの運転手協会などが違法事業の停止を求め提訴。2023年6月の最高裁判決で、ライドシェアの違法性が確定した。
○台湾では法改正によりライドシェアを禁止するとともに、配車アプリ専用の「多元化タクシー」を法制化している。

政府回答の要旨
【質問】
世界各国でライドシェアの利用に関連して発生した、暴行・傷害・殺人・強盗などの犯罪行為について
【回答】
政府として現時点で把握している限りでは、「2020年における交通事故死者数は、日本のタクシーで16人、米国の主要ライドシェア企業では42人、身体的暴行による死者数は、日本のタクシーにおいてはゼロ、それに対し、米国の主要ライドシェア企業では11名、性的暴行件数は、日本のタクシーでは19件、米国ライドシェア企業では998件」と国会で答弁したとおりである。

【質問】
現地の日本国機関が邦人に、「ライドシェアに関する注意喚起」を行っている事例があるか。
【回答】
例えば、在ボストン日本国総領事館が作成する「安全の手引き」に記載があり▽車に乗る前に必ず車種、塗色、ナンバープレートが合致するか確認する▽友人や知人に目的地や到着時間を共有しておく▽頼んでいない車や、事前に受けた情報と合致しない車には絶対に乗り込まない、などの内容。

【質問】
OECD加盟国(いわゆる先進国)でライドシェアを禁止していない国と、その割合を明らかにされたい。(※ITFの調査では8割が禁止)
【回答】
米国において一部の地域で禁止されていない。

【質問】
政府は、ライドシェアを「安全の確保、利用者の保護等の観点から問題がある」、「特区でも認めることは考えていない」としてきた。変わりはないか
【回答】
現時点でも答弁した通りだ(変わっていない)。


タクシー政策議連の総会で公共交通の
重要性を強調する森屋隆事務局長
(立憲民主党参議院議員)
地域公共交通にもたらす影響

森屋隆議員の質問( 要旨)

◆公共交通への影響
いわゆる「ライドシェア」は、利用者の安全を損なうことに加え、公共交通事業者と労働者に及ぼす影響が極めて大きい。世界の各都市ではタクシーの数倍のライドシェア車両が登録され=表、深刻な過当競争がタクシードライバーの生活を圧迫している。
需要を奪う対象はタクシーだけではない。ライドシェアの影響でバス利用が6%、通勤電車利用が3%減少したという、カリフォルニア大学の研究がある。2019年の、米シカゴ市の報告書では、15年から18年にかけてライドシェアの実車走行距離が344%増加し、公共交通機関の利用が48%減少して交通渋滞が悪化し、温室効果ガスの排出量が増加したと報告されている。

◆過疎地では機能しない
都市部で公共交通を衰退させ渋滞を増やす一方で、利用者の少ない過疎地ではまともに機能しない。ライドシェア2社の全米の利用回数の約70%が、わずか9つの大都市圏で占められている。アメリカでライドシェアを利用する人の割合は都市部で45%、都市郊外で40%に達する一方、農村部では15%しかなく、さらに毎週利用する人は5%しかいないという調査も存在する。市場の原理にゆだねるだけのライドシェアには、需要の少ない場所で供給を維持する必然性も義務もなく、過疎地では機能していない。
また車いす利用者や盲導犬を伴う視覚障がい者等の移動困難者にとっても、ライドシェアは弊害が大きい。米国では、乗車拒否や、追加料金などの差別的取り扱いに対し、米国司法省や全米視覚障がい者連合会がUberを訴えている。 またカリフォルニア州ではライドシェア車両に対する商用自動車保険料が自家用車の30倍、タクシーの10倍と高額になっており、事故のリスクの高さを裏付けている。

政府回答の要旨
【質問】
運賃改定をした地域のタクシー運転者の増減状況を明らかにされたい。
【回答】
運転者証交付件数は、「東京特別区・武三地区」で2022年10月31 日から23年9月30日までで759件増加、「名古屋地区」では22年11月30日から23年9月30日までの間で679件増加している。全国では、23年3月31日から9月30日までに1185件増加している。

【質問】
政府はアプリで配車を行う事業者を管理・監督する権限を有しているか。乗務記録等のデータに関し、政府はどのような管理を検討しているか。
【回答】
旅行業法に基づき、観光庁長官は、旅行業の登録を受けた者の業務の運営に関し、取引の公正、旅行の安全又は旅行者の利便を害する事実があると認めるときは、当該旅行業者に対し、業務の運営の改善に必要な措置をとること等を命ずることができる。「乗務記録等のデータ」を政府が収集等することについては検討していない。

【質問】
ライドシェアを検討する前に2023年4月に成立した改正地域公共交通法に明記された取り組みを前進させることが最優先ではないか。
【回答】
政府としては、御指摘の「同改正法に明記された取り組みを前進させる」ことが重要と考えており、斉藤国土交通大臣が「社会資本整備総合交付金を地域公共交通のリデザインに活用することを可能としました。あらゆる政策ツールを活用して地域の取組をしっかりと支えたい」と答弁したとおりである。



政府の規制改革推進会議の地域産業活性化ワーキンググループ(以下WGと記載)において「ライドシェア」の導入に向けた議論が行われています。しかし、「国民の移動の自由」を現場で支え続けてきた私たち労働者の声は議論に反映されておりません。この声明をもって私たちの意見を表明します。
ライドシェアの導入は職業運転者の低所得化を加速させ、かえって公共交通の担い手不足を深刻化させることから、政府にライドシェアの検討中止を求めます。
国は、公共交通従事者として第二種運転免許を保有し、地域住民の移動の権利を守ってきたバス・タクシー乗務員の待遇改善こそ政策の最優先課題と位置づけ、バス・タクシーの効率化や最適化によって地域の移動を確保することを前提とすべきであり、それでもカバーできない地域においては現在の自家用有償旅客運送制度の適用で対処すべきです。
日本のハイヤー・タクシー産業は、世界でも例外的に、企業に正社員として雇用された乗務員が主力を担っており、雇用関係を前提として、運行管理や安全・接客に関する教育が実施されています。同時に、乗務員は、最低賃金や割増賃金の適用、雇用保険や厚生年金への加入、労働時間の制限の適用といった労働関係法令の適用を受けることができ、何よりも労働者の権利を行使し、団結して労働組合を結成し、企業との団体交渉を通じて賃金・労働条件の改善を実現することができます。
一方、ライドシェアは、プラットフォーマーと契約を結んだ形式的な個人事業主(ギグワーカー)として働くことが前提となったシステムであり、権利保護が不十分なため、世界的に就労者のワーキングプア化が問題となっていることは周知の事実です。
私たちは、ライドシェアの導入により、過当競争が生じバス・タクシー乗務員の賃金・労働条件が悪化すること、そして職業運転者の就労形態が正規雇用からギグワーカーへと転換されていくことを強く懸念しています。
不安定な収入と待遇の下で長期的な人生設計が困難なギグワーカーが、正規雇用を置き換えていくことになれば、所得の減少による購買力の低下、税収・社会保険料収入の悪化、少子化のさらなる加速といった社会全体への悪影響をもたらすことも真剣に議論されるべきです。
(中略)
持続可能な交通手段を設計する上で、参入要件を緩和し供給量を増やす行為は、短期的には住民の移動手段の確保に寄与するように見えます。しかし、現場の運転者の賃金や労働条件が悪化することで長期的には供給の安定を損なう結果を導き、最悪の場合、一切の交通手段がなくなる事態すら起きかねません。少子高齢化により労働力人口がさらに減少していく日本においては、なおのこと、就労者の低所得化は絶対に避ける必要があるのではないでしょうか。
タクシー乗務員は多くが歩合制賃金で働いているため、営業収入の多寡により賃金が大幅に増減します。ライドシェアが街にあふれれば、必然的にタクシー車両1台当たりの営業収入は低下し、乗務員の賃金を減少させることになります。
そもそも現在の「タクシー乗務員不足」とされる状況は、営業台数と運賃を自由化するタクシー規制緩和の影響によって過当競争が生じ、タクシー乗務員が低賃金・長時間労働の負のスパイラルに落ち込んだことが原因であり、直近においてはコロナ禍において営業収入が激減したことで、最低賃金水準にまで賃金が落ち込んだことが大きな要因となっています。
ただ、ようやくコロナ禍を脱した効果や全国的な運賃値上げの効果によって、営業収入と賃金は急激に改善してきました。その結果として今年3月末から9月末までの間に、全国のタクシー乗務員数は1185人増加しています。
十年以上にわたり、減少する一方であったタクシー乗務員数が増加に転じたことは、重要な転換点であり、今こそ、さらなる賃金・労働条件の改善を推し進めて、担い手不足の解消を果たすべき好機といえます。同時に若年層や女性のニーズに合致した職場環境や短時間勤務シフトの導入を各企業が進めなくてはなりません。また賃金が営業環境によって大きく左右される歩合制賃金を見直し、固定給を主体とした賃金体系を実現していくことが重要となります。
しかし、ここでライドシェアの解禁が認められることとれば、バス・タクシーと需要を取り合うこととなり、企業から賃上げの原資を奪って、乗務員の賃金・労働条件を再び悪化させることとなります。ライドシェアとの過当競争により、諸外国では多くのタクシードライバーが収入の悪化にさらされ、長時間労働を余儀なくされました。2018年には「週に100時間以上働かなければ生活ができない」とSNSに投稿した後、ニューヨーク市庁舎前で自らをショットガンで撃ち自死したドライバーもいます。私たちはそのような状況が日本で再現されることを座視するわけにはいかないのです。
また、ライドシェアのドライバーが、世界的にワーキングプア化している事実とその背景についても、十分に検証する必要があります。11月6日のWGで、UberJapan社の担当者は、「多くの国でプラットフォームとしての対応は進化してきており、運転手側の組合とプラットフォーム事業者が直接交渉をして、必要があれば最低賃金を交渉するなど様々な形で運転手の働き方を向上する取り組みが広がっております」と説明していますが、現実にはプラットフォーマーはドライバーの労働者性を認めることに極めて消極的であり、ドライバー側が訴訟を起こせば最後まで争い、その国や地域で法制化されるまで、労働者性を認めてこようとしませんでした。「進化」という言葉を選び、プラットフォーマー側が自主的に状況の改善に努めているような言動は極めて偽善的であると言わざるをえません。
それは、現にUberJapan社が食事配送員の労働組合「ウーバーイーツユニオン」との団体交渉を拒否し続けている事実一つを取ってみても明らかです。東京都労働委員会は2022年11月25日、同社に対し、団体交渉に応じるよう命令を発しましたが、同社はこれを不服として中央労働委員会に再審査を申し立て、現在も団体交渉は行われておりません。

正社員から偽装請負へ

国内でライドシェアを議論する際には、日本のハイヤー・タクシー産業が、世界的に極めてユニークな営業形態をとっていることを理解いただく必要があります。それは、原則として運転者が企業に雇用されている点です。諸外国のハイヤー・タクシーは個人営業を基本とし、「タクシー会社」が存在する場合も配車の管理・貸与等を行う主体にすぎません。一方、日本のハイヤー・タクシー産業は、企業が乗務員を正社員として雇用し、企業が安全管理や労務管理に責任を負う形式で発展を遂げてきました。個人タクシーの制度も法人タクシーで10年以上乗務した優良運転者に個人営業を認めるもので、法人企業による雇用が制度の土台となっています。
法人企業による雇用を前提とした我が国のハイヤー・タクシー制度は、諸外国のハイヤー・タクシーに比して、コスト高となる欠点をもつ一方で、安全な運行、接客技能の高度化と均一化、供給の安定性(1人1車の個人営業と違い、出庫・帰庫の時間を会社が管理し、交代勤務制を取ることで需要の少ない時間帯でも車両を供給できる)、タクシー専用車両の導入といった、日本のハイヤー・タクシーの強みを生んできました。日本では鉄道やバスと同様にタクシーが「公共交通」と位置づけられていますが、安全と供給に責任を負う主体が明確であるからこそ、「公共交通」と定義されうるのです。
一方、ライドシェアは、ドライバーが個人事業主として働くことを前提とした制度にほかなりません。
日本でライドシェアを導入するということは、職業運転者を「賃金や労働時間に関する法令が適用され、企業の指揮命令を受ける労働者」から、「労働者としての権利が認められない、偽装請負的な個人事業主」に転換させることを意味することは、改めて強調しなくてはなりません。
現在のライドシェア導入議論の中では「既存のバス・タクシー事業者がライドシェアドライバーの運行管理や車両管理を担う」というアイデアが一部で提起されていますが、運行管理とは、ドライバーの心身の状態を見極め、問題があれば乗務させない権限と責任を負う行為です。現在は雇用関係にあるからこそ、強制力をもった運行管理が可能となっていますが、雇用契約を結んでいないライドシェアドライバーに対し、強制力ある運行管理ができるとは思えません。健康診断の結果や、服用中の薬の種類等の個人情報を開示させることが可能なのでしょうか。まったく現場の視点を無視した空論が交わされています。
(中略)
最後に、河野太郎大臣はWGにおいて、「『国民の移動の自由』が制限されているということは、深刻な人権問題にもなりかねない」と語りました。私たちは、交通政策基本法(2013年成立)の立法を目指す運動の中で、「移動の自由を人権として保障すべきだ」と訴えてきた立場であり、全く同感であります。
では、その移動の自由を現場で担い続けてきた私たちの意見は、なぜ日本の公共交通政策を大転換する議論の中で、一顧だにされないのでしょうか。現場で働く者の声を無視した議論に価値があるのでしょうか。
私たちは今後も、エッセンシャルワーカーとしての使命と矜持を胸に、安全で親切な旅客輸送に努めていくことをお約束いたします。同時に、働く者の生活や将来への希望を無視した、ライドシェアの導入には強く反対を表明し、より持続可能で社会全体の発展につながる公共交通の実現に向けた議論を求めます。

2023年11月9日
全国自動車交通労働組合連合会
中央執行委員長 溝上泰央





愛知地連大会で来賓としてあいさつする本部の溝上泰央中央執行委員長(中央)。井上修・愛知地連委員長(正面に向かって溝上委員長の左側)は、今季より本部の副中央執行委員長としても活躍《10月2日》




富山地連では再選された石橋剛委員長(中央)が「運賃・料金改定で基本賃金増額!人件費率増額!人財確保でライドシェアを阻止するためにガンバロー」と団結を強化。奥村勝治氏が新副委員長に就任《11月11日》




東北地連の大会では、高橋学委員長(中央)ら全役員を再選。高橋委員長は「ライドシェア絶対阻止。労働条件回復」を強調。全自交唯一の組織内議員であり、今年6期目の当選を果たした山名文世八戸市議も駆け付け、本部の津田光太郎書記次長がライドシェア問題について講演しました《11月13日》


北海道地連は鈴木久雄委員長ら全役員を再選。鈴木委員長は運賃改定が進んだ結果、札幌では「月間営収100万円越えの運転者が各社に少数といえ出てきている。この営収を持続させるためには、私たちハンドルを握る運転者が、地域公共交通を担っている自覚と責任において、利用者の利便と安全・快適な輸送に心がけなければならない」とし、ライドシェア合法化阻止に向け「ハイタク産業労・使と世論の声を味方につける取り組みが喫緊の課題」と強く呼び掛けました《9月27日》


新潟地連では中川義昭委員長が勇退し、保坂治新委員長(高田合同自動車労組)を選出。
保坂氏(=写真)は「皆さんの協力を受けがんばりたい」とあいさつ《10月29日》


愛媛地本では宮岡主委員長らを再選。専従職員として長年勤務し、平和運動で主導的役割を果たしてきた渡邉典子書記次長が後進を育成後に退任することが決まりました《10月19日》




関西地連大会では櫻井邦広委員長ら四役を再選。櫻井委員長は「ライドシェアは、交通破壊を起こした昔の『神風タクシー』と同じ。
安全・安心のタクシーを守り抜く」と決意表明しました《10月29日》




青森地連では長年にわたり組織を支え続けてきた江良書記長(右端)が特別執行委員となり、佐々木彰氏(右から2人目)が新書記長に就任。
江良書記長が活動方針を提案し、「今までのタクシーの経営者の頭には引き算しかない。それを足し算に変え若い人を入れることが必要だ」と語りました《10月30日》


全国で取り組み進む

全国の地連・地本が、ライドシェア阻止に向け全力を挙げています。
石川ハイタク連合会は、12月11日に、独自に「ライドシェア・白タク合法化阻止」の集会を予定。ITFの浦田誠政策部長を講師に招き、自治体議員や市民に参加を呼び掛けています。
また多くの地連本が自治体議員や、地方連合、各県交運労協の加盟団体に対し、ライドシェアの危険性や公共交通に与えるダメージについてアピール。連合東京など様々な組織で、ハイタクフォーラムが取り組む請願署名に協力・賛同の輪が広がっています。
また事業者団体に呼び掛け、共同で阻止に取り組む動きも活発に行われており、岩手地本や埼玉地連では労使で県知事や議会に要請を行うべく、調整が行われています。
さらに兵庫県交運労協ハイタク部会は10月25日に兵庫県タクシー協会と労使懇談会を開き「ライドシェア問題について労使一体では反対していく」ことを確認。愛媛地本では10月20日に愛媛県ハイヤー・タクシー協会を訪れ、署名や阻止行動への協力を求めました。全自交本部は10月18日に、全国ハイヤー・タクシー連合会の武居利春副会長を訪問し、意見交換や署名への協力要請を行っています。




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