全国自動車交通労働組合連合会はハイタク産業に従事する労働者で構成する労働組合の連合体です。本ホームページは、どなたでも自由に全てご覧いただけます。


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Ⅳ.公共交通を守るために 政策面の課題

地域公共交通として利用者に安心で便利なハイヤー・タクシーであり続けるため、そしてエッセンシャルワーカーとしてのハイタク労働者、自教労働者の待遇改善・賃金労働条件向上を実現するために、次のような政策課題に取り組みます。


【安全・安心・便利なタクシーを守るために】

・ライドシェア(白タク)合法化阻止
・定額乗り放題は採算性と乗務員の適正な労働環境が担保されない限り認められない
・ダイナミックプライシングの導入阻止
・安全のための監査強化 知床の事故の教訓を無にしない
・電動キックボードなど、新たな道路上の脅威への対応
・自動運転時代の到来を見据え、雇用を守りぬくための検討


ハイヤー・タクシーが安全で、安心で、便利な公共交通機関であり続けるために、これまでの努力を全て台無しにするライドシェアの合法化は絶対に阻止しなくてはなりません。ライドシェア阻止は、今後も政策課題の最重要事項です。
また、現在拡大が進む定額乗り放題の実証実験に関してはその全てを否定するわけではありませんが、mobiや大阪AIオンデマンドについては、明らかに採算性がなく地域の公共交通をかき回す存在であり、乗務員を酷使して安全性にも疑問があるため、実証実験で終わらせなくてなりません。実証実験自体を止めることは難しいため、実験期間の1年が満了したのち、道路運送法4条での本運行を認めない闘いが重要になります。4条での運行は地域公共交通会議の承認がなければ許可されません。当該地域では各地方交運労協や、法人業界とも連携して地域公共交通会議で問題を主張していきます。
ダイナミックプライシング(事前確定型変動運賃)についても、公共交通の信頼感を損ない収益性を悪化させるような制度であれば、阻止しなくてはなりません。
安全性を守るため、運輸局の監査や、労働基準監督署の監督強化を求め、悪質事業者を退出させるよう求めます。また道路運送法の改正で基準が緩和された電動キックボードについては、取り締まりや規制の強化を求めます。
さらに中長期的課題として、今後自動運転技術が実用化されることを踏まえ、雇用を守るための対策を検討します。自動運転はまだまだ安全性に不安があるだけでなく、ソフトウェアのエラーなどによって一斉に輸送能力がダウンすることも想定されるため、有人運行車両と無人運行車両の比率を法制化するなど、将来に向けた検討が必要です。中国・重慶市では8月より完全無人運転の自動運転タクシーが営業を開始したというニュースもあり、手遅れになる前に手を打つ必要性があります。

【地域公共交通としてのタクシー】

・コロナ禍で深化した自治体との関係性強化、タクシー主導の取り組みを
・地域公共交通会議には全自交の地連・地本・単組が積極参加。ハイタク労働者を代表する委員として主張を
・鉄道廃線の代替輸送はバスだけでなく、タクシーも対象に
・燃料高騰支援の継続と改善
・地域旅客運送継続事業の「タクシー運賃低廉化措置」(乗合やデマンドだけでなく一般タクシーでの運行も対象となる補助制度)の活用・拡大
・移動権(交通権)の明確化と、財源確保
・滋賀県の「交通税」を全国に ハイタクの維持にも活用を
・ジャパンタクシーでの車いす乗降、一部の会社で実現した「1回300円の車いす乗降手当」など現場の負担解消策が必要
・感染防止対策の費用助成 空気清浄機の補助率引き上げなど


コロナ禍で、ハイタク産業は極めて厳しい状況に置かれましたが、苦しい状況にあったからこそ、自治体や一般市民の中で「交通運輸産業は絶対になくしてはならない重要な産業」という認識が深まったことは一つの光明でした。全自交の各地連本は県や市町村に対し、再三にわたって要請行動を展開し、コロナ以前には考えられなかった手厚い支援を引き出しています。特に岩手地本では、地元の労働団体・事業者団体・地方議員としっかり連携し、県や市町村から第三次、第四次と何度も何度も現金の支援金を実現させました。
これらの成果を今後の運動につなげ、さらに自治体との関係を深め、ハイタクが地域で必要不可欠な交通機関として長く発展するための政策闘争を展開します。
人口減少社会に突入し、各地で鉄道路線の廃線や、バスの路線見直しが実施・検討されていますが、その代替輸送手段として、タクシーを活用するよう政治、行政、そして経営者に働きかけねばなりません。その際にIT企業などの「下請け」にならないためには、タクシー業界自らが、自治体と一体となり持続性のあるサービスを提案していく必要があります。全自交各地連本は、都道府県や市町村の主催する地域公共会議に労働側委員として積極参加し、働く者の立場で主張していきます。
そして地域公共交通を守り続けるためには、人が自由にできる権利「移動権(交通権)」を明確化し、国の財源をより強力に交通の維持・発展に振り向ける政策が必要です。かつて民主党政権下で国会に提出された「交通基本法案」(政権交代後の2013年に、「交通政策基本法」として成立)の検討過程では、「移動権」の明記が真剣に検討されたことがありました。地域の活力を維持するためには、まず移動する権利が守られていなければなりません。コロナ禍で、使い途が自由な「地方創生臨時交付金」が国から自治体に配られた結果、非常に多くの自治体が公共交通の維持・発展に予算を付けました。この動きを生かし、移動する権利を明確化して、公共交通への財源を確保しなくてはなりません。
そして地方から、注目すべき動きも出ています。滋賀県では、かつて民主党衆議院議員としてタクシー特措法や交通基本法の成立に力を尽くした三日月大造知事が、地域公共交通を支えるため「交通税」の導入を目指しています。公共交通の未来にとって極めて重要な動きであり、全国に拡大し、タクシーの維持にも財源が振り向けられるための運動が求められます。
現在の政策の中では、今回実現した燃料高騰補助の継続と改善が必要です。世界情勢を見れば、化石燃料の価格が劇的に下がることは考え難く、燃料高騰は長期的な課題になる可能性があります。公共交通に対する燃料費補助を恒常的な制度に高め、地域間の実態を反映できる仕組みに変えていかねばなりません。
また、国の地域公共交通確保維持改善事業の中で定められた「タクシー運賃低廉化措置」の拡充を求めます。これは、フィーダー(支流、支線)輸送に関する補助で、バス路線の廃止に伴い、自治体がタクシーチケットを発行する際などに使える国の補助金です。乗合やデマンドに限らず、通常のタクシー運賃での運行も補助の対象になる点が画期的ですが、まだ利用できるケースが限定的で、金額も低いため改善の必要があります。さらに高性能空気清浄機の補助率改善など、安全・安心な輸送を実現するための支援も引き続き要請します。
ジャパンタクシーの普及に伴い、特に地方では車いすの利用者を送迎する業務が増加傾向にあります。ただ、ベッドからの介助が必要な利用者など、本来は、専門的な介護タクシーの利用が望ましい利用者も、値段の安い一般タクシー(UDタクシー)を使うケースが増えているとの報告も寄せられています。
特に利用者の状態によっては、本来2人の介助者が必要なケースもあります。介護タクシーでは、労力や時間、要求される専門性を反映して基本運賃以外に介助料金を設定しており、UDタクシーが基本運賃だけでそういった輸送を担うケースが適正なのかどうか、UDタクシーと介護タクシーの住み分けについて、きちんと議論される必要があります。
中部地方のある職場では、車いす対応の仕事について、乗務員に1回300円の手当の支給が実現しました。こういった対応も含め、車いす対応に当たる乗務員の負担軽減が求められます。


【エッセンシャルワーカーに相応しい待遇】

・国や自治体に対し、事業者への支援だけでなく、労働者(公共交通従事者)への直接の支援を要請
・最低賃金の大幅な引き上げ。同時に支払い能力がない中小事業に対しては、国が一部負担するなど支援策を求める
・エッセンシャルワーカーの賃上げ議論を介護や福祉関係から、交通運輸労働者にも拡大
・改善基準告示の積み残し課題として、休息期間は日勤11時間、隔勤24時間の義務化などの検討が必要。実態を踏まえつつ、バス・タクシー・トラックの三位一体で議論する方法は見直すべき


地域公共交通を担うエッセンシャルワーカーとして相応しい賃金・労働条件、そして雇用の安定を実現するために、労働者への直接支援や、国の政策としての賃金・労働条件引き上げに向けた検討を求めます。
また最低賃金の引き上げは急務ですが、現状では実態として労働時間と休憩時間の割合を帳面上で操作し、適正に支給しないという実例が多く見られます。悪質事業者には退出を求めねばなりませんが、最賃の支払い能力がないため労働側も請求をあきらめている地域があることも現実です。そのため、国に対しては最低賃金の大幅な引き上げとともに、支払い能力がない中小・零細事業者を支援する制度を求めます。


Ⅴ.全自交の組織拡大に向けて

1.組織拡大行動の推進

コロナ禍で雇用と賃金・労働条件を守るためには、団結して会社と交渉ができる労働組合が絶対に欠かせないことを訴えて組織拡大に取り組みます。

(1)職場の組織率の向上と交渉力の強化
①労働組合の組織率は、団体交渉の力関係に大きく影響を与えることから、各職場での組織化を最優先課題として取り組みます。春闘・秋闘をはじめとする単組活動を強化し、国や自治体から要請交渉で引き出した支援金の数々、賃上げ政策の請願署名やライドシェア阻止など、全自交労連の政策闘争の成果を広く宣伝しながら組織の拡大を図ります。
②乗務員の高齢化の現実を直視し、全ての職場で定年年齢を過ぎて働く定時制、嘱託者の組織化に全力をあげます。こうした取り組みを強化し、全ての加盟組合が過半数組合として活動できるよう奮闘します。
③全自交が取り組む「ハンドル共済」への加入を推進し、組織率向上に努めます。

(2)地域における組織拡大行動の推進
①同じ地域で働く未組織労働者や産別未加盟組合との接点を拡大するとともに、組織拡大を目的とした街頭宣伝を積極的に展開し、雇用と賃金・労働条件を守るための労働組合の重要性、全自交加盟組合の労働条件や交通政策を訴えながら、地域における組織拡大をめざします。
②地域において、個人加入の地域ユニオンづくりも検討し、組合のない職場にも加入を働きかけ、地域のタクシー労働者の組織化を進めます。

(3)コロナ禍における労働相談・生活相談の強化
労働相談・生活相談に丁寧に対応しながら、相談者の直面している困難や職場での不条理を親身に聞き取り、信頼関係を築きながら、組合の結成や活動の推進を促します。とりわけ、コロナ禍でタクシー労働者の生活危機は深刻さを増しており、「休業手当が払われない」「最低賃金が保証されない」「突然解雇を言い渡された」等の違法・不当な行為を許さず、共に行動して闘っていきます。


2.機関紙活動の強化

会社との団体交渉や行政に対する政策的な要請行動について、タイムリーに機関紙や張り紙などを発行して組合活動の内容・情報を伝えることは、組合活動を円滑に進めるために大変重要な活動です。機関紙でつながる強固な労働組合をめざして奮闘します。
また、手軽に更新できるSNSの利点を生かし、機関紙とともにSNSによる最新情報の発信に挑戦します。


3.YouTube「全自交チャンネル」動画の活用

全自交労連本部では、YouTubeの「全自交チャンネル」を開設し、まずは組合員に限定する形で動画の配信を開始しました。職場内での学習活動や組織拡大に生かすことも含め、今後の情報発信・共有の在り方を検討していきます。


4.学習活動の強化と次世代の活動家育成

(1)労働組合の意義と役割の学習強化
戦前から激しい弾圧を受けながら労働運動が闘われ、戦後において、労働者が団結して労働組合を結成し、要求をかかげて経営者と対等に交渉を行い、時にはストライキを構えて要求を実現する活動が労働者の基本的な権利として認められたことは画期的なことでした。労働基本権を武器に労働協約を締結し、最低ラインを定めた労働基準法を上回る労働条件を獲得していくことこそ労働組合の役割です。
また、有給休暇や最低賃金制度、社会保障制度など、今では当たり前のように思われる権利も、労働者の長く激しい闘いの中で実現した権利であることを確認していかなければなりません。
近年、労働組合の組織率は低下の一途をたどっていますが、労働者自身が団結しなければ使用者側の都合の良いように労働条件が切り下げられることは明白です。実際に、この30年間、労働者の賃金が上がらず、非正規雇用の使い捨てがまん延した最大の原因は、自民党政権による労働組合弱体化政策にありました。行政機関は法令違反がない限り労使の関係には不介入の立場を取ります。労働組合こそが最も強力で役に立つ防衛手段であることを再認識し、職場や社会で訴えていかなければなりません。

(2)次世代を担う活動家の育成
地域によっては、労働組合役員の高齢化が進んでいます。全自交運動の継承・発展のために次世代を担う活動家の育成は焦眉の課題となっており、①若い世代の組合役員を育成する観点から、地連・地本、単組における学習会の計画的な実施と、オンライン出席も含めた本部のセミナー等への積極的参加②単組における労働協約の内容の確認と賃金計算等の学習の強化を推進していきます。

(3)女性組合員・役員の増強
女性が働きやすい職場を実現するためにも、労働組合の女性組合員、そして役員を増強することは喫緊の課題です。連合は「ジェンダー平等推進計画フェーズ1」を掲げ、2024年までに構成組織(産別)や単組が、必ず達成すべき目標として①組合員の男女比率を毎年調査②女性役員(会計監査を除く)を選出③運動方針に「ジェンダー平等の推進」を明記の3点を課しており、その実現・継続に向けて努力します。
一部の組織では、役員の中で女性の比率を設定する「クオータ制」を導入しています。女性乗務員の比率がまだ4%しかない、ハイタクの労働組合でただちにクオータ制を導入することは困難ですが、これまでの男性優位社会を是正していくためには、意識的に女性役員を引き上げ、活躍してもらう取り組みが必要となります。


5.規約等の整備

規約の内容を精査し、修正が必要な点については大会にはかり、適正かつ適法な組合運営を目指します。


6.産業別労働組合としての交渉力強化

ヨーロッパ諸国では産業労働組合が、使用者側と交渉して産業労働協約を結び、国全体の労働者の賃金・労働条件を守っている例があることを踏まえ、産業別労働組合としての交渉力強化を目指します。タクシー業界全体の問題を解消していくには、政治、行政、使用者、労働者による協議機関の設置などを通じ、産業労使協定の実現などを図る必要があります。過去には、各地域でタクシー最賃の創設を求めて闘った運動や、事業者団体と定年延長と減車について合意を結んだ事例もあり、地域単位で産業全体の働き方を決めていく取り組みも重要となります。



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