全国自動車交通労働組合連合会はハイタク産業に従事する労働者で構成する労働組合の連合体です。本ホームページは、どなたでも自由に全てご覧いただけます。


ホーム > ニュース > 2023年4月20日掲載



歩率アップ!ベースアップ!
インフレ手当や企業内最賃!
車いす乗降手当!定年延長!
内勤職の昇給!育休・有給改善!

2023春闘の交渉も佳境を迎え、先行妥結組合からは次々と目覚ましい内容の妥結報告が届いています。4月12日時点で、全自交本部には7地連本の22職場から妥結報告が寄せられ、歩率アップや基本給のベースアップ、地域最低賃金を46円上回る企業内最賃の創設、一時金の増額や車いす乗降手当など、各地で大幅な賃上げが実現しました。内勤職員の待遇改善も多数実現しています。さらには定年年齢の引き上げや有給休暇の改善など労働条件の改善も多く見られます。先行組合の勝ち得た成果は、まさに今、粘り強く交渉を行っている仲間を勇気づける内容です。

先行組合に聞く 交渉の成果

新潟地連・柏崎交通労組 ベア4500円

中川委員長
柏崎交通労組は3月17日に妥結。固定給を主体としたA型賃金体系の中で、従来の定昇500円に加え、4500円のベースアップを実現し、高齢乗務員の時給額についても45~50円の増額を達成。さらに60歳定年を65歳まで延ばし定昇も65歳まで継続。事務職などの年間休日を増やすなど、満額に近い内容で妥結しました。
中川義昭委員長(新潟地連委員長)は、「今までは要求を跳ね返されてきたが「人手不足の中で、労働環境を整備し選んでもらえる会社にしなければ」という組合の主張が経営側にも理解された。役員をして15年になるが、賃上げ5000円という水準は今年が初めてだ」と語ります。
新潟B地区は、運賃改定を控えていますが、新潟地連の海藤正彦書記長は「歩合給のみの会社は運賃改定の増収分が自然に賃金に反映されるが、A型賃金の会社ではベースアップがなければ、適正に反映されない。足切り額を上げて固定給部分も上げる形式が多かったが、今回、足切りを維持してベースアップを実現した意味は大きい」と語っています。

静岡・伊豆箱根交通労組 車いす乗降で500円

伊豆箱根交通労組は3回の団交を闘い3月16日に妥結。JAPANタクシーの車いす乗降1回につき500円の手当創設をはじめ、63歳から65歳への定年延長、乗務員の歩合率0・1%引き上げや、一般職の賃上げ、運行管理者手当1万円の創設といった多くの成果を勝ち取りました。

西尾喜久夫委員長(静岡ハイタク連合会事務局長)は、「会社はコロナ前から赤字で、私たちは5年間も我慢を強いられてきた。経営者にもその点を説明し、交渉に臨んだ」と語ります。会社はまだ黒字化していませんが、「各営業所で乗務員が足りず、駅の入構車両を確保するためにアプリの仕事を取れないことも多い」という状況を背景に力強く交渉。「私が委員長になってからこれだけ成果のある春闘は初めてだ」と実感しています。最終団交でも粘り、解決一時金3000円の追加回答を引き出しました。
西尾委員長

伊豆箱根交通・熱海営業所
のラッピングタクシー。
広告収入も春闘の
原資になります。
1回500円の車いす乗降手当は、時間が掛かる乗降が、現場乗務員の負担となっていることを会社も理解し、1回目の団交で合意。西尾委員長は「会社が理解してくれたことは喜ばしく、接客面でもプラスになる」と語ります。
コロナ前から要求していた運行管理者手当も1万円で合意。資格保有者にも1000円の手当をつけ、資格取得を後押しします。

北海道・安全永楽交通労組 配分率1%アップ

春一番の便りは、北の大地から届きました。安全永楽交通労組は2回の団交を経て、全自交で最速の2月24日に妥結。正社員の月例給の賃金配分率を49→50%にアップ、さらに3万円の生活支援金(決算手当)を獲得しています。
コロナ禍では、感染者輸送の仕事が安定した売上になりましたが、「乗務員は防護服を着て運転したが特別の手当はなく、この春闘で分配を勝ち取る必要があった」と徳本博書記長(北海道地連書記長)は、今春闘にかけた思いを語ります。
「嘱託雇用(65歳以上)と正社員の割合は半々ほどだが、団交では「まず若い人の賃金を上げてほしい」と、2%アップを要求した。2回目の団交で1%アップが実現した時は本当に良かったと感じた」と振り返ります。「乗務員は全く足りていない。札幌では倒産したタクシー会社の乗務員が取り合いになっている」という情勢下、しっかりと賃金を上げる必要性を労使が確認しました。
決算手当はコロナ禍で2年間ゼロ、コロナ前も1万円ほどでしたが、今回は3万円で妥結。車内用の大型掃除機や、サイドバイザーなど設備改善も実現しました。

23春闘妥結状況 第1弾



推計年収361万円

厚生労働省の2022年賃金構造基本統計調査がまとまりました。
タクシー労働者( 男女計)の全国平均の推計年収は361万3300円となり、2021年から比べて約81万円の回復となっています。統計上はコロナ前の2019年の年収をも、4万円弱上回る数字となりましたが、現場の生活実感はまだまだ苦しいまま。物価高騰の影響もあって、家計に関する全自交の春闘アンケートでは「赤字」が33・6%、「トントン」が55・2%という状況です。全産業の年収との格差も縮まりましたが、いまだ男女合計で約135万円、男性のみの比較では約191万円の格差があります。
賃金改善の要因は、何よりも労働者不足の影響と考えられますが、まだまだ361万円はエッセンシャルワーカーの年収として不十分であり、人材獲得にはさらなる賃上げが欠かせません。
※推計年収は2022年6月の残業代を含めた月例賃金を12倍し、それに一時金・賞与などを足した金額。




最賃違反や協議運賃に懸念

大西健介 衆議院議員

大西健介議員(立憲民主党、愛知13区)は3月22日の衆議院厚生労働委員会でハイタク産業の労働問題について質問しました。大西議員は、3月9日に行われたハイタクフォーラムの厚労省交渉にも同席しており、そこで出たハイタク労働者の声を国会で政府にぶつけています。
「タクシー業界では地域最低賃金を下回る場合でも休憩や出退勤の時間等が改ざんされているケースなど、調査をしても不正が確認できない事例があるようだ」と問題提起。「日報やタコメーターの確認や運転者への聞き取りを徹底的に行って、厳正な監督を」と求めました。また歩合給の減額を避けるために有給休暇が取得しにくい現状の改善も求めました。
厚労省の鈴木英二郎労働基準局長は「運転日報やタコグラフといった客観的な証拠から労働時間に対する賃金の支払いの有無などを必ず確認している」と答えたものの、タコグラフ未装着や、日報が改ざんされているケースには言及しませんでした。有給休暇については「売上確保や賃金減額を避けるといった理由で、取得を抑止することは不適当」と回答しています。


下条みつ 衆議院議員

3月22日の衆議院国土交通委員会で下条みつ議員(立憲民主党、長野2区)は、タクシーの協議運賃について「運賃に差が出てくる。この整合性はどうなるのか」とただしました。同委員会で理事を務める伴野豊議員(立憲民主党、愛知8区)と連携し、下条議員が発言を行いました。
タクシーの協議運賃は地域公共交通活性化再生法の改正法案に盛り込まれているもので、地域で合意すれば、独自の運賃を設定できる制度です。
堀内丈太郎自動車局長は協議運賃について「地域の関係者による協議がととのった時は、従来の認可制運賃によらず、届け出で運賃を導入できる制度」と説明。一方で「協議運賃が、他の事業者との間に不当な競争を引き起こす運賃となった場合には道路運送法に基づき変更命令を出すことができる」と、不当に安い運賃が設定されることには歯止めをかける考えを述べています。


個人の懐が潤い、希望を生む社会へ

3月15日、連合の芳野友子会長らが、「出前対話活動」として、全自交会館を訪問。ハイタク労働者が抱える課題について、関東圏の全自交三役と意見交換しました=写真。全自交側は、歩合制賃金の特徴や、春闘交渉の難しさを説明。歩合給主体の他業種との意見交換を希望しました。
芳野会長は、真剣に耳を傾け、「制服の支給や有給休暇の改善も大事な春闘の成果」とコメント。また「消費者のマインドを変えたい。モノには適正な価格がある」と、賃上げのための価格転嫁(運賃改定)の必要性を強調しました。



【運賃改定45都道府県に】
3月31日に高知市域で運賃改定申請があり2020年12月以降では、鳥取・島根を除く45都道府県でタクシー運賃改定の動き。

【ダイナミックプライシング制度化案】
国土交通省は3月31日にダイナミックプライシング(事前確定型変動運賃)の案を発表。アプリで乗車する時にリアルタイムで5割増~5割引まで運賃を変動させられるが、その平均値が通常の運賃の幅の中に収まっていない場合は、運賃の認可が取り消される。また新たな運転者負担を行うことも制限した。



(◆が要請項目 ◎が回答の趣旨。3月9日に実施。前号に記事)
◆コロナ臨時休車制度の車両の復活期限を2025年度以降も延長されたい
 ◎期限が到来する時期のタクシー需要への影響などを鑑み、復活期限の再設定など必要な措置を検討したい。

◆特定地域の指定要件に合致したにも関わらず、事業者の意向によって不同意となることへの対応
 ◎協議会における決議方法を見直すなどの検討を行っていきたい。

◆特定、準特定地域協議会の書面開催の是正
 ◎特定地域の指定に関する議決について、今年度は、対面開催やオンラインの活用など、出席者が意見を交わすことのできる方法で開催するよう、地方運輸局を通じて各地の協議会へ指示した。

◆運転者負担の是正
 ◎令和2年2月の運賃改定実施時に事業者団体に通達を発出し、配車アプリの手数料など事業に要する経費を運転者に負担させる慣行がある場合、見直しを図るよう留意することなどを周知徹底している。国土交通省として、運賃改定の趣旨を逸脱する状況が認められる場合には、地方運輸局を通じて必要な指導等を行う。

◆定額乗り放題サービス「mobi」について
 ◎今後、本格運行を行うに当たっては、近距離移動の需要を喚起できたのか、既存の交通事業者の需要を損なうものでないのか、といった観点から実証実験の結果の検証を進めていくことが重要。本格運行を行うには、交通事業者も参画する地域公共交通会議で協議がととのった上で、乗合許可を取得する必要がある。

◆都市型ハイヤーの乱立問題 過当競争や運賃改定が難しくなる弊害について
 ◎ハイヤーにおける運賃改定については「7割ルール」が適用されるが、利用形態が一般タクシーと異なり、利用者への影響も少ないことから、手続開始の申請要件を7割から5割へ緩和するなどの改正を行う方針。

◆ライドシェア等白タク行為の合法化は、今後も断固として認めないように
 ◎ライドシェアは白タク行為であり道路運送法に違反する行為だ。

◆「燃料価格激変緩和対策事業」について、LPガス価格が高騰している間は継続を
 ◎タクシー事業者に対するLPガス支援については、令和5年9月末まで実施することとしている。

◆適正な運賃改定と、公定幅運賃の下限割れ運賃設定事業者への厳格な対応
 ◎運賃改定により、賃上げを中心としたタクシー運転者の労働環境の改善を図ることは大変重要だと考えており、迅速化に最大限努めている。下限割れ運賃設定事業者については、裁判の動向を注視しつつ、引き続き粘り強く指導を行うなど、法令に基づき適切に対応していく。

◆運賃改定実施時に、歩合率引き下げなど労働分配率の改悪を行うタクシー事業者に対し、社名公表や補助金対象からの除外など可能な限りの対応を。労働者等からの通報があった場合には機動的に対応されたい
 ◎賃金制度は基本的に労使間で定める事項であるものの、フォローアップ調査を適切に行っていく。

◆運賃ブロックや事業区域の見直し
 ◎運賃ブロックの見直しは、運転者の労働環境を改善すべく、2~3年の周期で運賃改定が行えるよう、審査の迅速化を目的としている。営業区域の見直しは、交通空白地となり運送サービス提供が困難な地域を見直す目的で検討中。見直しに当たっては、必要に応じ労働組合をはじめとした地域の関係者の意見も踏まえる。

◆旅行業者登録の配車アプリ事業者による実質的な運賃割引に規制を
 ◎公共交通機関のサービスとして不適切な運用となっていないか注視しつつ、必要に応じて適切に対応する。

◆配車アプリがメーター以外の配車手数料を徴収しているケースについて
 ◎配車手数料は、運送の対価ではなく、配車アプリにより利用者が享受した便益の対価となるが、今後、仮に配車手数料が高額となっていくようであれば、公共交通機関のサービスとして適正化を図る必要がある。




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