全国自動車交通労働組合連合会はハイタク産業に従事する労働者で構成する労働組合の連合体です。本ホームページは、どなたでも自由に全てご覧いただけます。


ホーム > ニュース > 2017年10月6日掲載(1164号)






Ⅰ.はじめに

世界情勢は混迷を深めています。グローバリズムと新自由主義の先頭に立っていた英米両国でそれを否定する民衆の動きが急速に広がり、英国がEUを離脱し米国大統領にトランプが就任する事態となりました。これは先進国の国民をも収奪して利益追求に走るグローバル資本が作り出した超格差社会と金権腐敗政治に対する反乱とも言えます。「アメリカ第一主義」を掲げるトランプ政権は、国内の分断を深めながら保護主義に舵を切り、米国と世界の混迷を促進しています。5億人の人口を抱えるEUの存在と中国・アジアの勃興の中で対米従属の道をひた走る日本の危機は今後一層深刻なものとなることは明白です。

安倍政権による「アベノミクス」の失敗が低成長と実質賃金の低下を招き、格差社会と将来不安への不満が全国で高まっています。また、森友学園・加計学園問題が噴出し、金権腐敗政治が追求されているにもかかわらず、憲法記念日に9条改憲を表明し、6月15日には犯罪を計画段階から処罰する「共謀罪」(組織犯罪処罰法改正)を国民の反対を押し切って成立させ、監視・密告社会への道を開こうとしています。閣僚の相次ぐ失態が重なる中、7月2日投開票の東京都議会選挙で自民党は歴史的な大敗を喫しました。今こそ政治の流動化を加速させ安倍政権を打倒しなければなりません。

「働き方改革実現会議」は実行計画をまとめましたが、残業規制は過労死ラインの月80時間を特例で認める内容となっています。また、残業代ゼロ法案や解雇の自由化(解雇の金銭解決)も狙われており、不安定雇用と低賃金、長時間労働と過労死をこれ以上許してはなりません。
 タクシー産業は、規制改革会議の妨害で特定地域の指定が大幅に縮小されるとともに、公取委が適正車両数上限を超えた減車計画は「独禁法に抵触する」という立場を崩さず、タクシー労働者の労働条件改善に結びつく取り組みとなっていません。さらに、国を訴えた低運賃事業者の影響で、当該地域の下限運賃が見直され新たな低運賃競争が吹き荒れる地域も出現しています。改正タクシー特措法は、台数・運賃の両面で限界を露呈していると言わなければなりません。「地域限定・期間限定」の対策ではなく、全国的・恒久的対策こそ求められており、道路運送法の抜本改正に向けて奮闘します。

また、新経済連盟などが白タク・ライドシェアの合法化の働きかけを続けており、「地方で風穴を開け都市部に進出する」ことを狙ってうごめいています。住民から安全・安心な移動手段を奪うとともに、労働者から労働基本権を取り上げて無権利労働を一気に拡大する白タク合法化を絶対に阻止しなくてはなりません。
全自交労連は、タクシー改正法の骨抜きと白タク合法化を許さず、公共交通を担う労働者にふさわしい労働条件を実現するよう全国で奮闘していきます。また、タクシーが若年者や女性にとって魅力ある産業に生まれ変わるために全力をあげます。内外情勢の特徴(略)


Ⅱ.ハイタク産業の動向

1.タクシー事業の現状

法人タクシーの日車営収は、2015年度の全国平均を見れば6年連続で改善しています。しかし、その水準は29549円でありリーマンショック前の水準を回復したものの、規制緩和前の30951円を依然として下回っています。また、地域間格差も深刻で東京都(48071円)の他、神奈川、埼玉県・千葉県・愛知県で3万円を超えた一方で、宮崎県(15719円)等、12県で2万円を割り込んでいます。

2.タクシーの産業動向

(1)白タク・ライドシェア
5月23日に規制改革推進会議が第一次答申を出し、ライドシェアの文言は無いものの、地方部における自家用輸送の拡大を意図した内容が示され、登録・許可を要しない自家用車運送でガソリン代等の収受可能な範囲を通達で明確にするよう求めています。
現在、地方の地域交通や観光分野で白ナンバー輸送の動きが拡大しています。ウーバーは2016年5月には京都府京丹後市でNPOによる自家用車有償運送の配車アプリの提供を開始しました。また、北海道中頓別町で無償運送の配車アプリ提供も始まっています。リクルートは、自家用車有償運送のサポート事業を展開し、車両や保険とともにタブレットの提供を行い、各地の地域公共交通会議に出席し、自家用車有償運送の運営サポート事業を売り込んでいます。
「のってこ」は、ヒッチハイク型のマッチング事業を展開。北海道天塩町と連携し、天塩と稚内間をつなぐ地方都市専用のマッチングサービスを提供しています。
ジャスタビは、旅行会社であるHISの子会社として、沖縄でレンタカー利用者とドライバーのマッチング事業を展開。その事業形態の違法性をマスコミが取り上げ、関係官庁が摘発・取り締まりに動き、6月に不法就労と違法な観光白タク行為でドライバーの逮捕者が出ています。
さらに、宅配を巡っては、東京都内で「ウーバー・イーツ」を立ち上げ、料理の宅配事業を開始しました。

(2)市民会議の運動
2016年8月5日に「交通の安全と労働を考える市民会議」を立ち上げ、2016年9月29日に衆議院議員会館多目的ホールで第1回目のシンポジウムを開催して以来、大阪、東京(立川)、東京(衆議院議員会館)、名古屋、横浜、盛岡で連続的にシンポジウムが開催され、9月30日には、東京・星陵会館でシンポジウムとデモ行進が行われました。こうした取り組みが大阪では、大阪タクシー協会と在阪労働5団体が共同でリーフレットを作成し街宣行動を展開する取り組みに発展しており、東京でもタクシーの日に合わせ、労働8団体による共同の街頭宣伝活動を行いました。また、地方議会でのライドシェア導入反対・公共交通の維持・活性化を求める意見書採択も進んでいます。シェアリングエコノミー(特にライドシェア)を美化する流れに抗し、その問題点を広く訴え、世論を変える取り組みを進めます。

(3)地域公共交通網計画
地方創生の掛け声とは裏腹に、安倍政権の下で都市部との格差が拡大し続け、地方の危機は一段と深まっています。2014年11月に改正地域公共交通活性化再生法が施行され、5月末までに全国で291件の地域公共交通網形成計画が策定され、15件の地域公共交通再編実施計画が国土交通大臣より認定されています。自家用車輸送によらない便利で安全な交通のネットワーク構築に奮闘します。

(4)青森裁判と特措法
全自交青森地連の組合員8名が「改正タクシー特措法が施行されたにもかかわらず、違法な指定基準で特定地域に指定されなかったことにより供給過剰状態が放置され、賃金の増加・維持が困難となった」として国に対し損害賠償を求めた青森タクシー裁判控訴審で、7月13日に不当判決が出されました。 
全自交労連は、特定地域の指定基準について適正車両数との乖離率や運転者の所得額を指標とすべきであると一貫して主張してきましたが、改正タクシー特措法の運用段階において、規制改革会議が介入し、国土交通省がこれに屈した結果、当初予定されていた特定地域の指定が大幅に縮小され、改正法が骨抜きにされることで実効性が失われてきました。今や改正法は台数・運賃の両面で限界を露呈しており、この限界を乗り越える道路運送法の抜本的改正を求めて運動を強化します。

白タク合法化阻止で規制を上げる
ハイタクフォーラムの仲間
Ⅲ.新年度の運動の基調

(1)魅力あるタクシー産業に生まれ変わるための労働条件の大幅改善を
規制改革会議の妨害により、特定地域の指定が限定される中、特定地域協議会の議論や地域計画・事業計画の実施が遅延し、改正タクシー特措法の実効性が問われる状況にあります。こうした状況を突破し、適正需給・適正運賃を全国で実現するよう全力をあげます。国会附帯決議をすべての職場で進め、改正法の目的である労働条件の改善を実感できる状況を作り出さなければなりません。生活に欠かせない公共交通労働者にふさわしい労働条件を築き、若年者や女性にとって魅力ある産業に生まれ変わるために労働条件の大幅改善に奮闘します。

(2)安全を破壊し、無権利労働を拡大する白タク合法化絶対阻止
安倍政権の下で白タク合法化に向けた動きが加速しています。国家戦略特区で「自家用車の活用拡大」を強行するとともに、ウーバー等が地方自治体にライドシェア導入の働きかけを強めており、地方で風穴を開け都市部に拡大することが狙われています。「ライドシェア」は輸送の安全を著しく低下させるのは明らかです。また、運転者は無権利労働者として搾取を強いられることとなります。交通政策基本法に基づき、タクシーも含めた地域交通の活性化と再生を進めることこそ国や自治体の使命です。地方自治体に「地域公共交通網形成計画」の策定を促し、白タク導入阻止を強く訴えていきます。

(3)産別機能の強化と組織拡大
力強く運動を進めるためには組織の拡大・強化が最重要の課題です。産別機能を維持・強化し、職場での団体交渉や地域の交通政策を活発に展開して全自交労連への結集を実現します。タクシー労働者の労働条件改善と社会的地位の向上にむけて、権利拡大と人間らしい労働環境を追求します。主流派精神をもって組織拡大を実現していきます。

Ⅳ.魅力ある産業になるための労働条件再構築

(1)タクシー労働者の賃金水準
2016年度のハイタク運転者の年収は、厚労省の賃金構造基本統計調査からの推計で332・0万円となり、3年連続で300万円を超え、前年より約22・2万円改善し、6年連続の増加を見ました。しかし、全産業男性労働者との年収格差は、前年と比較して縮小したものの、依然として217・4万円に上っています。
タクシー労働者の低い年収水準が長期化していることによって、若年者から敬遠される傾向が強まるとともに高齢化に歯止めがかからず、平均年齢が58・9歳まで上昇しました。
日本の労働力人口の減少が進む中、あらゆる業種が新入社員の獲得のために初任給を引き上げたり、労働時間を削減したりする動きが拡大しており、タクシー産業においても大幅な労働条件改善に踏み出さなければ、乗務員確保が困難になるのは明白です。実際、地方における倒産・廃業が多発しており、タクシー産業が地域交通を支え、生活に欠かせない「公共交通機関としての役割を担う必要性が高い地域においてタクシーが消滅する事態を食い止めていかなければ、ライドシェア等の白ナンバー輸送の拡大を許してしまうことになりかねません。安全で良質なサービスを提供し、地方公共団体や他の輸送モードとの連携を強化しながら、地域の公共交通網計画に参画し、福祉輸送や観光輸送を積極的に展開することが求められています。タクシー産業の未来にとって、家族を養える賃金水準を早急に確立することが喫緊の課題です。

(2)改正法成立時の国会附帯決議を早期に完全履行させよう
●累進歩合制の排除、●固定給中心の生活安定型賃金の追求、●不当な運転者負担や賃金カットの排除、●過度な遠距離割引の是正、●過労防止対策の推進(詳細略)

(3)適正な賃金計算とタクシー職場の法違反一掃
最低賃金が引き上げられるにつれて、全タク連は中央最低賃金審議会に対して、引き上げの慎重審議を求める要望書を提出し、改定額の抑制を毎年求めていますが、強く批判されなければなりません。改正タクシー特措法が施行される中、経営者には大幅減車を即時実行し、一人当たりの営収向上=賃金改善につなげる責務があります。また、労働基準関係法令の違反や改善基準告示違反を無くすよう闘います。法律無視が常態化している現状に怒りをもって対処し、悪質事業者の監視・摘発を強化します。

(4)雇用形態の違いによる差別禁止と「同一労働・同一賃金」の推進
正社員と有期雇用契約社員(定年後の継続雇用者含む)との不合理な差別は労働契約法20条で禁止されています。
正社員と同じ業務内容でありながら雇用形態の違いだけで不当な差別的賃金が支払われることがないよう労働組合としてしっかり点検し「同一労働・同一賃金」の原則に照らして改善しなければなりません。また、働く仲間全員を労働組合に組織するためにも、同一労働・同一賃金」の推進に全力をあげます。

(5)長時間労働の是正
働き方改革実現会議は3月28日、働き方改革実行計画を決定し、罰則付き時間外労働の上限規制の導入が柱となっています。現在の36協定の特例で事実上、上限無く時間外労働が可能となっている状況から、上限を設定する意義はあるとしても、過労死ラインと言われる月80時間を超える時間外労働が条件付きで認められているばかりでなく、休日労働を含む上限規制となっていることで休みなく働き続けることも容認する内容であり、強く反対します。さらに、自動車運転業務については、改正法の施行から5年後に、年960時間(=月平均80時間)以内の規制を適用することとし、かつ、将来的には一般則の適用を目指すとしています。この内容では、5年の準備期間を設けても一般則より年240時間(=月平均20時間)の長時間労働が認められることになるとともに、将来にわたって一般則の適用が努力目標になっていることは許されません。
ハイタク産業において、ハイヤーの請負業や宿泊を伴う観光専門の業務では長時間労働が常態化しており、段階的な見直しを労使で協議していく事が必要です。


Ⅴ.白タク合法化を阻止し、地域交通を担うタクシーに生まれ変わろう

(1)タクシーを取り巻く環境の激変
安倍政権の下でシェアリングエコノミーの推進とライドシェア合法化が狙われ、タクシーの存立基盤が奪われる危機にあります。一方、地方では人口減少と高齢化の中で、公共交通の衰退と交通空白地の拡大が進んでおり、タクシー産業を取り巻く環境は激変し、大きな変革期を迎えています。
タクシーの変革を実現し、白タク合法化を阻止すると同時に地方においては安全で便利な移動手段として地域交通を担うタクシーに生まれ変わるために奮闘します。

(2)タクシーの産業基盤を奪う白タク合法化阻止
白タク・ライドシェア合法化の攻撃は、公共交通機関が手薄な地方で風穴を開け、収益が見込まれる都市部で事業展開することこそ目的です。
5月23日、規制改革推進会議の第一次答申において、登録を要しない自家用車運送でガソリン代等の収受可能な範囲を通達で明確にするよう求めました。現在、全国各地で違法性のある白ナンバー輸送が様々な形で拡大されようとしています。①ウーバー、②自家用有償運送をサポート事業を展開するリクルート、③ヒッチハイク型で長距離の相乗りを対象にマッチング事業を展開する「のってこ」、④レンタカー利用者と観光ドライバーの仲介事業を展開し、訪日旅行者に売り込むジャスタビ等の動向を注視し、拡大を阻止しなれればなりません。
「交通の安全と労働を考える市民会議」の公開シンポジウムを全国の主要都市に拡大しながらシェアリングエコノミー、ライドシェアの安全面・労働面の問題点を広く訴えます。また、ライドシェアの導入反対の意見書採択を多くの地方議会で取り組みます。

(3)改正タクシー法の限界を乗り越え、道路運送法の抜本改正を
特定地域の指定が極めて限定的になり、改正タクシー特措法の立法趣旨に反する運用となっています。特定地域の指定を受けても地域計画は適正車両数の上限値を下回る減車は困難であり、労働条件向上に結び付く対策にはなっていません。運賃面でも、一部で公定幅運賃の下限見直しが行われ、熾烈な運賃競争が展開される地域が出現しました。
特措法による「地域限定」「期間限定」の対策の限界が明らかになっていることから、「全国的」「恒久的」対策が保障される事業の「免許制」を柱とし、適正運賃の制度が全国に適用される道路運送法の抜本的改正の実現を目指します。

(4)地域公共交通網形成計画の推進
改正「地域公共交通活性化・再生法」の施行により、タクシーは重要な公共交通と位置付けられ、自治体の責任で持続可能性な公共交通ネットワークの構築が求められます。「地域公共交通網形成計画」の作成を全国の自治体で進め、生活交通として「住民から頼りにされるタクシー」に生まれ変わるために奮闘します。

(5)運転代行の適正化推進と違法行為の根絶
運転代行の違法行為を根絶に奮闘するとともに、適正化法の改正を求めます。


【公共交通としてのハイタク政策確立への要求課題】

(1)ハイタク事業の適正化・活性化とライドシェア導入阻止について
①特定地域と準特定地域の指定基準をタクシー乗務員の賃金指標を柱とする基準に見直すこと。とりわけ、人口要件を不要とすること。②特定地域及び準特定地域で日車営収の微増や人口減少をもって指定を解除するのではなく、賃金水準の上昇を基準に判断すること。③ライドシェアと称する白タク行為は、輸送の安全破壊や無権利労働の拡大につながることは明らかであり、絶対に認めないこと。④レンタカーとドライバーの観光型仲介事業(ジャスタビ)や都市間の相乗りによるヒッチハイク型仲介事業(のってこ)は違法性が高く、白タク行為として摘発すること。⑤地域公共交通網形成計画の策定が全国で推進されるよう、自治体、事業者等に働きかけを強めること。

(2)運賃の適正化について
①公定幅運賃制度を全国に適用すること。また、現行の公定幅運賃に従わない事業者に対し強力な指導を行い、公定幅内への運賃変更を行わせること。②「5千円超5割引」の廃止に向けて尽力すること。

(3)適正な労働条件の確保について
①労基法違反、最低賃金法違反、改善基準告示違反をタクシー職場から確実に一掃すること。②同一労働・同一賃金や長時間労働の是正に向けて事業者を指導すること。

(4)自家用有償旅客運送の拡大反対、白タク等の違法営業行為の根絶について
①自家用有償旅客運送については、実施主体の弾力化により、新たに自治会や青年団などの「権利能力なき社団」も実施主体として認められたとはいえ、営利目的の自家用有償運送は絶対に認めないこと。②運転代行の違法行為を根絶するため、取り締まりを強化し、運転代行業の適正化のために必要な法改正を行うこと。


Ⅵ.政治課題、反戦・平和運動の推進

(1)国家戦略特区を悪用した金権腐敗政治を許さない
安倍政権の経済政策の失敗が実質賃金の低下を招き、重層的な格差社会を生み出す中、加計学園問題で国家戦略特区を悪用した金権腐敗政治が暴露され、おごり高ぶってきた安倍政権の腐敗した実態が国民の怒りを呼び起こし、支持率は大きく低下しています。国民の生活を顧みず、利権(公金)をむさぼる自民党の金権腐敗政治を許さず、政治の流れを変える闘いを全力で推し進めます。

(2)「働き方改革」、残業代ゼロ法案、解雇の金銭解決を跳ね返そう
安倍政権は、「働き方改革」の美名のもとで、残業規制と「同一労働・同一賃金」を進めようとしていますが、過労死ラインの月80時間を特例で認める内容となっています。また、「同一労働・同一賃金」も重要ですが、非正規労働者は今や40%を占めるに至り、非正規から正社員への転換こそ求められています。さらに、長時間労働の是正とは裏腹に「残業代ゼロ法案」も秋の国会に提出する予定になっており、解雇の自由化(解雇の金銭解決)も狙われている中で、不安定雇用と低賃金、長時間労働と過労死、労働組合弱体化をこれ以上許してはなりません。その上、経済産業省が「雇われない働き方」として労働法の適用を受けない「フリーランス」を推奨する動きもあります。政府の政策として、国民から労働基本権を奪い、無権利労働を強いるこうした働き方を認めるわけにはいきません。私たちハイタク産業で働く労働者だけでなく、我が国の労働者すべてにかかわるこの法案には総力を挙げて反対し、安倍政権の早期退陣を迫っていかなければなりません。

(3)監視社会と労働運動弾圧につながる共謀罪を廃止させよう
安倍首相は今年の憲法記念日に、9条に自衛隊を明記する旨の改憲を表明し、続いて6月15日には犯罪を計画段階から処罰する「共謀罪」(組織犯罪処罰法改正)を国民の反対を押し切って成立さました。機密保護法、安保関連法(戦争法)を成立させ、国内の治安強化と海外での武力行使を可能にする戦争政策を進めてきた安倍政権は、共謀罪を成立させ、日本社会を監視・密告社会に変貌させようとしています。言論の自由を奪い、個人の人権をないがしろにし、労働運動の弾圧に使われてきた過去の治安維持法の再来である共謀罪を何としても廃止させなければなりません。
ハイタクフォーラムが国交省と交渉

共謀罪反対の大集会(日比谷野外音楽堂)
(4)脱原発・核兵器廃絶・沖縄新基地建設阻止の運動を推進しよう
安倍政権は、原発再稼働を押し進めるとともに、東京電力福島第一原発事故の避難地域を一部解除し避難者を強制帰還させようと仮設住宅からの立ち退きや住宅補助打ち切りを強行しています。また、7月に国連で可決された核兵器禁止条約に日本政府が反対し、加わらなかったことは被爆者の長年の悲痛な訴えに背く暴挙であり、被爆国として絶対に許されません。また、沖縄戦やアメリカへの売り渡しなど、日本は歴史的に多大な犠牲を沖縄に強いてきました。本土復帰後も米軍基地は無くならず、「基地の島」からの脱却を求める県民の思いを踏みにじり、辺野古新基地建設や高江ヘリパット建設を強行しようとしています。地方自治を無視し、沖縄の自己決定権を認めない政府の対応を厳しく批判し、沖縄県民とともに闘い抜かなければなりません。
私たちは、平和フォーラムとともに次の課題の実現をめざして行動します。①憲法改悪を許さず、憲法違反の安保関連法(戦争法)の廃止を求めます。②言論の自由を奪い監視・密告社会をつくりだす共謀罪の廃止を求めます。③核兵器廃絶・脱原発の運動に積極的に参加します。④東日本大震災からの復旧・復興のために国の責任ある対策を求めます。また、福島第一原発事故の原因究明、汚染水対策、損害賠償などについて国と東電の責任ある対応を求めます。また、原発再稼働に反対し、青森県六カ所の核燃施設建設阻止を訴え、原発に依存しないエネルギー政策への転換を求めます。⑤沖縄・辺野古の新基地建設に反対し、米軍基地の縮小・撤去を求めます。⑥消費税の10%への増税に反対します。再配分機能を強化した税制で社会的格差をなくそう!⑦低賃金と不安定雇用を拡大させ、労働組合を弱体化させる労働法制の改悪に反対します。また、最低賃金の大幅引き上げとランク制廃止で全国一律・時給1、500円の最低賃金を求めます。


Ⅶ.地方組織の防衛と組織拡大・強化に向けた取り組み

タクシー産業はその存亡をかけた大きな歴史的転換期を迎えています。タクシー産業にはこれまでにない変革が求められており、労働組合も地域交通を現場で担う労働者組織として、住民生活に欠かせないタクシーを築くために全力をあげるときです。
タクシー労働者の置かれている厳しい労働環境が続き、職場での不条理な扱いに対する労働相談や労働組合結成相談が増加しています。積極的に職場と地域で労働組合の存在意義を啓発するとともに、組織された労働者と未組織の労働者の権利格差・賃金格差を示しながら労働組合の結成や全自交への加盟を訴え、積極的に行動することが求められています。

白タク・ライドシェア問題の危険性を多くのタクシー労働者に伝え、白タク拡大に対する危機感をともに共有していかなければなりません。多くの地方自治体や議会に働きかけた白タク合法化絶対阻止の取り組み、改正法の不備を訴えて闘った青森タクシー裁判、各地の特定・準特定地域協議会での適正化・活性化の推進を求める取り組み等々、全自交が進めてきたタクシー政策とその行動・成果を広く訴えることが必要です。
職場での労働条件改善やタクシー政策の推進、平和と暮らしを守る政治課題にとって全自交の組織拡大は最重要の課題となっています。全自交加盟組合のある職場では、全ての単組が過半数を維持し、強い交渉力を確立しながら積極的に団体交渉を積み上げ、労働条件改善に奮闘していく必要があります。近年、ユニオンショップ協定やエイジェンシーショップ協定が各地で拡大しており、嘱託社員の労働条件改善・正社員との格差是正の取り組みも前進しています。職場のすべての労働者を対象に組合加入を働きかけるとともに、経営者に対してショップ制を要求して実現していくことも重要な取り組みです。

職場の労働条件については、労働基本権を武器に真摯な団体交渉を通じて労働条件を決定しながら、一方でタクシー政策の実現のためには労使が協力して交通政策を推進していくあり方を追求していくことが求められます。①職場での組織率向上、②経営者との交渉力の強化、③政策闘争の推進に向けて全員で奮闘しましょう。
また、ハイタク産業の産別組織として、タクシー政策に労働組合の立場から大きな影響を与えてきた全自交運動の歴史と現在に自信と確信を持ち、役員や活動家の学習会を強化しながら、全ての運動の成果を組織拡大につなげて行く取り組みに全力をあげます。


Ⅷ.自動車教習所労組の闘い

(1)自動車教習所を取り巻く情勢

安倍政権が進めた「アベノミクス」の失敗により労働者の実質賃金の低下が続き、社会的格差も拡大する中、個人消費の低迷が内需拡大の阻害要因となっています。また、地方の経済的低迷は人口減少と相まって深刻さを増しており、高齢化と少子化の進行にも歯止めが掛からない状況が続いています。
普通車の免許取得が可能となる18歳人口は1992年をピークに減少に転じてその後も年々減り続けてきました。
また、若者の支出内容も変化し、携帯・スマートフォン、パソコンや就職に必要な資格取得に消費が向かい、バイクや自家用車購入の関心は低下し、「車離れ・免許離れ」と呼ばれる状況となっています。入校生の減少は、自動車教習所産業に大きな影響を及ぼし、将来的にも人口減少と免許取得者の減少が予想されます。
自動車教習所は、地域に根ざし雇用を確保する貴重な職場であるとともに、①運転免許を取得するための教育施設、②各種法定講習の機関、③地域の交通安全教育センターとしての社会的役割を担っており、今日の交通運輸産業はもとより、市民生活にとっても、就職の際に欠かせない資格取得の場としても貴重な存在です。

地域に欠かせない自動車教習所
しかし、日本社会の環境変化が進行する中で新規免許取得者は減少を続け、2016年の指定教習所・卒業者数は156万1361人となり、前年より約1万人減少し、9年前と比較して22万人も少なくなっています。2015年の指定教習所数も1332校となり、前年より7校減少し、9年前と比較して92校も減少するなど、熾烈な生き残り競争が進行しています。限られたパイを奪おうと教習料金のダンピングや「規定時間内の卒業」を謳う合宿教習などの誇大広告が横行し、安売り競争が激しく展開されています。このことが、教習の質を劣化させ「自動車交通の安全を支える」という社会的任務を後退させることがあってはなりません。
2016年の運転免許保有者数は、国民階免許時代のなか、8220万5911人となり、過去最高を更新しましたが、伸び率は鈍化し、頭打ちの状況になっています。経営の厳しさも要因となって自動車教習所の経営者の中には、指導員らの労働条件の改悪を目論んだり、労働組合への不当労働行為や組合役員へのパワハラに手を染め、労働基準法等を軽んじる悪質経営者も存在します。事実、この間の自教労働者の賃金改善は、低い水準に抑え込まれています。また、嘱託指導員や契約指導員等の非正規社員化も進んでおり、指導員の総人件費は明らかに低下しています。現場で教習生と直接接しながら指導する自教労働者の労働条件は、教習の質を大きく左右する重要な要素であり、指導員のライセンスや自動車交通の安全を支える仕事にふさわしい労働条件を確保することが良質な教習を維持するうえで不可欠です。送迎業務などを兼務することで蔓延している長時間労働をなくし、安定した生活を確保して指導業務に集中できる労働環境を早急に確立することが求められます。

(2)自教労組の運動課題

「国民皆免許時代」といわれ、「就職に欠かせない資格」としてあった普通免許でしたが、社会情勢の変化の中で自動車教習所の入校生の減少は、今後も趨勢的に避けられない状況にあります。こうした厳しい状況が入校生の獲得競争を激化させてきましたが、料金ダンピング競争がさらに経営を圧迫し、廃校数を増加させる結果をもたらしています。
こうした現状を改善するために、安全運転講習、高齢者講習、講習予備検査や二種免許の業務を拡大し、さらに違反者講習、処分者講習、更新時講習の委託拡大や普通免許教習生への原付教習の義務化なども求めてきました。若年入校生の減少を業務拡大で補う方向を今後とも強めるとともに、地域の「交通安全教育センター」として公的助成についても要求していかなければなりません。
また、配送業務やマイクロバス運転等の要員不足が進み、こうした業界からの要請を受け、18歳で普通免許と一緒に取得できる準中型免許が新たに創設されました。需要拡大につなげる努力が必要とされているととともに、指定校が過度な費用負担とならないような対策を求めます。また、免許制度の問題として既存の中型免許や大型免許との整合性を検討していくことも必要となっています。

(1)雇用・労働条件改善の取り組み
働き方改革実現会議は2017年3月28日、働き方改革実行計画を決定し、罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正を掲げました。しかし、その内容は過労死ラインと言われる月80時間を超える時間外労働が認められており、強く反対しなければなりません。この実行計画を盾に特例の制限まで自教職場の残業が拡大されないよう、原則として示されている「月45時間、かつ、年360時間」の遵守を求めていきます。
具体的取り組みの柱として、①労働条件の不利益変更や不当労働行為を許さず、真摯な団体交渉を通じて、自教指導員にふさわしい賃金・労働条件の確立を目指します。また、次世代を担う若い指導員を定着・育成する観点から適正な定期昇給の確保に奮闘します。②指導員の嘱託、パートなどの不安定雇用を改善させるとともに、年金支給年齢と連動した定年延長と65歳までの雇用保障に取り組みます。また、正社員と有期雇用契約社員(定年後の再雇用者含む)との不合理な差別は労働契約法20条で禁止さられていることから、正社員と同じ業務内容でありながら雇用形態の違いだけで不当な差別的賃金が支払われることがないよう、「同一労働・同一賃金」の原則に照らして有期雇用契約社員の待遇を改善します。③時間外労働の制限は「月間45時間、年間360時間」を遵守させ、年間総労働時間の短縮に取り組むとともに、時間外割増賃金の割増率の改善を求めます。

(2)自教における政策課題
①自教労働者の労働条件を悪化させ、教習水準の低下につながる教習料金のダンピングや規定時間内卒業を謳う誇大広告などに対する規制の実現と、それらの教習所で適正な教習が行われているか厳格に監督・指導を行うこと。②自教を地域の「交通安全教育センター」として位置づけ、違反者講習、処分者講習、更新時講習など、免許関連業務を指定教習所に委託すること。③高齢者講習指導員資格が地方公安委員会でも取得できるようにすること。④高齢者講習、講習予備検査の料金を適正化するとともに、受講者(受験者)の負担軽減のための公的補助制度を導入すること。⑤普通免許教習生に対して任意で行っている「原付教習」を義務化すること。⑥指定教習所の役割の高い公益性をふまえ、施設改善に関する費用を助成するものとし、新型運転シミュレーターの導入に対して公費負担すること。⑦新たに創設される準中型免許の指定校とするに当たり、指定教習所に過大な費用負担とならないよう配慮し、必要な助成を行うこと。

(3)自教労組の組織拡大
多くの自教職場に労働組合が存在せず、未組織のままとなっています。こうした自教職場では、不安定雇用に置かれ、指導員や職員は長時間労働と低賃金を押し付けられています。こうした組合に加入していない未組織労働者に組合結成を力強く呼びかけ、全自交への結集を実現するよう全力をあげます。


Ⅸ.労働者自主福祉運動について

【全労済運動】
(1)生活保障設計運動の充実・強化
組合員の生活を守り、豊かにすることを目的に全労済と連携し、引き続き「生活保障設計運動」を展開し、組合員に必要な保障を提供していきます。
(2)労働者共済運動に関する研修会の実施
労働者自主福祉運動の発展と組合員の福祉向上をはかるため、傘下単組・支部において、組合員・組合役員を対象とした労働者共済運動に関する研修会を実施します。
(3)全労済の共済制度推進
組合員の相互扶助の精神にもとづき、「人と人との協同」を原点に労済運動を労働者自主福祉運動の柱の1つとして取り組みを進めます。また、組合員とその家族の「いのちと暮らしを守る」活動として次の共済を積極的に取り組みます。①セット共済(新ハンドル共済・火災共済・自然災害共済・交通災害共済・個人賠償責任共済)、②全自交新ねんきん共済、③マイカー共済

【労金運動】
(1)生活応援運動の推進
組合員のライフサイクルに合わせた生活を応援するため、労金と連携して生活改善・生活防衛・生活設計の三本柱による「生活応援運動」を推進します。労金への預金結集と融資利用などに取り組み、労金の利用を通じた組合員の福利厚生の充実を図っていきます。
(2)労金の商品サービスに関する周知
生活応援運動の一環として、組合員に対して労金の商品やサービスに関する周知に取り組みます。特に、労金のキャッシュカードは、多くのコンビニATMで利用手数料が不要であることや、他行利用時の手数料に対してキャッシュバックがあるなど、手数料負担の軽減をつうじた組合員の可処分所得の向上に資することから周知を進めます。
(3)労金運動に関する研修会の実施
労働者自主福祉運動の発展と組合員の福祉向上をはかるため、傘下単組・支部において労金と連携し、研修会の開催を推進します。



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