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新春対談
(戸崎肇教授を囲んで)改正法の現状と今後の課題について


改正法2年目を迎えて全自交会館に戸崎肇教授を向かえ、新春対談を行いました。

松永書記長:
新年あけましておめでとうございます。 本年もよろしくお願いいたします。
はじめに今のタクシー業界の現状からお聞きします。

伊藤中央執行委員長:
明けましておめでとうございます。改正法が昨年1月に施行された中で運賃については公定幅になり前進もあったかなとは思いますが、肝心な特定地域の指定が、年が明けてもされていないということで、労働条件の改善には結びついていない。
今年はしっかり労働条件の改善に結びつけていく取り組みが必要になるし、交通政策基本法においても交通政策基本計画が閣議決定されたという中で、この面についてもしっかりやっていきたいと考えています。

戸崎教授:
よろしくお願いします。昨年の枠組みとしては非常に進展したような1年になりましたけれども、ただその実が残念ながら入らなかった。2月の段階で消費税の転嫁ということはある程度果たしましたが、実際これによって業界が健全なものになったのかということに関して述べれば、健全化は全く進まなかったと言っていいような1年間でした。今年に関してはあらたな選挙の結果をふまえて、本当に今年こそ今まで作り上げた枠組みに実を入れるような取り組みにしていかなければならないと考えています。

松永書記長:
規制緩和に対する闘いのあと、2009年の特措法で特定地域に指定された地域が、改正法の下で準特定地域に指定されました。また準特定地域の解除も昨年ありましたがそのあたりの思いをお聞かせください。

伊藤中央執行委員長:
2009年の特措法も応急措置であったとはいえ、やはり自民党政権から民主党政権へ交代する前夜という意味で、やはり民主党が力をつけていたからこそ規制緩和一辺倒の中でわれわれの運動もあったところで成立した経過があると思うんです。だからリーマンショック後の景気が冷え込んだ中でも一定部分食い止められたと思うし、震災の時も同じようなことが言えるのかなと思います。規制緩和の問題については、いったん規制緩和されたら元に戻すのがいかに大変なのかということで、これは労働法制の問題や平和の運動にしても然りですけど、たがが緩むと大変なことになるんだと思っています。昨年11月の準特定地域解除については、日車営収だとか乗務員の賃金だとかそういった部分の数値には合致しているんでしょうけど、本当に乗務員の労働条件の改善に結びついてるのかと思います。元々幾らもない給料から例え1万円上がったといったなかで、それで本当に生活していける水準なのかと。法律の目的はやはり労働条件の改善にあるわけだから、そこはこれからしっかり準特定地域の位置づけをもう一度我々も取り組みを行っていかなければいけないと思います。

戸崎教授:
準特定地域の解除に関しては、検証を尽くした上での解除だったのかということを問いたいと思います。そういったことをきちんと議論するための地域協議会があったし、その中でいろんな観点から議論するべきポイントがあったはずだと思います。行政判断だけで、或いは一部の判断だけで解除を行うことの妥当性を問うていかなければいけないと思います。規制緩和自体が公正競争というものを前提として行われるべきなのに、これまでなぜこれについて労働組合を中心として問題にしてきたのかということは、やはり実態として公正競争になっていないから、規制緩和というのが弊害をもたらせるのであって、どういう風に見直していこうかということをずっとやってきて、それで民主党政権の中でそうした場ができたわけです。ところが残念ながら全然見直しができていないままに規制緩和という標語だけが一人歩きしている。本来であれば規制緩和ではなくて、公正な競争の下に皆が努力してやっていこうというものに関わらず、何でもいいから規制を外してしまえとなったのが現在であると思います。本当はもっときちんと議論しなければいけないのに、協議会自体がこの一年全く動いていない。特に昨年1月から所謂アウトサイダーといわれる方々が入ってきて、これから本格的な議論を進めなければいけないにもかかわらず、開催もできない。これは大きな過誤だったと思います。たとえば、目的が見えないという中でも皆が集まって、何らかの議論をし準備すべきだったんじゃないかと思いますし、それが出来なかったのは大きな問題であったと思います。何れにしてもタクシーというのは、交通モードの中でも最も先進的な取り組みで、先進的な特措法を作ってここまで走ってきましたけれども、ここで頓挫しているというか停滞している状況というのが私としては非常に歯がゆい状況であるといえると思います。


国土交通省の行政自体の自立性が問われる

松永書記長:
協議会が開催されない理由のなかで、新潟のカルテル問題の行方というものもあったのではないかと思います。昨年公取委から審決案が出ましたが、そのことも含めてお願いします。

戸崎教授:
カルテルの問題というのは、行政指導に従ったまでであって、国土交通省が方向を示して、つまりある一定の水準を保たせようといった場合には当然話し合いがなければ出来ないわけであって、それをカルテルとするということは、全く行政の中での不調和の現れでしかないと捉えないと、それがまかり通ってしまうということは、国土交通省の行政自体の自立性が問われると思います。
逆に言えばああいった問題の結果を待つというよりも、ほかの地域はより先進的な取り組みをして、むしろ新潟問題に対して牽制ををしていくようなことも必要ではないかという。単に待つのではなくて、例えばこっちの地域でも認めさせてやるとかというように新潟を外側から誘導していくという形も必要ではなかったかというふうに思います。何れにしても公取委がすべてを凌駕するような政治体制はおかしいだろうと思います。あくまでそれは補完的なものであって、本来の交通行政の中心である国土交通省のあり方というものを最大限尊重すべきである。

伊藤中央執行委員長:
2009年の特措法の附帯決議の中で公取の問題は当然想定されてたことで、国交省が意見調整をするという文言がちゃんと書き込まれているんですよ。その中できちんと意見調整されなかったというのが今先生が言ったように、公共交通として国土交通省がタクシーをどういうふうに位置づけてるのかを問われるんだろうと思いますよ。併せて今回のカルテルについては、行政の指導があったことは間違いない。それも自動認可枠の下限に引き上げただけですよ。そこに引き上げなければ、下限割れであれば、当然監査が行われる。それと併せて毎月事業報告書を出す。それとヒアリング。そんな手間暇かけて中小の事業者がやるというのは容易な話じゃない。そうすれば自動認可枠に入らざるを得ないわけですよ。その自動認可枠に入っただけでカルテルと認定するのは本当に腹立たしいなという思いです。それと公取委委が審判制度の見直しということですけれども、当初は昨年4月に審決が出されるといいながら10月まで引っ張って、その間延滞金も全部付いてて、ここまで引っ張るような審決案じゃないわけですよ。中身が。そこが非常に問題だなと。

戸崎教授:
公取委に関しては専門性も問いたいですね。本当に専門的な見知からこういった結論を出したのかということ。つまり、体制も不備であるでしょうし、専門性もないという中で、これだけ強い意見が出来るのかということに関しては、もういちど公開の議論でこの正否については問うていくべきだと思います。


わざわざ収益を削って何をするのか

松永書記長:
大阪で遠距離割引を廃止しようという動きが昨年の改正法施行を機にありましたがなかなか実現に結びつかない。また、京都の深夜早朝割増の廃止申請も多くの事業者で出されているという状況についてお聞きしたい。

伊藤中央執行委員長:
5千円超5割引の問題は今回改正法が成立で、一部グループ会社が動かなかったことから元の木阿弥に戻ってしまった。我々として大きな問題だ。それと規制緩和時に規制緩和論者が、悪い事業者は淘汰されていくという話をしていたが、そういう事業者がみんな残って、まともな事業者が脱落していくようになってきていることが問題です。併せて遠距離割引の問題では、割引分は企業が負うべきものであって乗務員が負担するべきものではない。

戸崎教授:
引運賃を全く規制をしないということに関しては、交通産業というのは最終的に安全を完全に保証しなければいけないということも考えれば、やはり片手落ちだと思います。それと需要創造という形で割引運賃というのは設定されると思いますが、深夜早朝に関してははっきりタクシーしかないし、それが本当の需要創造にどこまで繋がるのかということになれば、本来もう固まった需要層があるわけでして、それを他に取り合うだけということになれば本当に業界で首を絞めることにしかならない。本来収益性が取れるところをわざわざ削ってまで何をするんだろうかということで、ほかの産業と比べてみれば極めて異質なものだと思われます。したがってこの問題というのは、タクシーだけで見るのではなくて、本来売り方自体が真っ当なものかどうかということを根本的に問い直さなければいけない。需要が本当にこれによってどこまで新規創造できたのか、ということも併せて見ていく必要があるのではないかと思っています。

伊藤中央執行委員長:
先生が仰るように、本当にネズミの我慢比べじゃないんだけれども、いろんな我慢比べをしている。乗務員の労働条件は下がるし、事業者は疲弊をしていくという話になってますよね。


特措法の次ぎにステップを進めなければならない

松永書記長:
準特定地域の指定解除がありました。そのことについてお願いします。

戸崎教授:
今回明らかになったのは、これまでの特措法だとやっぱり無理だということが分かったので次にステップに進まなければいけないと思います。これで適正化にならなかったわけです。今回の大阪・泉州地域の0.6%営収増といっても元々ベースが非常に低い中でのアップで、本当に安全を保証できるような労働条件が出来たのかというとそうではなかった。さらにいえば営業収入などの配分、労使での配分というものも結局触れることなく、実際に外から見える部分だけの判断になってしまうということが問題であった。問題があったんであればやはり現行法を改正していかないといけないし、そのための議論というのをやはり地域協議会できちっとやらなければいけなかったと思います。余りにも今回無視されて、このまま進んでいったら何のために適正化になっているのか掴めないままにうやむやになってしまう危険すらあると思います。

伊藤中央執行委員長:
準特定地域の解除用件を見直しするような取り組みをしていかないといけない。乗務員もそうだし、事業者も燃料高騰や社会保険料が上がったなど諸々の要件があるわけなので、どちらも疲弊していく中で解除というのは納得いかないから解除要件の見直しの取り組みが急務です。

松永書記長:
特定地域指定が遅れていることに対してお願いします。

戸崎教授:
なんといっても規制改革会議の議論でおかしいのは、数を抑えなさいということですね。実態ではなくて形式的に数をこれだけに絞れというのは、全くおかしい。実際問題があればすべて特定地域でいいのであって、それを無視して最初から前提として押さえてくるのかということにまったく合理性が欠けている。実態をふまえずに形式的に何かの規制をしようとすると、すべてそれを否定する形であって、ナンセンスであるといわざるを得ない。何れにしても実効性があるのは特定地域ですから、問題のあるところに対してしっかりやっていかなければいけないと思います。新潟の問題にあるように、独禁法の適用除外にしないと何も出来ない。実をあげるためにも特定地域は早く指定しなければならず、逆に問題があるんだったら見直すべき。これを指定することによって不正事業者が不正に対して明らかになるということです。


地域のまとまった交通政策を立てるべき母体の原型としてタクシーの地域協議会がある

伊藤中央執行委員長:
改正法に一番期待したのは、減車に強制力のある特定地域を設けるというところにあった。先生が言われたように、地域の公共交通という機能を果たせなくなってしまう所はすべて特定地域に指定されてしかるべきだと思います。

戸崎教授:
公正競争の要件を満たさせるための暫定的に見直し期間としてで、なぜ規制改革会議という非専門的なところが外から強大な圧力をもってやらなければいけないのか。政治機構のおかしさだと思います。

伊藤中央執行委員長:
適正化事業の問題で、労働組合も入れてもらい、悪質事業者に対しての監視をきつくしていきたいと思います。

戸崎教授:
それは一番大事だと思います。やはり行政には予算的にも人員的にも完全な監査機構を行うことは無理だと思います。それを補完するのがやっぱり労働組合、つまり実際のマーケットの中で実際に活動しているところが一番正確な要望があがってきます。もちろんそれがお互いのチクリ合いとなってはいけないけれども、それがチクリ合いかどうかを判断するのはまた行政の一つの役割である。情報は多ければ多いにこしたことはないので、そのためには労働組合がきちっと参加していただいて、先ず監査のベースを作っていかなければいけないと強く感じます。

松永中央執行書記長:
東京で初乗り距離短縮の議論が進んでいます。現実になると東京近県をはじめ全国的に広がる懸念がありますが、昨年から大阪などで申請のあった国家戦略特区にタクシーも入れるという動きと併せてお聞きしたい。

戸崎教授:
何でも同じように特区にすればいいというものではないと思います。そこの判断こそがまさに地域協議会でやるべきものであって、上から下ろすんではなくて地域協議会の合意の中でそういったものをやろうというのでしたらまだわかりますけども、無理矢理トップダウンで作るのはおかしいのではないか。初乗り短縮に関しても、大事な賃金あるいは収益性というものを考えて、本当にこれ自体が全体の需要増あるいは収益増に繋がるのかということをもっと慎重にあるべきではないかと思います。慌ててやる必要はない。ただ、議論はした方がいいと思います。データをもとにしっかりした議論をしていく必要はあると思います。

伊籐中央執行委員長:
特区に関しての考え方は先生と同じです。初乗り短縮に関しては今する話じゃない。2009年の特措法も労働条件の改善をしなければいかんというなかで成立させてきた経過があります。その労働条件の改善にも至ってない中で何で初乗り短縮を今検討しなくてはいけないのかということが、私は納得がいかない。

戸崎教授:
業界としては優先順位の付け方ですね。そこはやっぱり、たしかに経営側としては何でもやれることはやってみようということになると思いますが、実際労働側としてはこれはやっぱり優先順位の低いものであって、適正化こそ進めていかなければいけない。その意見のすりあわせのないままに向こうだけの意見でやっていくというのは、全くそういった意識が浸透してないと、どこかにやっぱり歪みがありますよね。合意形成が出来てない中で進めていくというのは危険じゃないかというふうに思います。

伊藤中央執行委員長:
地域協議会の中でこういう部分も本当に議論すればいいんだし、公共交通のあり方の問題だとか利用者目線の問題だとか、やっぱり協議会の中で議論する話で、事業者だけで先行してやってもらっても困るなという思いはありますね。

戸崎教授:
もう一つ大きいのはマイカーからの需要誘導を本質的に図っていかないと厳しいですね。自動車税のあり方、軽減税率のあり方、そこら辺まで含めた議論でないと、タクシーだけですべてを見ていこうとするから歪みがあると思います。高齢化も進んでいきますし、運転できる人口が少なくなってくるわけですので、タクシーというのは健全に機能しないと社会自体が回っていかないし、環境問題もありますし、そういうことを考えればやっぱりマイカーの保有コストを高くして、誘導するとかという地域も当然出てきてもいいなと思います。そうした社会実験を経た上での議論も必要じゃないかと思います。

伊藤中央執行委員長:
今、協議会自体が最初に先生が言ったようにアウトローも入ってきています。しっかり意見を発していかないと逆に埋没してしまいますからね。

戸崎教授
 タクシーというのは単なる移動手段ではないんで、いろんな付加価値がつけられてるわけですね。空間の中で仕事は出来るし、ゆったりと座れるということをなど付加価値をしっかりと認識してもらって、実際タクシーに乗る人はそれを買ってるわけですので、あまりそれをダンピングする必要があるのかどうかということだと思います。特に日本の場合、高度なサービスで諸外国やあるいは途上国とは違って、単に乗るだけのものではないというところをきちんとバリューとして売っていくという本来のセールスマインドは必要じゃないかと思います。

伊藤中央執行委員長
 やっぱりコストがかかるところがありますからね。24時間動かして、それこそ人もいて燃料もかかって、どれだけ貰えばいいの、採算が合うにはってところで。

戸崎教授:
ある意味デフレの感覚に慣らされてしまって、本来価値があるものを価値に見合った価格で提供するという考え方が薄れていると思います。それは不健全な世界ではないかと。

伊藤中央執行委員長:
そこの部分は交通政策基本計画の中でデマンドなんかも取り入れてる地方公共団体もあるから、しっかり取り組んでいけばまた違った部分も出てくるのかなと思います。

松永書記長:
地方分権が自家用有償運送などを見ても分かるように進んでいくことに対してお聞かせください。

戸崎教授:
交通政策の地方分権を進めた場合に、地方間格差が非常に生じてくるということが大きな所です。さらにそれを助長するのが、地方に元々交通政策の担当者が絶対的に少ない。それはこれまで中央集権の中ですべて中央が担ってきたので地域の裁量幅がなかったことでそういうことになったと思います。民主党政権の中で当初は地方分権と言いながら、時期尚早だということで段々戻していった。そういった経緯があるにもかかわらず、またいきなり下ろすということは、前の失敗をもう一度繰り返すことになるだろうというふうに思います。ある時期まではモデルケースを中央なりナショナルセンターを作って、それが各地域で応用できるような形にしていかないと、ますます政策担当能力が無いところはガタガタになってしまって、むしろ改悪になってしまうだろうと予想されます。
 地域のまとまった交通政策を立てるべき母体の原型としてこのタクシーの地域協議会があると思います。これが発展解消する中で今後交通政策基本法が地方で展開される母体として成長していけばいいなというふうに思っています。残念ながら地域協議会自体が開催されていないので、これが今後交通政策基本法と連動するような形で実力を出し合っていく必要があるんじゃないかと思ってます。どちらにせよ福祉有償運送は、極めて高度な運転技術と能力を持たなければいけないので、特別扱いしてはならないし、運転代行についてはまだまだ監査システムが成り立っていないので、どうしてもタクシーとの間で様々な労基法違反とかいろんな安全基準を満たすことにならない部分があるので、もっと慎重に議論しなければいけない段階にあると思います。きちっとした検証がなされないままで地方に移譲されるということは、先と同じでまったく政策担当能力が無いところはとにかくやればいいということだけになってしまって、それが一つモデルケースになってしまって全国にインフルエンザのように普及していくとなると全国的な問題になってきます。そうした漏れがないようにやっていく必要があるのではないかというふうに考えてます。

伊藤中央執行委員長:
今年4月から実施されれば間違いなくインフルエンザのように広がっていくと思います。我々として福祉有償旅客運送なんかは、まるっきり反対反対ばかりでは利用者からの理解も得られないという部分もあるし、たしかにタクシーでは補完できない地域もあるので、そういった部分はきちんと棲み分けの問題も必要だし、あとは安全の問題を如何に担保していくのかということも我々がしっかり点検していかなければと思います。特に代行については、公安委員会が認可している部分があるんですが、そこで本当に地方自治体が出来るんですかと。そこがこれからの我々の取り組みにかかってくるのかなと思います。

戸崎教授:
運転代行の分で如何に安全と公正競争が保証されるかという問題に対して、いま殆ど監視が出来ていない。それをさらに地方のような脆弱な監視体制に置かれるということは、これは問題があると思います。

伊藤中央執行委員長:
代行なんかは入り口のところでしっかりすべきで、ツーシータ―にするとか、ペイントだって問題のある業者はいっぱいありますよ現状は。もっとしっかりやらせる。国交省にも対応してもらわないといけないと思います。

戸崎教授:
結局、対応能力が無いからこそ労働組合が情報提供をしていく必要があるでしょうね。国が出来ないならそれをどうやって補完していくかを考えていく必要があると思います。

松永書記長:
交通政策基本法の中でタクシーはどうあるべきか

戸崎教授:
公共交通というのをきちんと考えるというのが本来の交通政策基本法のあり方です。ただ、なかなかそれが出来ていない。公共交通優先という形になっていない。これが問題の一つです。端的な例が震災が起こったときに優先的にエネルギーが配分されなければいけないがなっていない。そういった根本的なところで、交通政策基本法というのは過誤がある。当然予算措置も非常に弱いし、だからこそ交通政策基本法自体も早く次のステップに向けて進まないといけないといえます。交通機関間の連携性とかはまさにタクシーのところに問われているところです。こういったタクシー業界、或いはタクシー特措法の中の取り組みというのが連動して交通政策基本法のブラッシュアップに進んでいかなければいけない。お互いが分断した形というのはおかしいものであって、我々としては特に先進的に取り組んでいるタクシーの取り組みを昇華させて、交通政策基本法というのが実体的なものになるようにしていかなければいけないと思います。

伊藤中央執行委員長:
仰るとおりだと思います。特に今回の震災なんかでも、仮設を山の方に作っても、そこの足をどうするんだというときにタクシーがすぐ動けるというものがあったりだとか、役割は非常にあるし、そういった部分をふまえて交通政策基本法の中でうまくミックスさせて公共交通をどうやっていくのかが必要なのかなと思います。

松永書記長:
最後に全体を通してご意見をいただきたい。

伊藤中央執行委員長:
やはり改正法をしっかり労働条件改善に結びつけることに尽きるんだと思います。乗務員の賃金は30年前の水準という異常事態で300万円に届かないのが5年連続でそこを何とか生活できるような水準にしていかないとだめだし、でなければ安全というものも担保されないんだろうと。そして、若い人が参入して来ない。それなりに魅力ある産業にしていかなければ未来もないんだろうなというふうに思います。ただし、ハイタクはこれからの高齢化社会の中では役割は十分あると思うので、やはり労働条件の改善をしっかり進めていきたいと思います。

戸崎教授:
昨年は株価も1万7千円、8千円に上向き、景気はよくなっているといわれ、アベノミクスと言われる中で世の中は景況感が回復してきたにもかかわらず、格差は厳然と存在していると言わざるを得ない。ですから今年こそは、なぜこういった全体の活況を呈しながらもタクシーにそれが下りてこないのか。本来タクシーというのは景気と連動性が高いものであって、それが回復しないということは政策的な枠組みにおかしさがあるということを明確に意識しながら、昨年やっと始まった特措法の具体的な取り組みというのを今年度はきちんと進展させなければいけないのではないかと思っています。元々タクシーというのは人々に非常に身近な存在で、これからますますそうなっていくでしょうし、そうしたところをどのように長期的に保証していくのか。労働者が現行で足りないとしても、女性の登用も含めて労働組合としてもやっていかなければいけないし、そうなると余計安全性というものが大事になってきます。これまで以上に安全というものに対してナーバスになっていくようなことが必要になってくるんじゃないかと思います。

松永書記長:
本日はありがとうございました。

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